アニメ・スピードピッチ 海外アニメプロデユーサーとクリエイターの出会いとは?

 近年、アニメの産業としての可能性、そして文化面の波及力の大きさが益々注目されるようになっている。その潜在力を活かした海外展開も積極的に語られている。しかし、完成品として日本のアニメーション(=アニメ)は数多く輸出されているが、クリエイター自身が海外で活躍する例はまだ少ない。
 この10月に経済産業省とユニジャパンが行った「アニメ・スピードピッチin Tokyo 2010」は、そうした状況に一石を投じるものだ。アニメ・スピードピッチは、日本のクリエイターの企画を北米のテレビアニメーション関係者に直接売り込む場を創りだす試みだ。

 北米では一般的なピッチ(Pitch)と呼ばれる短時間で自身の企画を個別にプレゼンテーションをして売り込む方法を使ったものである。事前に募集した50組のクリエイターが、海外から招いたテレビアニメーション分野のプロデユーサーにオリジナル企画を売り込んだ。
 クリエイターは日本のアニメ・ゲームの現場で活躍するプロばかり、しかも企画は他のコンテツから派生しない完全オリジナルな作品だけである。対するプロデユーサーは、ワーナーブラザーズ・アニメーション、カートゥーン・ネットワーク、ネルバナ、ウォルト・ディズニーなどに関わるトップクラスのプロデユーサーである。

 ピッチは10月25日、26日の2日間行われ、27日にはピッチに参加したプロデューサーと今回の企画をコーディネートしたWowmax Mediaの海部正樹氏によるシンポジウム「ピッチングの極意 北米市場売り込みのための戦術指南」が行われた。シンポジウムは2日間のピッチの様子、成果を紹介し、また日本では馴染みが薄いピッチの極意を披露するものだった。
 しかし、シンポジウムでのプロデューサーの発言からは、彼らは今回のピッチから必ずしも大きな成果が得られなかった様子が窺えた。コーラス・エンタテインメント/ネルバナのデレック・リーブス氏はピッチの参加者の才能は認めつつも「我々が求めているものを理解しているかどうかが問題だった。企画はもっと視聴者をはっきりさせる必要があり、必ずしも求められているものにヒットしていなかった」と指摘する。
 シャトローンのアーロン・バーガー氏も「子どもたちが観たがるものなのか、アピールするのか、そうした目的に欠けている」と話す。また、ウォルト・ディズニー・テレビジョン・インターナショナル ジャパンのエディー・カックス氏は「我々はディズニーなので、(最初から)絶対に放送しないものがある。そうした放送局については事前に勉強して欲しい」と発言する。

 いずれもかなり厳しい発言だが、これらはクリエイターの才能を否定するものでない。むしろ、才能を前提として、プロモーション、マーケティングのセンスを持って欲しいというアドバイスである。つまり、クリエイターといえども、オリジナル企画を立てる際にはビジネスサイドも意識するべきという米国流の考えが貫かれていた様に感じた。
 一方の日本のクリエイターは、一般的には作品を生みだすことに集中することが多い。創作物や創作活動をマネジメント、あるいはマーケティングするのはプロデューサーの仕事と思われがちだ。
 クリエイターからみれば、企画を見せるのは自分の才能をアピールするもので、それが気に入れば一緒に売れる方法を考えましょうといったことを期待したのではないか。しかし、プロデューサーの立場は、スピードピッチは才能の発掘ではなく、売れる企画の発掘の場である。だから、そこにお互いのニーズのずれが生じる。「才能はあるけれど、我々が求めているものでない」という感想もここから生れる。

 しかし、今回のピッチに成果がなかったわけはない。むしろ、そうした北米流のアニメーション企画売り込みがどのようなものかを多くの人が理解した点こそが、大きな成果だ。どのような人たちが企画を選び、どの様な基準で企画が選ばれるのかである。そして海外とのビジネスは意外に近い場所にあることを、ピッチに参加したクリエイター、シンポジウムの聴衆は感じたに違いない。
 大きな目標到達のためには小さな一歩が必要なのは言うまでもない。日本にあまりないピッチを敢えて導入したアニメ・スピードピッチの企画は、大きく評価されていい。今回の試みが継続的に続けば、今後、大きな飛躍をみせるはずだ。

ユニジャパン http://www.unijapan.org/

■アニメ・スピードピッチ in Tokyo 2010
「ピッチングの極意 北米市場売り込みのための戦術指南」

2010年10月27日 政策研究大学院大学

[出演]
ジェイ・バスティアン
  (ワーナーブラザーズ・アニメーション オリジナルシリーズ部門副社長)
カーティス・レラッシュ
  (カートゥーン・ネットワーク コメディアニメーション部門部長)
デレック・リーブス
  (コーラス・エンターテイメント/ネルバナ 国際共同製作部門マネージャー)
アーロン・バーガー
  (シャトローン 代表パートナー)
エディー・カックス
  (ウォルト・ディズニー・テレビジョン・インターナショナル ジャパン バイスプレジデント兼ディズニーチャンネルジェネラルマネージャー)

[モデレーター]
海部正樹
  (Wowmax Media CEO)