国際的な彩りを見せた CEDEC2010 海外関連セッション

ロミ

 8月31日~9月2日にかけて横浜みなとみらいで開催されたCEDEC2010では、海外を意識した講演内容が数多く見られた。初日だけでも、3つのセッションで海外での共同開発やローカライズについて現場スタッフの生の声を聞くことができた。

 まず、最初の2つは『海外系ショートッパック』とよばれる30分ずつのセッション2本立てである。「北米企業・欧州企業との共同開発-開発スタッフが遭遇する傷害-」、「はじめての日米共同開発~日米両国でのディレクション経験を通じて得た、たくさんの気づき~」と題されたプレゼンテーションでは、北米拠点を持つスクウェア・エニックスのスタッフにより、体験談を基にした海外との共同開発現場で遭遇する問題点やこれまでの思い込みとは異なる実際の開発手法が紹介された。

 問題点としては、物理的な距離により同じ空間を共有できない、時差による活動時間帯のズレ、言葉の壁による意思疎通のハンディなど、国際共同作業のハードルの高さをうかがわせた。これらはコミュニケーションの密度や質にも影響を及ぼし、細長く歪になってしまった情報のパイプラインを補うため、本来開発に費やされるべき時間と労力が、資料作成や長時間のテレコンファレンス会議など、コミュニケーションコストに削がれてしまうという弊害があるという。

 同時に海外拠点の開発現場では、想像とは異なる開発手法に気づかされることも多いようだ。リアル志向と思われていたキャラクター造形は、どんなに奇抜なものでも実在してもおかしくない「ビリーバブルな(信じられる)」形が重視される。意思決定もトップダウンと思われていたが、実は皆が民主的に意見を出し合い、トップがその場の「空気を読みながら」汲み取っていく。ドキュメント重視という点では、むしろ想像以上に重要視しているようだ。「バイブル」と呼ばれる綿密な世界観設定のルールを決めてからの作業となるため、リテイク作業も少なく、方向性もブレずにすむという。

 3つめの「英語だけじゃない!外国人が語る欧州言語向けローカライズの現状と課題」と題されたセッションでは、外国人トランスレーターが英語以外の欧州言語にどのようにゲーム作品が翻訳・ローカライズされているのか、実例を交えながら紹介した。
 よくある問題としては、英訳をベースにした場合にフランス・イタリア・ドイツ・スペイン語(まとめてFIGSという)に翻訳しなおす際、元の英訳が間違っていると他言語には翻訳不可能になってしまうということがあげられる。また、欧米ではローカライズのアプローチも異なるという。アメリカでは直訳をする人(翻訳家)、それを自然な英語に直す人(エディター)と複数人数が分業制で行うのに対し、ヨーロッパでは両言語に精通した人材が一人で行う。特に固有名詞で顕著なのが、各国でどこまでオリジナル(原名)を残し、どこからローカライズ(その国に馴染みやすい言葉に置き換える)を行うかの線引きである。各国の事情や作品ごとの状況によるというが、それでもフルローカライズを求める声はドイツやフランスでは根強い。うまくバランスを取りながらクライアントとファンの期待に応えることが、欧州言語トランスレーターに求められるスキルだという。

 CEDECは基本的にはゲーム開発技術者たちの情報交換と交流の場であるが、セッションを通じて伝わってきたのは、海外との共同制作での課題や現状はゲーム開発現場だけではなく、あらゆるコンテンツ制作でも起りえる、共通する問題であると言えることである。今後、ますます国際化が進み、海外との垣根が低くなることが予想されるコンテンツ業界において、CEDECのようなイベントは、活発な情報交換や人材交流によって問題解決のためのヒントを与えてくれるかもしれない。クロスメディア・イベントとしての機能を持つ、貴重な場になっていくことは確かである。

CEDEC(CESA Developers Conference)2010
http://cedec.cesa.or.jp/2010/