「ANIME FES.”VS”」から始まる アニメの劇場戦略 ショウゲート 臼井 久人氏に聞く

「ANIME FES.”VS”」から始まる アニメの劇場戦略 
ショウゲート 臼井 久人氏に聞く

ここ1、2年、アニメビジネスのなかにおける劇場アニメへの関心が高まっている。劇場から多くのヒット作が生まれるだけでなく、アニメとファンをつなげる新たな場として、これまでにない劇場の活用が増えている。
そうしたなかでも2010年11月からスタートした「ANIME FES.”VS”(アニメフェス バーサス)」が注目されている。バンダイビジュアルの最新作を複数組み合わせ、かつ1ヵ月ごとに作品を入れ替え、3ヵ月連続で上映する少しユニークな方式とっているからだ。上映作品も、『.hack//Quantum』、『マジンカイザーSKL』、『コイ☆セント』、『ノラゲキ!』と個性的な作品が揃う。
この上映の配給を手掛けるのが、ショウゲートである。同社はこれまでもテレビアニメシリーズやOVAでは、数多くのヒット作を生み出して来たが、得意とする映画配給でアニメを手掛けることは少なかった。
しかし、「ANIME FES.”VS”」でいよいよアニメでも、映画配給に乗り出した。「ANIME FES.”VS”」と、さらにその先にあるショウゲートのアニメと劇場戦略とは?同社のプロデユーサー臼井 久人氏に伺った。

ショウゲート http://www.showgate.jp/
「ANIME FES.”VS”(アニメフェス バーサス)」公式サイト  http://animefes-vs.jp/

■臼井 久人(うすい ひさと)
1958年生まれ 埼玉県出身 1990年から「パイオニアLDC株式会社」(現:ジェネオン ユニバーサルエンタテインメント合同会社)でLD(レーザーディスク)及びCDの販売・制作に携わり、以降、「東芝デジタルフロンティア株式会社」、「東芝エンタテインメント株式会社」、「株式会社ショウゲート」と21年にわたり、映像及び音楽制作・販売に携わる。
現在、(株)ショウゲートのライセンス営業グループでアニメ作品のプロデュースを担当する。


【洋画、邦画、アニメーション 全方位を目指すショウゲート】

アニメ!アニメ!(以下AA)
そもそも今回「ANIME FES.”VS”」をイベントのかたちで上映したきっかけ何なのでしょうか。

臼井久人氏(以下臼井) 
先にショウゲートという会社自体の説明が必要かと思います。もともと映画配給会社です。基本的には洋画・邦画を中心に営業しております。
昨今、アニメーションはいろいろなところで劇場上映されています。テレビアニメーションであったものをかたちを変えて、劇場でみんなに観てもらうという機会が増えています。
そこにバンダイビジュアルさんが目指すテレビシリーズでないハイクオリティーのOVAを皆さんに観ていただく手法の1つとして、今回劇場でイベント上映という戦略が出てきたんです。
ショウゲートの強みである配給とバンダイビジュアルさんのコンテンツ作り、販売力をうまく融合させてイベント上映をやっていく話が生まれました。

AA
ショウゲートさんの配給はこれまでアート系が強いイメージがあって、アニメもやるのは少し驚きました。

臼井 
確かに基本は洋画と邦画です。そんな中で一昨年くらいから劇場映画としてアニメがクローズアップされてきました。
ところがショーゲートにはこれまでアニメセクションがあったにもかかわらず、劇場を窓口にしたアニメ展開が欠けていました。そこで今回はそれを補い、洋画、邦画、アニメーションと全包囲で劇場をやります!!という戦略が出来たわけです。

AA
去年、一昨年あたりから、単館系、数館から数十館ぐらいでアニメを上映するケースが増えています。そうしたなかでも今回の「ANIME FES.”VS”」は、複数の作品を組み合せると異色です。この趣旨は何ですか。昔の東映まんがまつり的なところもあります。

臼井 
まさにそういう発想だと思います。この辺はバンダイビジュアルさんが主導で動いていた部分です。
今回は新作OVAの『.hack//Quantum』、『マジンカイザーSKL』、あとは『コイセント』、『ノラゲキ!』の4作品です。
『コイセント』、『ノラゲキ!』は30分1本、1話、『.hack//Quantum』と『マジンカイザーSKL』は全3話ずつのシリーズです。これらをお祭り的にみんなで楽しもうというものです。30分のものを3本観て90分、劇場で観るアニメとしては上映時間的にも丁度いいですね。

