中国アニメ産業の展望 無錫編 

中国アニメ産業の展望 無錫編:
海外スタジオとのパートナーシップが作画能力に秀でた動画マンたちの集積を生み出す。

中村彰憲 (なかむら あきのり)
[筆者の紹介]

立命館大学 映像学部 准教授/博士(学術)
名古屋大学国際開発研究科修了後、早稲田大学アジア太平洋研究センターを経て立命館へ。その間、一貫して海外(主にアジア、東欧)を中心としたゲーム産業の動向と国際分業の可能性について研究を進める。研究を継続するうちに、ゲーム業界とCG、アニメ業界との密接な関係を実感し、研究対象の領域も拡大。
最近の代表的な著作に『グローバルゲームビジネス徹底研究』(エンターブレイン)、『デジタルゲームの教科書』(第6章アジア圏のゲームシーン:ソフトバンククリエイティブ)などがある。
Gamebusinessjpでは、 「ゲームビジネス新潮流」を連載中。


無錫動画基地の中心拠点とも言えるiPark
無錫地域の代表的な名所、霊山大仏

 上海を中心とした華東地区。その中でも早期から工業地帯として発展してきたのが江蘇州だ。無錫市は、江蘇州の主要都市として、改革開放路線が進む80年代末から大きく発展を進めてきた。92年にはハイテクパークも設置され、経済的な発展は現在も進んでいる。このような背景のもと、05年に無錫国家動画産業基地が認定された。当初10社程度だったアニメスタジオもその後急激に増え、09年までに130社ほどがアニメ産業関連企業として登録されている。
 ただし、前回特集した杭州との大きな違いは、同地域が、動画産業基地として認定される以前から日本、欧米アニメスタジオからは、アニメ制作のアウトソーシング地域として既に認知されていたことだろう。88年に上海で台湾資本により設立された朝陽動画の創設者と、おなじく88年に設立された杭州動漫から独立し、杭州飛龍動画を立ち上げた日本人アニメータ、金子勝典氏が、91年、台湾に本社を置く遠東動画の無錫スタジオを立ち上げた頃あたりから発展していった。アウトソーシングを専業とし、アニメ制作の中でも主に動画や仕上げ部分に特化していた同社で多くのアニメータが経験を積んだ後、独立していった。無錫において歴史のあるアニメスタジオといわれている無錫年代動画や火鳥動画などはもとも遠東動画出身者により創立されたと言われている。従って、今回紹介するスタジオのほとんどがこれらの企業と何らかの関わりを持つ人たちにより設立されている。また、もともとアウトソーシングプロジェクトの請け負いを主におこなってきたということもあり、必然的に日本のアニメスタジオとの関わりも深い。では、ここからは、今回訪問がかなったアニメスタジオ3社を紹介していこう。

無錫旭陽動画-旭プロダクションの無錫スタジオ。
動画、仕上げの業務が中心ながら更なる業務拡大を目指す

 

無錫旭陽動画動画、王建総経理(左)、成ケ澤 直氏 作画仕上げ課海外担当(右)

 「旭陽」とあるようにここは、株式会社旭プロダクションの中国スタジオだ。非常に数多くの作品に関わっているが、最近の代表作としては、『スーパーロボット大戦OGジ・インスペクター』があげられる。同社は、宮城県白石市にもスタジオを設置するなど積極的な展開を進めているが、中国スタジオについては06年に設立された。そのときから深くかかわっていた、総経理の王建氏も中国アニメ産業、とりわけ日本とのアウトソーシングをやってきた人たちの中ではベテランに位置付けられる重鎮。杭州動画から参画し、その後杭州飛龍の立ち上げに関わった後に、無錫遠東動画に携わってからは、無錫でアニメ産業に関わり続けて現在に至っている。
 今回の旭プロダクション無錫スタジオの立ち上げにも当初から関わりスタジオ運営を進めている。60人程度のアニメータにより立ち上げ、本社から3人の主要スタッフに駐在してもらいながら日本的アニメ制作について改めて指導を受け、制作スキルの能力の底上げを図った。

 同社は、今回訪問したスタジオの中でも唯一、無錫動画産業基地から支援を受けていない。外資系企業でも支援を受けるスタジオが複数あることを想定すると異例とも言えるが、本社から業務を定期的に請け負うことが出来ることや、行政側の指定した地域は新規の産業区が割り当てられており、無錫市の生活圏から離れているため若干不便であることをその理由として挙げていた。
 ただ、中国アニメ業界について王氏に確認すると「日本人クリエイターの能力には遠く及ばない」と分析。オリジナルアニメが数多くリリースされ、いくつかは成功をその手にしていることを認めながらも、「技術力が追いついてない」と王氏。現在の無錫スタジオは立ち上げから4年ほど経過しているが、請け負う業務は、動画と背景、彩色がほとんどであるという。人材としては原画までおこなえるスタッフがいるものの、キャラクターデザインを出来る人材はまだ育っていないと王氏。また、原画についても、日本国内でも原画マンになるには、5-8年はかかるということで、無錫スタジオの人員は「まだ学習段階」と指摘した。また、現在撮影業務に関する技術の習得も進めているという。インターネット回線が安定してきた状況をふまえ、撮影が終了した段階でネットによって本社に素材を送信することも可能になったことをふまえての業務拡大のようだ。
 同時に国内企業とのネットワークを広げ、中国国内での展開について模索することも始めている。09年に広州東かん市を訪問したのもその一環だ。同地域は現在、中国最大の玩具生産拠点となっており、これらの企業との連携を果たすことで玩具を題材にしたアニメの国内放映などが見込めるとのこと。様々可能性を模索することで、急速に拡大する中国コンテンツ産業への参入も視野に入れているようだ。

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