2010年サンディエゴ・コミコン(日本コンテンツ編) 

 毎年夏にカリフォルニア州サンディエゴで開催されるコミコン(Comic-Con International)は、ボップカルチャー分野では全米最大のイベントである。もともとコミックスの祭典から始まったコミコンだが、現在は映画やTV、ゲームなど多様なカルチャーを取り入れている。そうした多様なカルチャーの中に、日本のアニメやマンガ、キャラクターも含まれている。
 日本のアニメやマンガを取り上げた米国のイベントでは、同じ時期にロサンゼルスで行われるアニメエキスポ(AnimeExpo)やボルチモアで開催されるオタコン(OTAKON)がよく知られている。しかし、コミコンでは、アニメコンと呼ばれる日本のポップカルチャーだけを取り上げるこうしたイベントとは異なった風景が見えて来る。

マンガエンタテインメントのブースは早くも「REDLINE」を紹介

 アニメコンだけを見ると、「クールジャパン」に代表される日本のアニメ、マンガが海外で大人気という言葉を実感する。ただ、そこではアニメコンが日本カルチャーファンが集中した特別な場所だと言うことを忘れがちになる。コミコンではそこから一歩離れて、米国のカルチャー全体の中でのアニメ・マンガの位置が見えて来る。
 例えば、各企業の出揃うエキビジョンホールでは、米国のポップカルチャーのメインストリームがハリウッドの大作映画であり、人気テレビドラマであり、コミックスヒーローであることがよく分かる。会場を埋め尽くすブースと人は、そこを中心に動く。日本のコンテンツは、それを構成する一部分でしかないという当たり前の事実が理解出来る。
 これを見て日本コンテンツが、米国でメインストリームになれない、あるいは大したものでないと「クールジャパン」と真逆のことを言うのも可能かもしれない。しかし、もう一度よく見れば、「ポケモン」、「遊戯王」、「マンガ」、「日本製フィギュア」が、それでも確実にファンを獲得していることが分かる。
 米国以外の国でコミコンにこれだけ自国製のコンテンツを送り出している国がほかにない。これが米国のなかに置ける日本コンテンツの現在の位置づけだ。

 今年のコミコンでの日本アニメのトピックスは、これまで展示場に隣接する会議場を利用していたアニメ上映プログラムが、別会場のマリオットホテルに移されたことだ。アニメファンにとっては、メイン会場から切り離されたようでやや残念だ。それでも3つの会場を利用し、全ての会場でアニメだけを上映し続けるプログラムは特定ジャンルに対しては破格の扱いだ。アニメには熱心なファンが多数ついているようだ。
 アニメ関連企業のなかで積極的に活動していたのは、北米最大の日本アニメ流通会社のファニメーションである。ファニメーションは会場にブースを設け、最新作紹介、DVD販売、ミニイベントを行い人気となっていた。同社が業界のトップリーダーであること感じさせる。また、ファニメーョンは今回初めてパネルと呼ばれるトークイベントを開催した。コミコンをより重視する方向のようだ。
 また、別のアニメ流通会社バンダイエンタテインメントもパネルを行っていたが、アニメ関連企業によるパネルはそれで全部とやや寂しかった。また展示ブースもファニメーョン以外は、マンガエンタテインメントがアンカーベイのブランドとして、『REDLINE』、『First Squad』紹介しているのみだった。アニメ関連企業の経営体力が低下していることを感じさせた。

ファニメーションブースのミニステージ
ファニメーションの最新タイトル。重点タイトルが理解出来る
作品ごとのコーナー:「HEROMAN」

 アニメを取り上げる企業では、スクウェア・エニックスの存在感が大きかった。本来はゲーム会社だが、ブースではマンガとアニメにも力を入れている様子だった。マンガでは秋からスタートするネット向けの有料配信のデモストレーション、そして作家からのメッセージ色紙も取り交ぜた作品ごとの小ブースである。
 アニメはこの小ブースと組み合わせられ、映像も交えて紹介した。『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』、『デュラララ!!』、『HEROMAN』など最新作が並んだ。

