米国アニメ会社ADV 資産売却で日本アニメから完全撤退

 9月1日、米国の日本アニメの流通会社として知られるA.Dヴィジョン(A.D. VISION, INC.)は、同社が保有する日本アニメの権利を含む資産の大半を売却することを明らかにした。
 売却対象は複数の企業となり、ADVは事実上解体される。同社は2007年に経営危機に陥り、近年はアニメ市場における存在感は大きく後退している。それでも、かつて米国における日本アニメのトップ企業として活躍したADVのアニメ事業からの完全撤退は、あらためて北米市場での日本アニメ不振を印象付けることになりそうだ。

 ADVは、まずAesir(AEsir Holdings, LLC)に自社の保有する作品の権利を売却する。AesirがADVの行ってきた発売スケジュールを引き継ぐ。さらにSXION 23, LLCとの合意により、ADVの流通・マネジメント部門をSection23 Films が買収する。Section23 Films は、Aesirが引き継いだ作品の流通を担当する。ADVの経営陣による別ブランドSwitchblade Pictures とSentai Filmworksの流通もSection23 Films手掛ける。
 さらに同社の子会社でアニメ専門チャンネルのアニメネットワーク(Anime Network, Inc.)は、バルキュリア・メディア・パートナーズ(Valkyrie Media Partners, LLC)が全株式を獲得する。アニメのローカリゼーションスタジオのアミューズメントパークメディア(Amusement Park Media)は、Seraphim Studios, LLCに売却する。

 ただし、今回の買収については、不明確な点も多い。米国のポップカルチャー業界の情報サイトICv2によれば、資産を引き継ぐ4つの会社は全てADVの資産を引き継ぐことのみを目的として会社だとしている。同様に米国のアニメ情報サイトのアニメニューズネットワークは、4社の登記住所は全てADVと同じテキサス州にあり、経営陣にはADVの社員、旧社員と重複があると指摘する。
 また、かつて日本コンテンツ投資有限責任組合を通じてADVの大株主となった双日、日本政策投資銀行、クロックワークスが現在でも同社の株式を保有しているか不明である。また保有していた場合の今回の各社による対応も発表されていない。
 
 ADVは1992年の会社設立、その後日本アニメに市場成長に合わせ、同社も急成長した。2000年代初めには、フェニメーションと並ぶ、業界のトップ企業となった。しかし、2004年から始まった日本アニメDVDの不振に影響を受け、経営環境が悪化していた。
 特に2007年末から経営危機が伝えられる中、多くのアニメライセンスを失い、月刊アニメ雑誌「Newtype USA」の廃刊など事業縮小を強いられていた。今回は、事実上現会社を清算することで、17年に及ぶ歴史に幕を閉じることになりそうだ。
 また、同社は日本では『新世紀エヴァンゲリオン』の実写化権を獲得し、実写映画企画を進めてきたことでも知られている。今回の事業・資産譲渡で、『エヴァンゲリオン』の実写化権の行方がどうなるのかは言及されていないが、これまで以上に不透明感が増すことは確かだろう。

A.Dヴィジョン(A.D. VISION, INC.) http://www.advfilms.com/