アニメ産業市場、5年連続最高値で2兆円に到達 「VTuber」など市場定義に課題も


12月5日、2017年のアニメ産業の調査および統計・分析をまとめた報告書「アニメ産業レポート2018」の刊行記念セミナーが、日本動画協会によってジェトロ東京本部(東京都港区)にて開催された。

モデレーターは同書の編集統括および執筆者である増田弘道氏(アニメ産業研究家/ビデオマーケット常勤監査役)が務めた。
パネリストとして同書の執筆者である数土直志氏(ジャーナリスト/日本経済大学大学院エンターテインメントビジネス研究所特任教授)、森祐治氏(電通コンサルティング代表取締役社長シニア・ディレクター/亜細亜大学都市創造学部特任教授)、伊藤直史氏(アサツー・ディ・ケイ コンテンツ本部コンテンツ戦略室長)、陸川和男氏(キャラクター・データバンク代表取締役社長/一キャラクターブランド・ライセンス協会専務理事)、亀山泰夫氏(CiP協議会事務局シニアディレクター/慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科研究員)、原口正宏氏(アニメーション研究家/リスト制作委員会代表)の6名が登壇した。

また、ゲストスピーカーとして猪子敏行氏(ミクシィ エックスフラッグスタジオ デジタルエンターテインメント事業本部IP開発室室長)が登壇した。

冒頭に、昨年発表の調査データに不備があり2016年の広義のアニメ産業(アニメそのものの売上に加え音楽やライブなどの売上も含む)の市場規模は1兆9,954億円と2兆円をわずかに下回っていた旨、増田氏より訂正があった。
そのため市場規模が2兆円を突破したのは、正確には今回の調査範囲である2017年になってからだという。

広義のアニメ産業市場の総額は5年連続で最高額を更新し、2017年は2兆1,527億円で前年比108.0パーセントとなっている。
ジャンルとしてはビデオ、関連商品、音楽、遊興などが微減した他、映画が前年比61.7パーセントと大きく割り込んだ一方、配信が113.0パーセント、ライブ・イベントが116.3パーセントと伸び、海外売上が129.6パーセント躍進している。
国内外の売上推移では国内売上が昨年より減じて1兆1,579億円となる一方で、海外売上は約3割増しの9,9487億円となっており、国内外の売上逆転が見えてきた形だ。

この海外売上の伸びについて、同書にて「海外動向」の項目を担当した森氏は「海外売上は過去3年間で3倍以上になっており、書いている方が驚くレベル」「中国資本やNetflix、Amazon Prime Videoなどのプラットフォーマーの直接出資が増えたことが理由だが、この数字は国内で放送、配信されることを想定した作品に限ったもので、海外資本で作られ国外でのみ公開された作品の売上は計上されていない。また、アニメを原作としたものを含めたスマートフォンゲームの海外配信による売上や海外で開催されるファンイベントでの売上なども計上されていない可能性があるため、実際の数字はもっと上かもしれない」とした。

一方で「日本産業が意図してやっているわけではないという怖さがある。事実、中国コンテンツ株の株価がこの春、夏に下落したが、その背景には中国政府の政策転換がある」と警鐘を鳴らした。

アニメの年間制作本数は2016年の356本からやや減じて340本、制作分数(全作品の合計時間)はほぼ横ばいとなっている。

この理由として伊藤氏は「2つの背景がある。1つは国内の制作キャパシティが上限に達しているということ。アニメーターの取り合いが始まっている。もう1つは新作アニメの出資が慎重になってきているということ。制作費が上がる一方でリクープ方法が不透明になってきている。以前は(DVDなどのビデオグラムが)2万本売れれば回収できたが現在それは難しく、ではどうやって売り上げるのか? という点が厳しく見られている」とする。

一方で、国内のコンテンツ同士で勝負した場合は勝機を見出すのは難しいとしつつ、「日本式コンテンツを海外で作って海外で売るということであればビジネスチャンスが見出しやすい。ADKでは『ベイブレード』の海外展開の成功を基盤にロボットアニメやくまモンの海外展開を行っている」と語り、ここでも海外市場の重要性が話題となった。