 アニメを扱う会社では小学館・集英社系の現地日本マンガ出版社VIZ Mediaが大規模なブースを設けている。ただこちらはコミコンの場でもあり、マンガが中心である。人気の高い『NARUTO』、『Bleach』などを取り上げる一方で、米国では映像展開を行っていない少女マンガ『ヴァンパイア騎士』が大きく取り上げられている。
 少女マンガ市場の拡大が当初の期待ほど進まなかった米国だが、同作はその中で現在最も売れている少女マンガである。『ヴァンパイア騎士』の単行本はロサンゼルスの書店ではマンガ売り場だけでなく、少女向けの小説の棚でも見かけるほどだ。

日本マンガで存在感のあったVIZ Media

 しかし、マンガ出版の大型ブースはVIZ Mediaのみだった。従来大型ブースを持っていたTOKYOPOPが大幅に縮小したのも理由だ。アニメにおけるファニメーションと同様で、孤軍奮戦という印象だ。これは翻訳日本マンガ市場の現在の動向も反映している。有力タイトルの多いVIZ Mediaは市場の過半数以上を占め、2位以下に圧倒的な差をつけているからだ。
 中堅出版社では、ランダムハウス系のマンガ部門デル・レイ、アシェット系のYenPressが企業グループで出展したものの、DCコミックス系のCMXは事業撤退のため出展は行っていない。また、BL作品などを扱う小規模出版社の姿は見えない。一方、マス向けの売れ線作品でなく、よりハイターゲットなコンシュマーを狙ったヴァーティカルのような出版社の出展に今後のマンガビジネスの流れが見える。

お子様の多いポケモンブース

 

ピカチュウとスーパーガールが交流!?

 キャラクターに分野ではトレーディングカードゲーム(TCG)の『遊戯王』が目を惹き、このタイトルの米国での人気を確認出来る。ブースにはカードプレーのためのスペースが設けられ、北米での『遊戯王』のビジネスにこうしたイベントが組みこまれているのが分かる。
 ポケモンUSAによる『ポケモン』も、日本とは異なりTCGが前面に押し出されている。こちらもイベントでの大会がマーケティングに組み込まれている。また、会場に現れたポケモンの着ぐるみが子どもだけでなく、大人からも人気を集めていた。

センスの良さが際立ったKOTOBUKIYA

 キャラクター玩具では日本企業ではKOTOBUKIYAの大型ブースが印象的であった。もともとKOTOBUKIYAはこうした海外イベントの出展に熱心だったが、今回は日本カルチャーを押し出すことなく、ラインナップをアメコミキャラに置いており、メインストリームのファンに向けている。
 一方で、アニメキャラ風のスーパーガールズたちを壁面に配すなど、日本をモチーフにした差別化は行われている。さらに白を基調にしたハイセンスなブースは、同社が北米市場で打ち出すハイクオリティーなフィギュアのイメージともマッチする。日本企業による現地のマーケティング戦略では、今後が注目される存在だ。

TOYNAMIのレジ・受付の正面に「豆しば」が!

 フィギュアなどのキャラクター玩具では、現地の有力キャラクター玩具会社TOYNAMIが日本の「豆しば」を強力に打ち出しており驚かされた。米国では日本人の予想を超えたキャラクターが受け入れられるようだ。既に米国ではNHKのイメージキャラ「ドーモ君」のヒットという実績もあるから、アニメ、マンガ、ゲームだけでなく、キャラクターも海外展開の可能性がある分野のひとつかもしれない。

「デルトラクエスト」The hubで放映される唯一の日本アニメ

 こちらはこの秋に玩具会社ハズブロとディカバリーチャンネルがスタートさせる子ども向けの有力チャンネル「The hub」の特設会場から。「The hub」はハズブロブースだけでなく、巨大な別会場を設けるほど力が入れられている。
 そのスタートプログラムには日本アニメの『デルトラクエスト』も含まれる。会場では他の作品と共に、紹介されていた。

コミコンインターナショナル (Comic-Con International)
http://www.comic-con.org/