トムとジェリーとソニー

 エンターテイメントビジネス業界で、ソニーによる米国映画会社の名門MGMの買収が話題を呼んでいる。近年、MGMは映画業界ではヒット作に望まれず配収ランキングでも全米8位(2004年9月まで実績)に留まっている。今回の買収によりソニーピクチャーズとMGMを合わせた映画市場のシェアは18%程度となる。
 しかし、ソニーが今回の買収のメリットとして強調するのはMGMの持つ豊富な映画・TVのソフトである。過去から築きあげられて来た資産の中には、数多くの名作が数多く含まれており、全米の映画の作品数の約40%がソニーの傘下に入ることになる。

 では、その40%の資産の中にはどの程度のアニメ(カートゥン)作品が含まれているのだろうか。米国のアニメーション市場におけるディズニーの存在の大きさは言うまでもないが、ソニーピクチャーズ+MGMはディズニーに対抗出来るのだろうか。
 そう思って調べてみると両者のアニメーションのソフトは驚くほど少ない。今回買収されるMGMの持つ資産の中には1950年代に米国大手アニメスタジオ:ハンナバーベラが制作した『トムとジェリー』の短編映画以外に目ぼしい作品は見当たらない。他の作品は1940年代のティクス・アベレイが制作したDroopyなど今ではほとんど忘れられたキャラクターが中心である。他のTVアニメ作品『ピンクパンサー』や『ロボコップ』は製作本数が少なく、ディズニーやワーナーに比べて大きく見劣りする。長編映画では、『クリスマスキャロル』(1998)『ニムの秘密』(1982)『トムソーヤ』(2000)など新旧含めても10本程度でヒット作はさらに少ない。
 この点は、ソニーピクチャーズも同様で劇場映画の資産は少なく、日本で製作された『ファイナルファンタジー』(2001)が目につく程度である。TVアニメも近年の『スパイダーマン』を除くと豊富だとは言えない。

 ここ数年の『シュレク』、『ファインディングニモ』の大ヒットに見るように米国アニメーションのマーケットは巨大である。ディズニー以外のドリームワークスや20世紀フォックスによる大作アニメも相次いでいる。
 現在、ソニーは国内ではアニプレックスを中心にアニメ制作ビジネスに乗り出している。また、米国では、ソニーピクチャーズの子会社ソニー・ピクチャーズ・デジタル・ エンタテインメント、ソニーピクチャーイメージワークスを中心にCGを使った大作アニメを企画している。しかし、具体的な成果はまだ出ていない。MGMの買収でも適わなかった米国アニメーション市場の制覇だが、やはり自前でヒット作品を狙うのが一番良い方法だろうか。