AA
お試しというのもありますね。

臼井 
それと大スクリーンで、ちゃんとしたすごい音響で楽しむ。今までにない楽しみ方の1つと思います。いわゆるアニメファン向けの作品で、そういう方たちへの楽しみ方のご提案です。

AA
こうしたイレギュラーなかたちでのイベント上映は、興行さんからはどういった反応がありますか。

臼井
非常に協力的にやっていただいています。いまシネコンさんも数が多く、いろいろなかたちでお客さんを取り込みたいと考えています。
スクリーンが多い分だけ、コンテンツもいろいろとバラエティーに富んでいる方がお客さんに来て頂けるし 他の劇場との差別化戦略で合致しているのでないでしょうか。

AA
「ANIME FES.”VS”」での5館上映という劇場数の選択はどうしてですか。

臼井 
規模感で5館程度というのは当初から言っていました。それより大きくなると宣伝費もそれなりに掛かってします。規模感には最低限の選択です。
上映のない地域の方には申し訳ないですが、、、でも、『お祭り』なので、遠くから車で行ったりする感覚で、来ていただけるなら大変ありがたいです。
その期間で、そこでしか見られないことに価値を見いだしていただければと思っています。ある程度絞ったイベント上映という制約は、ある意味ではプレミア感が出るのかなとも思います。

【劇場上映作品は海外でもバリューが高くなる】

AA
こうしたイベント上映、劇場配給は、今後の他のアニメビジネスにつながりますか?

臼井
私たちは海外販売も行っておりますが、劇場で上映された作品はバリューが高くなるので、海外でより売りやすくなりますね。

AA
海外の話がでたので配給以外についてもお伺いしていいですか。ショウゲートさんの扱った作品は、海外で人気になるものが多いのですが、これはどうしてですか。

臼井 
戦略的に狙っています。当社はDVDの発売元機能しかありません。販売は他社さんにお預けしておりますが、国内のパッケージ市況は、厳しくなってきております。
そんな国内アニメ市況ですが、まだまだ、海外の需要がそれなりに高いので、海外受けするテイストの作品を中心に参加させていただいております。
今回のANIME FES.“VS”の上映作品も 国内と同様に海外でも人気があります。

AA
最近だと『学園黙示録 ハイスクール・オブ・ザ・デッド』、日本であまり知られていないのですが『鴉-KARAS-』が海外で非常に売れました。

臼井 
『鴉-KARAS-』は僕も最初からかかわっていますけど、非常に苦労しましたがいいかたちで展開出来ました。海外の評価は非常に高いです。
あくまでも私見ですが、海外のユーザーさんはやはり等身大のヒーローが好きなんです。だから変身して強くなるみたいなのが受けます。アメリカンヒーローでいうと『X-Men』だったり、『スーパーマン』ですね。

AA
海外の特徴は、ほかにありますか?

臼井 
エリアにもよりますね。ヨーロッパはイタリアではロボットものが大好きですし、全般的には「アクション」「SF」の要素が高い作品の評判は高いです。また、アニメ制作会社も大きな要素になっています。
本当にいろいろ特性があります。ただ、全体的にはやはり日本で売れているものは評価が高いです。

AA
最終的にはそうなのですか。

臼井 
いまはネットの時代なので、変な話ですけど日本でやっているものはすぐに海外でも日本の情報はリアルタイムで海外に流れます。日本で人気があるかないかは、みなさんよく分かっていますね。

AA
今回で言えば『マジンカイザー』や『.hack』は、かなり海外受けする作品ですね。

臼井 
そうですね。永井豪さんファンはヨーロッパに多くいらっしゃる。ヨーロッパでは非常に認知度が高いです。『.hack』はやはりゲームも大きく出ていますので、アメリカを含めて全世界で人気があるコンテンツですね。
『コイセント』は完全なオリジナルなのですが、『FREEDOM』の森田修平監督の新作というところが海外に向けて大きなキャッチコピーになりますよね。

AA
その『コイセント』ですが、完全オリジナルですね。

臼井
いいテンポで30分の中で見せてくれます。かなり面白いはずです。期待できると思います。

AA
もうひとつ『ノラゲキ!』は、どういった作品ですか。

臼井 
こちらも『コイセント』と同じでサンライズさんの荻窪スタジオが作る30分ものです。脚本が佐藤大さん、『鉄コン筋クリート』の安藤さんが監督です。面白いと思いますよ。30分の中で完結させるのはやはりすごいです。

AA
逆に『マジンカイザー』とか『.hack』はブランド力を押し出す感じですか?

臼井 
固定ファンに伝えていきながら、枝葉を広げていくということかなと思っています。

2ページ「劇場はアニメのライブです」に続く