「コンビニ×アニメ」といえばローソン! 黎明期からの歩み、最新のコラボ事情を聞く【インタビュー】


今ではどこのコンビニでも行われている、アニメ作品とコンビニとのコラボレーションキャンペーンだが、その先駆者であり手法を確立させたのがローソンだ。

お店をまるごとアニメの世界観で統一しまうコラボ店舗にしてしまったり、逆にアニメ作品の中にローソンを登場させたり……アニメの世界とリアルな店舗を繋げて、ユーザーを店舗に誘導するローソン得意の手法はどのように誕生したのか。
また「ぜひともローソンさんとやりたい」と逆指名を受けるほどの、作品への理解度や情熱はどうやって生み出されたのか、そして、アニメ作品とコンビニとのコラボレーションの先駆者として、今後アニメとどう向き合っていくのか――。

今回、ローソンのアニメコラボ施策を推し進め、同時に「ローソンクルー あきこちゃん」などの自社キャラクターを最大限に活用したSNSマーケティングの中心人物でもあるローソンの白井明子さんにインタビューを行なった。
[取材・構成=山科清春]

◆白井明子(しらい・あきこ)◆
株式会社ローソン マーケティン部本部プロモーション部シニアマネジャー
大阪市松原市の店舗勤務を経て東京本社へ。
ローソンのソーシャルメディア戦略を推進、「ローソンクルー♪あきこちゃん」の生み出し、SNS上で活用アニメ施策を牽引。

 

■「恩師」山崎文雄氏の遺した教え

――まずはローソンがキャラクターキャンペーンに力を入れるようになった経緯を教えてください。

白井
そもそものきっかけは、ローソンがスタジオジブリさんとお仕事をさせていただくようになったことが大きい気がします。
現在もローソンは三鷹の森ジブリ美術館のチケットを独占販売させていただいているのですが、最初に『千と千尋の神隠し』とのタイアップを実現したのが、当時私の上司だった山崎文雄(崎は「可」の上に「大」)さんでした。
山崎さんはとても人懐っこい方で、「ローソンよりもジブリの方を大事に考える」とローソン社内で言われるくらい、とてもジブリ作品を愛されている方でした。
後に三鷹の森ジブリ美術館に転職されるんですが、2011年にご病気で亡くなられてしまって。

山崎さんは私を大阪の店舗から東京の本社に呼んでくれた方で、恩師です。
私はこの方がスタジオジブリさんとやり取りをされる姿を、ずっと近くで見ていました。この方がいなければ、ローソンとジブリのタイアップはなかったでしょうね。

――ローソンのアニメキャンペーンは、作品と作り手への「愛」から始まっていると。

白井
そうですね。私もそうですが、その山崎さんの“ジブリさんラブ”の熱いプレゼンをしているのを近くで見ていた人間が、まだ社内にいて、その“山崎イズム”を引き継いでいるんだと思います。
だからこそ、その後に続く『新世紀エヴァンゲリオン』のキャンペーンや、『けいおん!』などのアニメとのタイアップも、その作品への想いをみなさんが感じていただいて、受け入れてくださったんじゃないかと思います。

――白井さんご自身がアニメなどのキャラクターキャンペーンに関わられるようになったのはいつ頃のことですか?

白井
大阪の松原市の店舗から東京の本社に異動になったとき、「ジブリの仕事がしたい」と希望したのですが、違う部署になってしまいまして、とても残念でした。
その後、2006年に広告販促部に異動になり、アニメなどのキャンペーンに携わるようになり、リラックマのキャンペーンなどを担当しました。

――数々のアニメキャンペーンを成功に導いた白井さんですが、やはりアニメがお好きだったんですか?

白井
はい、ジブリが好きでした。ナウシカの時に、鈴木敏夫さんが編集長だった「アニメージュ」をリアルで読んでましたね。

■「箱根エヴァンゲリオン事件」客が集まりすぎて2日で中止に……

――先ほどお話にありました『エヴァンゲリオン』のキャンペーン(※1)も、白井さんがご担当されたんですね。

(※1)2010年、作品の舞台となる箱根の店舗をまるごと『エヴァ』の世界観で作りかえた「ローソン第3新東京市店」を実施。大きな話題となった。想定を上回る来客があり、トラブル防止のため、やむをえず2日間のみで終了となったが、それによってさらに、アニメキャラクターとのコラボレーションの威力を示すことになった。

白井
はい。当時、『エヴァンゲリオン』の版権管理を担当されている方とお会いする機会がありまして。
版権元様は「何か面白いことがやりたい」と言ってくださったんです。
それまでも、グッズを作って商品のおまけにつけるといったコラボはあったのですが、どういう面白いことができるかと思いまして、それで、新劇場版第1作目のとき、作品の舞台である第3新東京市が位置する箱根の仙石原にあるローソン店舗を『エヴァンゲリオン』一色で埋め尽くす「エヴァンゲリオン店舗」をやったんです。

今となっては聖地巡礼ということになるんでしょうが、そこでトラブルが起こってしまって……。

――来場するお客様があまりにも多すぎて、2日で中止になったという伝説のイベントですね。

白井
はい。地元の方にご迷惑をおかけしてしまって。

――アニメとコラボすることで、これだけ人が来るんだということを多くの人に印象づけた、ひとつのエポックメイキングな出来事とも言えますね。このキャンペーンの実施前の社内の温度感はどういう感じだったんですか? 

