“賊軍”の彼らを“官軍”にしたい――世界中のファンがアニメ記事を翻訳する「Tokyo Honyaku Quest」の意義

日本のアニメが国境を越えた人気を集めている。7月18日に起こった京都アニメーションの放火事件では、世界中から悲しみの声が寄せられた。皮肉なことではあるが、いかに日本のアニメが世界から注目されているかを実感した人も多いのではなかろうか。

アニメの世界的な関心の高まりを受け、「アニメ!アニメ!」を運営するイードをはじめ、国内大手仮想通貨交換業者「bitFlyer」、日本のアニメ・ゲーム文化を世界に向け情報発信する企業「Tokyo Otaku Mode」、コミュニティ通貨を発行する「オタクコイン協会」の4社で、日本のアニメニュース記事を海外の有志が翻訳し、世界中に発信する翻訳プラットフォーム「Tokyo Honyaku Quest」(以下、「ホンヤククエスト」)をこの夏から立ち上げようとしている。

翻訳者および翻訳の協力者には、報酬として独自仮想通貨「HON」が付与され、「HON」はオタクコイン協会が発行するコミュニティ通貨「オタクコイン」と交換できる予定だ。「オタクコイン」を通じ、イベントの入場料やグッズ購入に充てることができる。

実証実験にはフェイスブックを通じ、アジアやアメリカ、ヨーロッパなど世界中から約1000人の募集があったという。職種別には、学生が多かったそうだ。ここから技術力の高い約20人が選ばれ、実験に参加。実験終了後は、一般ユーザー向けに広げていく方針だ。
翻訳記事の掲載媒体は、イードが運営する「アニメ!アニメ!」のグローバル版「Anime Anime Global」に掲載される。


パネルディスカッションの様子
「ホンヤククエスト」は一体どんなサービスになるのか、どういった狙いがあるのかについて23日、パネルディスカッション「ブロックチェーンを使った『ホンヤククエスト』の魅力」が都内で開催された。
パネリストに「bitFlyer」共同創業者・小宮山峰史氏、「Tokyo Otaku Mode」代表取締役社長の小高奈皇光氏、そしてイード代表取締役の宮川洋氏の3氏が登壇した。

パネルディスカッションではまず小高氏が「これまで公式ではない違法の翻訳であるけれども、クォリティは非常に高い翻訳が多かった」と指摘。
続けて「翻訳をしてくれる人達はお金儲けがしたいというわけではなく、純粋に日本の作品を愛してくれていて、自国にもその素晴らしさを広めたいという一心でやってくれている。公式にサポートすることで、半分“賊軍”である彼らを“官軍”にしてあげたい」と狙いを語った。


「Tokyo Otaku Mode」代表取締役社長の小高奈皇光氏
続いて「日本にはたくさんいいメディアがあるが、なかなか言葉の壁を超えることができなかった」と話すのは宮川氏。
「イードも過去2度3度海外進出を試みてきたが、失敗してきた歴史がある。ところが“賊軍”によって海外に広く報告されている。そう考えると、翻訳の部分を公的に整えることで、新しい価値が業界全体に広く知れ渡るのではないか。言葉の壁さえ乗り越えれば、日本のメディア、コンテンツの持つ力は何十倍にも世界に広がる」と意気込みを見せた。

一方で仮想通貨やブロックチェーンを手がける小宮山氏は、技術者の立場から「『HON』を集めることが自分のステータスをあげ、自分がこういう人であると証明できるという新しい価値を世界に発信できることにブロックチェーンとしての本質的な意義がある」と主張。
また、「レベルの高いクエストだけでなく、初学者でも取り組めそうなクエストを充実させていくことで、語学を勉強中の人が自分の能力を試せる場にしていければ」と期待を寄せた。


「bitFlyer」共同創業者の小宮山峰史氏
「ホンヤククエスト」を通じて、今後どういうメディア展開ができるのか、イードの宮川氏は最後にこう抱負を語った。

「メディアは一つのコミュニティを形成するもの。今回はブロックチェーンを使ってこれを活性化していく。とはいえ前例がほとんどなく、未知数な部分もある。もし広げられる事例が1つ2つできれば、この仕組みをアニメアニメ以外の57のメディアでも展開していきたい。新しいビジネスモデルとして、業界全体の展望が開けるのではないか。大いに期待をしており、プロジェクトに全力を傾けていきたい」


イード代表取締役の宮川洋
果たして仮想通貨、ブロックチェーン技術は日本のメディア、コンテンツの持つ力を何十倍に高めていくことができるのか。「ホンヤククエスト」の実証実験の行く末が期待される。
[河嶌太郎]