2010年サンディエゴ・コミコン企業ブース(出版社編)

 総合エンタテイメント化が進んでいるサンディエゴ・コミコン(Comi-con International)だが、実際はコミックスの占める割合は依然大きい。映画やゲーム、テレビなど他分野の拡大で相対的には存在感は低下して見えるが、コミックスイベントとして見れば他のイベントを引き離す全米最大の圧倒的な存在である。それだけに会期中幾つも開かれるトークイベント(パネル)では重要発表が幾つも行われ、コミックスファンは目が離せない。
 そして、マーベル・エンタテインメントとDCコミックスは、エキビジョン会場の中心に巨大ブースを持ちコミコンの主役であることを誇示している。しかし、マーベルのブースの中心は中央に置かれた巨大ステージである。コミックス作品の紹介よりイベントに力を入れているように感じた。同社の事業に占める出版の割合は近年低下しており、映画やキャラクターマーチャンダイジングがより重要になっていることもこうした構成に影響を与えているのかもしれない。コミコン全体の変化は、面白いことにマーベルの会社としての変化ともパラレルになっている。
 一方、DCコミックスはキャラクターを全面に打ち出したブースづくりになっていた。しかし、こちらもマーベル同様に、ブースの役割は物販ではなく、企業、ブランドの宣伝の場である。両社は数多くのトークイベントも行っているが、この中でも作品の映像化情報がかなりの部分を占めていた。

 実際にコミコンでコミックスらしさを感じさせたのは、2大出版社以外の出版社である。会場で存在感を発揮していたのは、IDWパブリッシングである。同社はダークホースエンタテインメントと並び、コミックス出版の3位、4位グループである。1999年設立と歴史は浅いが、『30 Days of Night』などのヒット作を持つ。さらに『スタートレック』や『トランスフォーマー』などのコミックス化で成長している。
 もっともマーベルとDCがおよそ7割のシェアを占める米国市場では、3位グループといっても市場シェアは5%に達しない。それでもかなり大きなブース出展となっているのは、同社の本社がサンディエゴにあるためかもしれない。地元企業としてコミコンに力を入れる。さらに2大出版社と異なり、自社のコミックスを積極的に販売する様子が印象的だった。
 ダークホースのブースも、自社タイトルの販売が中心になっている。こちらも場所的に展示場の中央で、主催者がコミックス出版社を優遇している様子が見て取れる。ダークホースはフランク・ミラーの『Sin City』や『300』、『スターウォーズ』のコミカライズドでも知られている。

 

 米国のコミックス出版社というとマーベルとDCコミックスが知られているが、コミコンの会場を訪れると驚くほど多くの出版社があることに驚かされる。例えば、アイズナー賞の受賞作品を眺めると、驚くほどマーベルやDCコミックスの作品は数が少ない。日本人には聞き慣れない出版社の名前が目立つ。
今回日本マンガから実話部門で受賞した辰巳ヨシヒロさんの『劇画漂流』も、Drawn&Quatelyという現地の中堅出版社から発売されている。米国のコミックス市場は日本から見る以上に複雑なようだ。
 ビジネス的には2大出版社の寡占市場に見えるが、同時に中小出版社の存在が米国コミックス界の多様性に貢献している。そこにはコミックスというニッチな市場の中のマス向け作品を送り出す2大出版社のビジネスと、スーパーニッチというべき作品をコアターゲットに送り出す中小出版社という2層構造が存在する。
 日本マンガの市場で寡占的な位置にあるVIZ Mediaを例外にすれば、日本マンガもこうしたスーパーニッチな出版社により発売されている。ランダムハウス系のデル・レイ、フランスの大手出版社アシェット系列のYenPressも含めて、日本マンガの主戦場は中小の個性的な出版社である。例えば、手塚治虫や竹宮恵子の作品を積極的に扱うヴァーティカルのような出版社の存在を挙げることが出来るだろう。

デルレイ
ヴァーティカルのラインナップ

  コミックスファンにとってコミコンのエキビジョンホールで見逃せないのが、コミックスやコミックス原画を販売するブースだ。コミックスショップは米国ではコレクターズアイムとなっているコミックスのバックナンバーを並べたもので、アメコミのイベントでは見慣れたものである。一方、コミックス原画もコレクターズアイテムとして売られている。
 原画がどこから供給されるのか不思議だが、アーティストが自作を販売するアーティストアレイでも売っているところを見るとアーティスト自身によるもののようだ。一般に米国のコミックスは原作、イラストレーションの権利は出版社が保有することが多いが、原画の所有権はアーティストに残っているようだ。いずれにしてもコレクターでなくても目を奪われる原画が並んでおり、楽しいエリアである。
 また、数は多くないがアニメーションのセル画や原画を扱うショップなども見られる。コミコンがマニアのためのイベントであることを感じさせる部分だ。

コミコンインターナショナル (Comic-Con International)
http://www.comic-con.org/