アヌシー2010とヨーロッパのアニメーションの現状 第2回

アヌシー2010とヨーロッパのアニメーションの現状 第2回
ヨーロッパのアライアンスと生産力、若手

オフィスH 伊藤裕美
[筆者の紹介]

伊藤裕美 (いとう ひろみ) 現職 オフィスH(あっしゅ)代表。
外資系ソフトウェア会社等の広報宣伝コーディネータや、旧エイリアス・ウェーブフロントのアジアパシフィック・フィールド・オペレーションズ地区マーケティングコミュニケーションズ・マネージャを経て1999年独立。海外スタジオ等のビジネスコーディネーション、メディア事情の紹介をおこなう。EU圏のフィルムスクールや独立系スタジオ等と独自の人脈を持ち、ヨーロッパやカナダのショートフィルム/アニメーションの配給・権利管理をおこなう。
1999年より毎年、世界最大規模のアヌシー国際アニメーション・フェスティバルに参加し、プチ・セレブ気分でアニメーション三昧の1週間を過ごすのが趣味。
http://blogs.yahoo.co.jp/hiromi_ito2002jp

■2010年代ヨーロッパアニメーションの傾向:アライアンス

写真:伊藤裕美

 フランスのToon Alliance(トゥーンアリアンス、http://www.toonalliance.com/)というコンソーシアムに参加する、パリの3DCGアニメーションスタジオMcGuff(マクガフ)はユニバーサル・スタジオと、3D映画『Despicable Me(怪盗グルーの月泥棒 3D)』(Pierre Coffin、Chris Renaud共同監督、http://www.despicable.me/)を国際共同制作した。米国のアニメーションスタジオが他国と共同制作することは珍しいが、フランスの文化産業振興策である税控除が奏功した。本作の制作はマクガフのスタジオですべておこなわれ、本年7月に米国で、10月にフランスで公開される。
 トゥーンアリアンスとは、パリ首都圏、アングレームがあるポワトゥ・シャラントゥ地域圏、そしてアヌシーがあるローヌ・アルプ地域圏に所在する企業6社が組織する“経済的利益集団”。共同制作と人材の再編成、そして技術開発に協力する、商業的レイベルであり、“クラブ”として発足した。トゥーンアリアンスのCEO、ジャンルイ・リゼは、「相互アライアンスは、3つの地域圏などから広範な資金調達を可能にする。国内だけでなく、カナダやロサンゼルスでの資金調達も図る。近々、タックスシェルターのベルギーに進出する」と語る。

■ヨーロッパアニメーションの“生産力”
 MIFAとは“将来の制作を話し合い、パートナーを見つける場”であり、“アヌシー”の目的には“新しい才能の発現”がある。日本からの初参加者の中には「ブースにいても、リクルートばかり」と不満を口にする者がいたが、まったく見当違いだ。“アヌシー”とは、新しいアイデアと技能・才能を見いだし、自らの企画に活かし、新しいものを共に作ろうとする人たちの場だ。アニメーターや演出家、脚本家、プランナー、出資者、放送・配給関係者らが世界各国から集う。まさに、共同制作のセットアップをする場として機能するのが、2000年代のMIFAといえる。
 MIFAには「Creative Focus」というマスタークラス、プロジェクトコンペティション、スタジオのスカウト面談があり、コンペティションの学生・卒業制作部門は若手の登竜門となる。MIFAの出展ブースの10%はスクールに当てられ、学生パスでMIFAに1日入場できる。ヨーロッパでは20年ほど前から、デジタル、コンピュータのアニメーションのスペシャリストを養成する教育機関があり、今日の隆盛を支える。ドリームワークスの国際アウトリーチ部門責任者であるシェリー・ページ氏は、複数の有力教育機関の卒業制作審査員を務めるが、優秀な作品が多く国際映画祭への出品作を選ぶのに悩むと言う。

 アメリカの専門誌AWNによると、世界にアニメーション制作スタジオは約5,000、うちヨーロッパには2,754ある。ヨーロッパでは、社歴10年程度の、比較的中小規模のスタジオやプロデューサーに勢いがある。中には伝統的アニメーションの手ほどきを受けずこの世界に入ってきた人たちもいる。
 テレビシリーズ、劇場公開ともに制作本数を伸ばすデンマークを代表するスタジオ、Copenhagen Bombay(コペンハーゲン・ボンベイ、http://www.copenhagenbombay.com/)のプロデューサー、ペーター・リンドブラード氏はデンマーク国内でCGアニメーション長編を約3億円で制作する。06年に設立したスタジオは安い賃金の国へ外注せず、現場スタッフに過酷な労働環境や異常な低賃金を強いることはない。そこには、世界市場を見据えた戦略がある。コペンハーゲン・ボンベイでは外部資金に頼らず、権利は保持する。そして、意思決定は迅速に、柔軟な組織運用で社内の人材を融通し合う。時差や言語が違う外国への外注は、スムーズな協働を妨げるという。
 一方で、北欧諸国との連携は強く、人と資金の交流は活発なようだ。北欧は1国単位では市場規模だけでなく制作力が限られるから、端から国際的枠組みを考えるプロデューサーが活躍する。スウェーデン出身で、デンマークでプロデューサーとして働くリンドブラード氏は、EUやカートゥーンなどのワークショップやフォーラム、MIFAなどで人脈を広げてきたと言う。

2に続く ヨーロッパの若手、アヌシーと練馬区