アニメ産業の売上の主力であった国内での関連商品(キャラクターグッズ)の売上は2010年の6,274億円を堺に徐々に減少し、2017年では前年比93.0パーセントの5,232億円となっている。

この理由として陸川氏は「この数字にはいわゆるコンシューマーゲームなども含まれているが、スマートフォンゲームなどのデジタルコンテンツが計上されていない」と補足した。キャラクターグッズ市場におけるデジタルコンテンツの割合は年々増えていると考えられるため、額面通りキャラクターグッズ市場が縮小しているわけではないようだ。

一方で陸川氏は「市場の8割を支えているのがキッズ・ファミリー向け作品の関連商品。2歳からYouTubeを見ている、YouTube視聴の2割はTVで見ているという調査結果もあり、子どももTVを見る時間がないのが現状」とも語る。次世代のアニメファンを生み出すキッズ向け作品ジャンルでのヒットが期待されていると言えるだろう。

同書では2013年から「イベント」の項目を設置し、アニソンライブや2.5次元ミュージカル、アニメ関連の展示会、アニメコラボカフェなどの市場規模を調査している。

この項目は5年間で伸長率250パーセント以上という堅調な拡大を見せているが、同項目を執筆した亀山氏は「この調査ではステージやライブでの物販売上は計上されていないため、チケットと同額程度の購買があると考えると、物販を計上すればおそらく額は倍になる」とポテンシャルの高さを示した。
懸念点としては「(ステージは)上演できるホール不足の問題がある。それを契機に海外公演に発展する可能性はあるが、現状でも課題となっている英語などの外国語対応には努力が必要」と述べた。

「映画」の項目は売上410億円、前年比61.7パーセントと大幅減となっている。
この理由について数土氏は「2016年の映画売上664億円のうち1/3程度が『君の名は。』によるものなので、それを差し引けば例年程度と見ることもできるが、決していい数字だったわけでもない。ただし今後『エヴァ』の新作や宮崎監督、細田監督、新海監督らの新作も控えている」「『ドラえもん』や『名探偵コナン』などの劇場作品が海外でも上映されるようになった点には注目したい」と語り、明るい兆しを示唆した。


本書付録の「2017年アニメ全作品 年間パーフェクト・データ」を担当した原口氏は「海外との連携で制作された作品や売上をどう計上するか、という定義が曖昧なままになっている。通常、日本作品の制作下請けを海外スタジオが担当しても『海外合作』とは言わないが、80年代の合作ブームの時など逆に日本のアニメスタジオが下請けをして海外で公開された作品も『合作』と称しており、その風習が今も続いている。どういった制作体制であれば国内にカウントし、どういったものは計上しないべきなのか? という問いへの答えはまだ出ていない」と問題を提起した。

また「VTuberはどう考えるのか? という問題もある。これまではアニメではないものとして調査から除外してきたが、編集の工程を挟むのであればアニメであるとも言える。アニメとアニメ的なものは違うと思うが、これもまだ定義されていない」とも語り、アニメ市場やアニメをどう定義すべきなのか? という問題が改めてあらわになった。

最後に猪子氏がゲストスピーカーとして登壇し、ソーシャルゲーム『モンスターストライク(モンスト)』のYouTubeや劇場での作品展開を例に「グローバルに展開するにはコモンセンスに訴えかけるような作品作りが必要」「ゲームは(ユーザーの反応を見ながら方針を決められる)マーケットイン型、アニメは(クリエイターの作家性を含めて作品として完成させた後で提供する)マーケットアウト型だと考えられるが、その両者のバランスが重要」と語った。

「アニメ産業レポート2018」は2017年アニメ産業総括、TVアニメ / 劇場アニメ / ビデオパッケージなどの各分野解説、海外動向、制作会社立地動向の他、2017年アニメ全作品年間パーフェクト・データが付録。本体価格は10,000円。

AKIBA INFO.×TOKYO ATOM -INFORMATION&SHOP-(秋葉原UDX 2階)や京都国際マンガミュージアム内ショップにて店頭販売されている他、日本動画協会と提携のWebサイトにて通販・ダウンロード販売でも購入可能だ。

一般社団法人日本動画協会
http://aja.gr.jp/