電通エンタテインメントUSA  坂田雄馬社長に聞く 後編

-米国で目指す アニメーションのマスマーケット戦略 -
電通エンタテインメントUSA  坂田雄馬社長に聞く

– この春、電通エンタテイメントUSAが、北米の有力玩具メーカー ジャックス・パシフィックと新しい玩具をもとにしたアニメーション企画「モンスーノ:MONSUNO」を発表し、日米の関係者を驚かせた。これまでの単純なアニメーションの輸出でなく、企画段階から関わる新しいかたちのビジネスである。「モンスーノ」と何なのか?そのプロジェクトはどこを目指しているのだろうか。

【「MONSUNO」と新たなビジネスへの挑戦】

AA
いままで『デルトラクエスト』の話を伺っていたのですが、この後もまだ新しい作品は出て来ますか?

坂田 
あります。うちはプロデュースカンパニーとしてプロデュースをして行きます。事業構築、プロデュースをなりわいとしていこうと思っています。
事業を進めるものとして映像エンタテインメント、つまりアニメーションを使います。さらに言うと子供向けです。アニメが対象としている13プラスは考えません。うちは制作会社じゃないのでそこでは儲けられないからです。

そして子供向けなので、大きな投資回収カテゴリーはやはりトイです。トイといっても、今は昔になかったゲームがあって少しややこしいものがあります。フィジカルに触って遊ぶものとゲームをピコピコやるものと対照的なものがあるんです。とは言ってもゲームで遊ぶ年ぐらいになってくると、アニメーションから離れていく傾向があるんですね。僕らはアニメーションにこだわっています。

AA
フィジカルなトイとアニメーションですね。

坂田
うちの方針は、トイですね。日本で言えばバンダイさんとがっちりやるとか、タカラトミーさんとがっちりやるとか、そういうものと同じかもしれません。けれども、アメリカのがっちりのやり方は日本と少し違うと思います。
つまり我々がプロデュースするこの映像を、どこまであなたのトイはバックアップしてくれますかです。逆に言うと、あなた方はあなた方のおもちゃの事業を拡大していくために、どれだけ我々のエンタテインメントを利用出来ると思いますかです。ここでそちらのエンタテインメントはすごい、あなたたちのトイはすごいってなった時に、初めて事業がスタートすると思っているんです。

AA
それは実際にはどのように進められるのですか?

坂田 
アメリカの玩具会社が事業計画に基づいて、ひとつのおもちゃを生産し、販売していくのは大事業です。すると5年ぐらい前からプロジェクトをスタートしたりします。そのタイミングで、映像ビジネスとかエンタテインメントビジネスの事業も考えていきます。
映像が26話なのか52話なのか、この投資を回収できるのか。この人たちの事業規模が仮に100億円で、100億円ウォルマートに卸しますと、じゃあその10%が我々のプロデューサーの収入ですね。つまり10億円です、これが何年続くビジネスなのか計算するといったように事業計画を確実にします。これがうちのモデルで、うちにとって必要要件がそろったときのみアニメーション制作に着手(投資)します。

実は第1弾でアメリカのJAKKSという玩具会社と組んだ「モンスーノ」という作品が来年、再来年にあります。
原作は問わないと申しましたのでので今回は完全オリジナルの作品です。そしてメード・イン・ジャパンのアニメーションで、脚本家は一流のアメリカ人になります。

AA
JAKKSはどういった会社なのですか?

坂田 
JAKKSはアメリカで大きな玩具会社です。彼らは今、『ポケモン』もやっているんです。あと、日本ではないですけれど、WWEというプロレスのフィギュアをやっています。それがJAKKSの主力製品です。その他ライセンスを受けてかなりの数の玩具を製造、販売しております。
彼らは自分らのオリジナルIPを基にした玩具を製造販売していないんです。ライセンス料を支払って『ポケモン』をやったりですとか、プロレスではプロレス団体にお金を払ったりですとか、基本的には他者のコンテンツでビジネスをしています。これまではブランド開発リスクを取らず、その意味では自社開発をしていません。若い会社でそういう考え方で伸びてきたんです。このため自社ブランドって持ってないんです。
なぜここで僕らと結びついたかというと、自社ブランドを持ちたいという思いがここ数年、たまたま彼らの社内計画の中にあったんです。そこでJAKKSさんから、当社の戦略や開発商品を紹介する中で当社と一緒に自社IP、自社のブランドで打って出たいとなりました。

AA
大ヒットを狙う作品と考えていいですか。

坂田
日本のアニメはコアターゲットに向けられていますが、それとは別に誇れるものとして、『ポケモン』があって、『遊☆戯☆王』があって、『ベイブレード』があります。『爆丸』もあります。この10年で4作品なわけです。じゃあ、イタリアやフランスのアニメーションにこれがあるかというと、ないんですよ。3年、4年に1回アメリカの子供たちの心をわしづかみにしているアニメーションが日本にある、これは誇るべきことだなと思っています。次のそうしたものをぜひうちの会社からプロデュースできればと思っています。
ただ、これまでの作品は、全部純粋なアニメーションではないですよね。『遊☆戯☆王』は確かに『ジャンプ』でも連載されていました。しかし、あれが純粋なマンガ、アニメーションかというと、カードゲームというひとつの大きな流れがありました。『爆丸』も、あれはあの球っこいおもちゃのヒットなんですよ。

ただうちは違っていて、エンタテインメントとしても成立させたいというのがあるんです。エンタテインメントとしてきちんと成立させたいなという思いが強くて、映像だけでもおもちゃを買わなくても見ても分かるようなものにしていきます。
このおもちゃを子供たちに買ってもらわなきゃというビジネス面はもちろんありますけど、基本はエンタテインメントとして成立させる。それでこのモデルで、来年、再来年に向けてひたすら突き進んでおります。

AA
その後にも作品はありますか。

坂田
アメリカの脚本家、子供向けというところで第2弾、第3弾を目指します。実際に話はいっぱい来ているので、どれをチョイスしていくかです。
第2弾、第3弾も方程式に当てはめながらです。場合によっては変化球として時代の要請で一挙に変わるかもしれません。それは分からないですけど、基本はやはりアニメーションで相手と完全なタッグを組みます。

AA
そうすると、今後はずっと大きく出てくることになりますね。

坂田 
ドカーンと出ていって、どうなるかですね。残念ながらエンタテインメントビジネスのリスクは否定出来ません。子供たちにどんなにテストを繰り返しても、テストでは相当な評価を得たのに、表に出してみたら視聴率が0.何パーとか、これはあり得る世界です。
ただ、事前段階で、きちんと全世界向けの事業計画を綿密に立て、準備し、アニメーションビジネスを推進するという会社は、日本で今までなかったはずです。ここは誇れるかなと思っています。事業計画までは完璧だということです(笑。

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