白井
当時は社内的には、そこまで盛り上がっている感じではなくて、「何か変なことやってるな」という感じだったのかもしれません。
中止になって、大騒ぎになって、初めて社内で知られるようになった感じでしたね。

――この聖地の店舗をその作品の世界観で作りかえてしまう「コラボ店舗」という手法は、ローソンさんの独壇場ですね。

白井
コラボ店舗というのは、他社さんはあまりされないですが、ローソンでは『エヴァ』で最初にやりまして、その後も恒常的にやるようになりました。

やはり、どうせやるのなら、作品の舞台になった「聖地」でやろうと思っています。

――ファンの方が、アニメをきっかけに、3次元のリアルな店舗を訪れるというのは、まさに「聖地」店舗ですね。

白井
そうですね。その場に行くと、ファンの方同士が会ったりしますので、そういうのも楽しいですよね。
これも私の熱意でやらせていただいたんですが、東京の月島に3店舗、『3月のライオン』のコラボ店舗を作りました。お店に行くと『3月のライオン』のファンだろうなという感じの女性がいっぱいました。

■『ジョジョ』の「OWSON」店舗は看板を変えて怒られました

――『ジョジョの奇妙な冒険』では、コラボ店舗として、作中に登場する「OWSON」を作られました。「LAWSON」の看板を付け替えてしまうわけですが、大変ではなかったですか?

白井
あれは、最初は荒木飛呂彦先生の原画展が仙台であるということで、そのタイミングでやったんですね。やらせて欲しいと版権元さんの集英社さんにお願いしたら、お許しをもらえました。
『LAWSON』のコーポレイトロゴをそのまま変えてしまうと、さすがにコンプライアンス部門が許してくれないので、上からカバーにして「本当の看板はいじりません」という今思うと不思議な説明で、コンプライアンス部門には話を通していたのですが、そのことを知らなかった別の社内の人に怒られたり(苦笑)。


白井
そういうこともあったんですが、荒木先生も実店舗を見に来てくださったそうで嬉しかったです。
パーティでも荒木先生にお会いして、「描いている時は、ローソンさんに怒られると思っていたので、逆にローソンさんがこんなことしてくれるなんて」と喜んでいただきました。

この「OWSON」店舗は、最近も「ジョジョ展」にあわせて六本木でもやりました。現在も大阪での「ジョジョ展」にあわせて大阪の難波千日前店でOWSON店舗を実施中です。

■『BANANA FISH』私がやらねば誰がやる!

――現在、白井さんは管理的な立場になられて、直接コラボキャンペーンの手配をされていないんでしょうか。

白井
今は個々のキャンペーンを担当するような立場ではないので、基本的には後方支援に回っているのですが、2018年7月にアニメ化された『BANANA FISH』だけは、「これだけは私が全部やる!」と久しぶりに自分で担当しました。

吉田秋生先生の原作が本当に大好きで、引っ越しの度に単行本をずっと持って来ているくらいなんです。
だから「他社にタイアップされたら、たまったもんじゃない!」と、版権元のアニプレックスさんや小学館さんにも通いました。

――まさに作品への愛ですね。ちなみに今回の『BANANA FISH』とのコラボの注目ポイントは?

白井
『BANANA FISH』のバナナチョコレートスムージーを発売します! 夏に第1弾をやりましたところ、即時完売してしまったので、TVアニメ最終回に合わせて12月18日から第2弾として販売します。


――そのほかこだわったところは?

白井
『BANANA FISH』のファンの方は、そういうキャンペーンよりは、デザイン性重視にした方がいいんだろうと思って商品を開発しました。

第2弾では、カップのデザインも、「インスタに載せられるカッコよさ」を心がけて、原作ファンも気に入っていただけるように、原作の単行本の表紙の黄色に合わせています。
イラストも、通常の4バージョンに加えて、アッシュと英二のシークレットバージョンがあります。

――こだわり抜いたデザインですね。

白井
『BANANA FISH』は固定ファンも多いですし、アニメのラストが感動的なことは20年前からわかっています。
原作ファンは40代、50代、アニメでは10代、20代の女性が新たにファンになるだろうと思い、年代に乖離があるので、その両方に受けるものをと提案させていただきました。

