スクエニ 米・仏でマンガ有料配信 自ら海外市場開拓

 大手エンタテインメント企業のスクウェア・エニックスは、12月17日より北米とフランスの両地域で自社マンガタイトルのオンライン有料配信を開始した。この計画は今年7月に米国・サンディエゴのコミコンで発表され、それから半年、満を持してのスタートになる。
 近年、書籍の電子化の急激な流れの中で、海外向けのマンガ配信についても様々な計画がニュースとして伝えられている。しかし、日本の大手出版社がグループ会社を通じて海外のPC向けにマンガ有料配信を手掛けるのは、小学館・集英社系の米国法人VIZメディアのiPad向けを除けば初といってよい。日本のマンガビジネスの新たな時代を感じさせるものだ。

 それだけに今回のオンライン・マンガ・ストアは、ビジネススタートにあたってかなり入念に戦略が練られたことが窺える。スクウェア・エニックスは配信プラットフォームに、同社が独自に展開するインターネットコミュニティ、スクウェア・エニックス・メンバーを利用する。独自プラットフォームの利用は、コンテンツ配信ビジネスにおいて通常はかなり冒険的な選択だ。しかし、スクウェア・エニックス・メンバーは、2010年12月1日現在、全世界で170万人の会員を持つ。無料登録で会員になると様々な独自コンテンツにアクセスが可能となり、自身のページを持ち、他の会員と交流出来る。
 スクウェア・エニックス・メンバーを利用することで、コンテンツ配信サイト立ち上げの際に大きな課題となる宣伝・集客をクリアーする。日本のコンテンツに馴染みが深いファンコミュティとつながることで、ビジネスのスタートアップに弾みをつける。

 サービス開始の初期タイトルには、北米サイト、フランスサイトの双方で世界的ヒット作である『鋼の錬金術師』(荒川弘著)、『ソウルイーター』(大久保篤著)、『ヴァンパイア十字界』(原作:城平京、作画:木村有理)を扱い、『夢喰異聞』(真柴真著)は北米のみのタイトル、『666(サタン)』(岸本聖史)はフランスだけのタイトルとして、それぞれ4タイトルが並んだ。『鋼の錬金術師』、『ソウルイーター』といったユーザーを惹きつけるビッグタイトルの一方で、残り2タイトルは今後プロモーションに力をいれたい作品、同時にそれぞれのマーケット向きとされるものだ。
 現在は特別価格として北米版が1冊5.99ドル(約500円)、フランス語版が4ユーロ(約450円)で提供されている。これは書店販売の単行本の定価約10ドル、6.5ユーロからそれぞれ4割程度安い。実際の店頭価格は定価より割引されるが、それでもオンライン版のほうが安くなるとみられる。価格面でもユーザーにアピールする。直接販売、卸売・小売店を使わないビジネスシステムのため、スクウェア・エニックスにとって1冊あたりの利益は従来の単行本に較べてかなり高くなるだろう。一方で、翻訳コストやシステム投資はスクウェア・エニックス自身のコストとなる。今後は、その採算性を念頭に価格の調整も考えられる。

 デジタルオンライン・ビジネスのスタートで気になるのは、従来のライセンスにより現地でマンガを発売する翻訳出版社との関係だ。オンライン配信が単行本の需要を奪う可能性があるし、本来は自分たちがやりたかったビジネスのはずだ。
 スクウェア・エニックスはこれについて現地出版社と協力してビジネスを進めるとしている。スクウェア・エニックス・メンバーのサイトでは、商品ごとに作品に関連する現地出版社(北米ではVIZメディアとYen Press、フランスではKUROKAWA、Ki-oonなど)への公式サイトやウェブプロモーションにリンクを設けて誘導を図っている。こうした誘導だけで現地出版社の不満が解決されるわけでないが、現状では単行本市場が圧倒的に大きく、今後もなくなるビジネスでないだけにスクウェア・エニックスにとっては、なんとか理解を得たいところだろう。

 スクウェア・エニックスの配信ビジネスの目的は、より多くの手段で、世界中にマンガを広めるためである。また、配信によりこれまでより広いユーザーにマンガが届け、同時に海賊版・違法配信に対抗するともする。
 同社は今後も積極的にビジネスを進める構えである。北米では今後『PandoraHearts』(望月淳著)、『BAMBOO BLADE』(原作:土塚理弘 作画:五十嵐あぐり)の配信を予定する。年明け2011年1月11日に新タイトルを追加予定だ。

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