2010年サンディエゴ・コミコン企業ブース(映像企業編)

 サンディエゴ・コミコン2010(Comic-Con International)の主役は、依然コミックスであるのは間違いない。大手コミックス出版のマーベル・エンタテインメント、DCコミックス、IDWなどだけでなく、全米に多数存在する数多くの中小出版社、さらにコレクター向けのショップやアーティストアレイのクリエイターたちの存在がそれを感じさせる。
 一方で、映画やテレビドラマ、放送局の存在も近年急激に強くなっている。それはコミックス原作の映画、テレビ、アニメーションの製作が急増しているのと無関係ではない。また、2009年暮れにマーベルがウォルト・ディズニーに買収されたことも、コミックス分野への映画会社の影響力拡大、コミックスと映像ビジネスの融合を促している。2009年にはDCコミックスもワーナーブラザーズの子会社から同社の事業部門へ再編されているから、米国の2大コミックス出版社はいまや映画業界と一体化している。

 そうしたなかではあるが、コミコンのディズニーのブースは、コミックス原作作品色をあまり強く打ち出していなかった。同社のブースで一番大きく取り上げられていたのは『トロン』である。スーパーヒーローはあくまでマーベルが主体といった住み分けがあるのかもしれない。
 同様に巨大なブースを設けたワーナーブラザーズも、主力はSFドラマ『V』や、『SMALLVILLE』、『FRINGE』、『スーパーナチュラル』などである。期間中は、作品に登場する俳優が訪れてサイン会を行うなど大盛況であった。映画よりもテレビドラマが中心となっている。実写ドラマをファンに売り込みたいとの思惑が窺える。


 実際にコミコンはハリウッドのエンタテイメント色が強いというものの取り上げられる作品には幾つかの特徴もある。ひとつはSF、ファンタジー、ホラー分野が圧倒的に強いことだ。コミックスにSFが多いことも理由とみられるが、テレビ番組の強さもそのひとつである。
 ジャンル分野系のテレビチャンネルは、ディズニー、ワーナーのほかFOXやHBO、G4、スパイクTV、SHOWTIME、BBCアメリカ、STARZなど広範囲に及ぶ。最新作品紹介の場であると同時に、有力ケーブルテレビチャンネルのアピールの場でもある。

 これはアニメーション専門チャンネルでも同様である。米国のアニメーション・子ども専門チャンネルはディズニー系、ニコロデオン系、カートゥーンネットワークがビッグ3だ。それぞれが存在感をアピールする。最も大きなブースを設けていたのはニコロデオンである。ニコロデオンカラーであるオレンジを基調に設営し、同社の人気作品「スポンジ・ボブ」を中心とする。ディズニーXDは、ディズニーブック内での出展だった。
 カートゥーンネットワークも、同局の特徴である白と黒の印象的なロゴを利用したブースを設けた。しかし、紹介されている作品は、「アダルト・スイム」と呼ばれる深夜帯のオリジナル作品が中心となった。特に同局が力を入れる実写ドラマが主体となっている。カートゥーンネットワークの局名とは裏腹に、アニメーションでは存在感がなかった。

 一方で、この秋に開局するThe hubが、アニメーションチャンネルとして存在感が大きかった。米国第2位の玩具メーカー ハズブロと有力放送局ディカバリーチャンネルが手を組み、スタート当初より全米に放映ネットワークを張り巡らす大型プロジェクトである。ディズニー、ニコロデオン、カートゥーンネットワークに続く、4番目のメジャーな子どもチャンネルを目指す。作品は『トランスフォーマー』や『GIジョー』のほか数多くのアニメーション、ゲーム番組などを盛り込む。
 新しいチャンネルへの力入れ具合は、ハズブロのブースでの破格の取り扱いからも理解できる。さらにThe hubはチャンネル宣伝のために、隣接するマリオットホテル内に巨大な特設会場まで設けるほどの力の入れようだ。子ども向けチャンネルのパワーバランスが変わるのか、今後も注目だ。


 

 コミコンで最も話題を集めた映画のひとつが、ユニバーサルによる『スコット・ピルグリムVS.ザ・ワールド Scott Pilgrim Vs The World』である。会場に隣接するヒルトンホテルの外観を一杯に使った巨大な壁面広告が来場者の目を惹きつけていた。映画公開直前ということもあり、かなり宣伝に力が入った。
 ギーク(オタク)な少年が、刀を片手に大活躍というOni Pressから発売される原作コミックスの売れ行きのよさも話題になった。しかし、8月13日からスタートした公開初週の劇場興収は、1050万ドル、ランキング5位とやや物足らない結果に終わっている。一般化、大衆化が進んでいるとされるコミコンではあるが、やはりマスマーケットとのずれは存在するようだ。コミコンの存在を考えるうえでも興味深い。

 外部の大型壁面広告は、ワーナーブラザーズが会場に隣接するオムニ・ホテルで同様の試みを行っている。コミコンが急激に拡大するなかで、コンベンション会場は既に数年前から一杯で、エキビジョンホール、トークイベント会場、上映会場スペースは限界に達っしている。エキビジョンホールへの新規参入には、ウェティングリストに名前を載せ、数年越しの交渉とまで言われている。今年は、アニメ上映やインディペンデント映画祭などが主会場からマリオットホテルに移動した。また、アイズナー賞の授賞式などを行う大ホールは、隣接のヒルトンホテルに設けられている。
 この結果、資金力のある大手企業は、自社や作品の宣伝の場を会場の外に求めている。下記の写真はサンディエゴの街中に登場した「サイファイ・チャンネル」のコンセプトカフェである。店内のインテリアを自社作品に統一し、メニューもサイファイ関連で揃える。また会場周辺のレストランやカフェの各所で、コミコン関連のイベントが多数行われている。こうしたイベントは非公式イベントのため、公式プログラムで紹介されず、実際にどんなイベントがどの程度行われたか把握するのは非常に困難だ。巨大化するコミコンを象徴するような出来事だ。

コミコンインターナショナル (Comic-Con International)
http://www.comic-con.org/