■コラボを始めた頃と、最近のアニメの違い

――「この作品は行ける」というのは、どのあたりでわかるものでしょうか。

白井
昔は、「この作品は流行りそうだ」という気づきみたいなのがあったら、ライセンサーさんに飛んでお願いしに行くようなこともありました。
たとえば、『魔法少女まどか☆マギカ』は、第3話で一気に盛り上がりましたよね。ネットでも話題になって「これは取りに行こう」と(※2)。

でも、今はアニメの本数も多いですし、1クール(3カ月)ものが多いので、TVで観てから仕掛けても間に合わないんですよね。

(※2)2011年に大ヒットした『魔法少女まどか☆マギカ』。ペットボトル飲料にマスコットのおまけをベタ付けしたところ通常の6倍の売れ行きとなり、対象商品が品切れになる事態に。その後も、映画化などのタイミングでキャンペーンを実施。

――その作品とコラボすると決めてから、実際に店舗でキャンペーンを開始するまでの準備期間はどれくらいですか?

白井
通常、だいたい半年前から詰めていって、3カ月前に会社の決済会議で承認を取るという形ですね。その後、1カ月半くらい前までには、冊子が出来ていて、店舗に届かないといけないんです。

――昔のように放送を見てからでは遅い、ということでしたが、今はコラボする作品をどのように選定されておられるのですか?

白井
今期アニメのランキング予想とか、公式Twitterアカウントのフォロワー数が多いとか、そういうのも参考にすることもあります。

■SNSがあれば、宣伝費は少なくても大丈夫

――ローソンの戦略として、アニメとコラボするのと、同時にSNSを最大限に活用されてきました。ローソンにとっては、SNSとアニメコラボは互いに補いあう車輪の両輪の関係にあると思うんですが……。

白井
そうですね。ローソンの公式アカウントで情報を出すと、熱心なファンのみなさんが拡散してくださるので、広告宣伝費が少なくてすむので、助かっています。

――それは、これまでSNSで構築されてこられたお客様との「つながり」の賜物ですね。今、Twitterのフォロワーは何人くらいですか?

白井
現在、Twitterのフォロワーが385万人で、企業アカウントでは2位。LINEが2505万人、Facebookが63万人、Instagramが28万人ですね(2018年12月現在)。

――「ローソンクルー あきこちゃん」は、どういった狙いで作られたのですか?

白井
「あきこちゃん」は2010年に出来たキャラクターで、もともとTwitterのキャラクターなんです。
最初にローソンが公式Twitterを始めることになったときに、企業ロゴでやるか、キャラクターでやるかというのを、私が社長に提案する必要があったんです。当時キャラクターで成功されている会社もあったので、ローソンもキャラクターでやりたいと提案しました。


――同じ商品を宣伝するのでも、企業ロゴと、キャラクターでは受ける印象が全然違いますね。このあきこちゃんは、別に白井さんご自身がモデルというわけではないんですよね。

白井
そうですね。私が店長をしていた大阪店舗のとあるクルーさんがモデルです。明るくて、お客さんにもとても人気のある女の子でした。

――一時期、「あらゆるSNSにあきこちゃんを出していく」という戦略をされていましたね。現在はいかがでしょうか。

白井
だいぶ、SNSが淘汰されてきた感じはありますね。
一度は手広くさまざまなSNSに公式アカウントを作っていたのですが、今はLINE、Twitter、Facebook、Instagramに集約しています。

――それぞれ、内容は違うんでしょうか。

白井
流している情報にそんなに違いはありません。若干、Instagramには女性に人気のもの、「映える」ものを投稿するようにしています。

――今は、「あきこちゃん」の運用に人工知能なども活用されていますね。マイクロソフトの人工知能で会話ができたり、将棋ができたり。

白井
ローソンのLINEアカウントには約2500万人のお友達がいるんですが、普通の企業アカウントだとプッシュ配信があったら見に来てくれるだけで、それ以外は見に来てくれないんですよね。
それであれば、あきこちゃんと「おしゃべり」できるようになればいいのかなと、マイクロソフトさんの開発した「りんな」というAIを入れたんです。
1日に10万人くらいの人があきこちゃんと雑談しにきてくれたり、将棋を指しに来てくれたりしていますので、幅が広がったので良かったと思っています。

■「作品を深く愛して理解すれば、ファンの方にも伝わる」

――最後に、今後のローソンはアニメとどんなふうに付き合っていくのか、そのヴィジョンを教えてください。

白井
スタジオジブリさんとの関係を築かれた山崎文雄さんの考え方ですが、「作品を深く愛して理解すれば、それがライセンサーさんにも、ファンの方にも伝わるんだ」ということは今後も大事にしていきたいです。

版権主さんから「ローソンは作品を大事にしてくれるから任せたい」と言っていただけるのが嬉しいです。
今振り返ると、やっぱり山崎さんが始まりだったと感じるので、これからも「山崎イズム」をずっと継承していきたいですね。