「HEROMAN」南雅彦プロデューサー インタビュー 企画誕生の秘密

■ アメリカではリナはバスに乗らない?

アニメ!アニメ!(以下AA)
企画を進めるうえで大変だったのは、どういう部分ですか。やはり文化摩擦はあると思います。

南雅彦プロデューサー(以下南)
Skypeや電話とか、直接会ったり、何度も話をさせてもらっているので摩擦というほどではないですね。あるのは「デートに行くときにバスに乗っちゃだめだ」とかね。「何でだ?!」みたいな話です(笑)。「リナは金持ちの娘だから、バスに乗らない」と言われて、「それをジョーイに合わせるのがリナの優しさなんだ」と返すみたいなね。そういう文化摩擦はたくさんありましたけどね。(笑)

AA
ビジュアル的にはどうですか。


ビジュアルも何度もミーティングをしました。ヒーローマンのデザインもジョーイのキャラクター像もずいぶん何稿も重ねて描きました。ただ、日本のアニメーションのデザインでいくというのは決めていたので、その中でコヤマシゲトというデザイナーに描かせるというのは、これは絶対に曲げるつもりはなかった。
ただ、ストーリー的な部分では、基本的にスタンの言うことに首を横に振ることはやめようと自分の中では思っていました。結局いくつか横に振りましたけどね。基本的には「じゃあ、やってみましょう」です。

AA
ストーリーラインはどのように出されたのですか。


最初に上がってきたのは、スクラッグ編という、最初の宇宙人との戦いです。どちらかというと劇場映画の1本のプロットみたいな感じだったんです。「これはテレビシリーズでいうと、何話分ぐらいなんだ」とスタンに聞いたら、「8話分か9話分ぐらいかな」と。
それで構成を組んで、足りない部分をドラマとしてどう思っているかを全部書いてスタンに見せました。それで「オーケー、こんな感じだよ」って。

■ 子供向けほど、子供をなめたフィルムは作ってはいけない

AA
ボンズさんはハイエンドな作品を作るスタジオとのイメージがあります。一方で『絢爛舞踏祭ザ・マーズ・デイブレイク』や大ヒット作の『鋼の錬金術師』は少年のための番組です。子供向けの指向もかなり強いように思います。『HEROMAN』はこのなかではどういった位置づけになりますか。


スタジオのカラーとかジャンルづけを皆さんしたがるんですけど、あまり考えたことはないですね。うちの最初のテレビシリーズは『ヒヲウ戦記』ですから。最初から子供のための子供に観てもらいたいフィルムづくりもやっています。『WOLF’S RAIN』をやりながら『ザ・マーズ・デイブレイク』とか、意外とそうなんですよ。
例えばハイエンドと見られているかもしれないですけど、『交響詩篇エウレカセブン』もロボットアクション物ではあるので小学生、中学年以上であれば楽しめるフィルムです。

逆に子供向けほど、子供をなめたフィルムは作ってはいけないですね。『ヒヲウ戦記』は非常に難しいフィルムです。幕末の話なので、その時代を理解し、追いかけていくというのは一番難しいですね。でも、ドラマを追っかけても十分楽しめるようにも作ってあります。

『HEROMAN』も、すごく真っすぐなヒーロー物ではあるんですけれども、やはり人間同士のかかわり合いとか、大人が見てもすごく入っていけるような、感情移入ができるフィルムには仕上がっています。親子で見てもらってもいいし、いろいろ楽しめるフィルムにしているつもりです。

AA
『HEROMAN』は一見は子供の番組ですが、枠はそんなに決めてない感じですか。


上に向かって伸びていけるフィルムにはしています。小学校低学年から、中学生ぐらいが一番楽しめるとは思います。けれどもデザインとかは非常にハイエッジなフィルム、絵づくりにしてある。例えばすごくエッジが尖ったお客さんに対しては、そういう観てもらい方ができるものになっています。

■ 「HEROMAN」のテーマは「ヒーロー」

AA
『HEROMAN』の企画段階で意図していたのは何でしょうか。作品自体のテーマでなくて、作品を作ることに対するテーマなのですが。


ビジネスでいうと一歩を踏みだしたかたちで、日本のアニメーションを海外に持っていける作品づくりをするということです。
けれど単純にスタンが『HEROMAN』のことを語っているのが好きだったんですよね。楽しそうに話すんです。ヒーローなんてこと久しぶりに聞いたぞみたいなことになって。じゃあ、今、ヒーローって何だろうと、自分たちも考えさせられた。今の日本の子供たちにこのスタンがにこにこしながらしゃべっているヒーローが、どう受け入れられるのか、受け入れさせなければいけないのかです。
『HEROMAN』を日本の子供たちがどれだけ好きになってもらえるのかというのが陰のテーマなんです。

AA
『HEROMAN』はアクション物、成長物と捉えていいんですか。


そうですね。ジョーイとヒーローマンの成長物語ではあるし、2人のバディー物でもある。あとは仲間、サイやデントン教授、リナ、そのチーム物でもある。当然アクションもあります。2人で戦うという気持ちよさにつながっています。

AA
作品のタイトルがその「ヒーロー」と直球ストレートですけど、これは最初から出ていたのですか。


オリジナルをやりたいと聞いて、最初にミーティングに行きました。じゃあ、どういうオリジナルをやろうかから始まると思っていたんです。それで自分が『スパイダーマン』よりは『X-メン』の方が好きだとか、うちはロボットが得意でみたいに話していたら、メモをぴっと出してきたのが『HEROMAN』。だから、もともと『HEROMAN』でしたね。

AA
すると作品のテーマは「ヒーロー」。


ヒーローですね。「ヒーローとは?」みたいに、ヒーローを問いかけるフィルムです。

AA
それは最終回に至ると、結論は出るんでしょうか。


ある意味で出るかもしれないですね。一方で、ずっとヒーローを描いているので、ヒーローを描き続けているフィルムになっています。
ヒーローマンがヒーローの具現化したものだとすると、ジョーイにとってのヒーローとは、サイにとってのヒーローとは、あるいは見ている人たちにとってのヒーローとは何ぞやというものです。

そして、ジョーイもヒーローです。ジョーイは自分の中のヒーローというのは何かと、探しているです。だから1話を見ると分かるように、ヒーローマンが僕にとってのヒーローだ。最初はヒーローマンがヒーローだというところから入っているんですよね。たぶんジョーイはヒーローを求めていた子だったんです。

AA
それでは「ヒーロー」に注目しながら、今後も作品を観させていただきます。
本日はどうもありがとうございました。