【インタビュー】eStream・高井里菜社長 オンラインくじが切り開く“新しいエンターテインメント”とは

さまざまなエンターテインメントが世の中に生み出される中、ユーザーがコンテンツに触れる形も大きく変わってきています。インターネット動画配信やオンラインクレーンゲームなどテクノロジーを活用したプロダクトが数多く輩出されています。

今回、ゲーム動画配信プラットフォーム「OPENREC.tv」、e-Sports大会「RAGE」の開催などを行うCyberZの子会社でありサイバーエージェントの関連会社である株式会社eStreamの社長に就任した高井里菜氏にインタビューを実施。オンラインくじ「eチャンス!」を通じて世の中のエンターテインメントの楽しみ方をどのように変革してくのか。熱い想いを訊きました。

――本日はよろしくお願いします。まず高井さんの自己紹介をお願いします

高井:高井と申します。2014年にサイバーエージェントに入社して、広告営業を1年経験した後に、広報に異動しまして3年ほど広報として活動をしていました。広告事業をはじめ、「OPENREC.tv」や「RAGE」といったe-Sportsの広報の立ち上げも経験しました。この4月からeStreamの「eチャンス!」事業責任者を担当しており、10月1日付でeStreamの代表になりました。

――eStreamとCyber Zの関係をお伺いできますか

高井:CyberZではゲームに特化した配信プラットフォーム「OPENREC.tv」を運営しておりますが、配信者の活躍の幅を広げようといったところでeStreamという子会社ができました。eStreamでは配信者の「ダイナモン」さんや「よんたの」さん、「Mokson」さんであったり、ゲーム実況・解説で有名な「kuroebi」さんといった方が所属しており、彼らのマネジメント事業を行っています。CyberZの事業とかなりシナジーの高い会社として立ち上がっています。

――CyberZの子会社という形でしょうか

高井:はい。100%子会社です。サイバーエージェントの関連会社になります。

――配信者の方のマネジメント事業がメインとのことですが、このタイミングで新しい事業をやることになったきっかけを教えてください

高井:もともとは「楽しむを超えていこう」というビジョンで、配信などでマネタイズをする人たちの支援を行っていたのですが、オリジナルグッズやOEMでグッズ販売をさせていただいたところ、ユーザーさんに「ニーズがある」いうところがありました。そこで、より注力できる分野がないかということで、マーケット的に「オンラインくじ」が盛り上がってきているということもあり、2018年6月からオンラインくじ「eチャンス!」サービスを開始しました。

――現在までは何個ぐらいのくじをされているのでしょうか。

高井:6月から初めて現在は20個です。月5個以上のペースでやっています。

――反応はどうですか?

高井:ユーザーさんの反応はポジティブなところがかなり多くて、今までのグッズ事業であれば在庫リスクが高く「決まった売れるIP」に頼ってリスクが取れなかったりとか、逆に「在庫リスクがあり店舗側が数を準備できず、売り切れになって機会損失をしてしまう」こともありました。その点、オンラインくじでは受注生産になるのでリスクなくどんなIPでも挑戦ができます。


例えば、OPENRECの配信者の方で実施した際、1mぐらいのぬいぐるみをA賞に設定したのですが、これを店舗でやろうとすると置く場所も限られており、ロットもわからないので価格設定も難しかったりします。ですがオンラインくじの場合「ファンが本当に欲しいものが作れる」ので、大きいぬいぐるみなども手に入るという喜びの声もありました。

地方の方であればなかなか東京に行かないと手に入らないものも入手しやすいというメリットもあります。売れるかどうかもわからないIPの卵に対しても積極的に実施できるのもメリットです。

――くじを実施するにあたり、選定の方向性はあるのでしょうか

高井:今1番大切にしているのは「旬かどうか」ですね。その中に2つあって、1つが「ユーザーの反応が良い」こと。もう1つが「熱狂的なファンがいるかどうか」という点を大切にしています。

旬かどうかというのはTwitterで拡散されたり、「自慢したい」「共有したくなる」というIPは強いです。放送中のアニメや今話題のVTuberはまさにその時期がホットなので、今までなかったグッズが手に入るということで拡散してくださいます。熱狂的なファンという点では、一度ではなく何度かくじを引くモチベーションがある方やコレクションを増やしていきたい方にくじが向いていると思っていて、商品が蔓延してしまっているものは合わないと思います。

――こういうものって時間がかかるイメージがありますが、その点は解消できるのでしょうか

高井:スピード感については、版権獲得からローンチまで最短2週間で実施ができます。理由が受注生産の形をとっていることと、直接お客様のもとへ配送するので、流通の手間が省けるという2点がかなり大きいです。

――例えばIPホルダー側がやりたいです!と言ったら2週間後に開始できるということですか?

高井:はい、できます。スピードはかなり早いと思います。コンビニなどにある一般的なくじですと、販売開始数ヶ月前に打ち合わせがあって、3ヶ月前に受注生産を取って、そこから流通させて置くので、一般流通から比べるとすごく速いスピードです。

――今までやった中で、すごい良かったものとかはありますか

高井:1つは最初に開催したOPENRECの配信者のくじですね。これは普通のECで販売した時よりも売上が3倍でした。たいじさんという方は配信者として認知度も高い方でして、ただ、グッズのIPとしてヒットするかどうかは当時は分からず、ECで行なっていたときは単価の安いアクリルキーホルダーやマグカップから実施していました。

今回、オンラインくじを実施するにあたり、1等を大きなぬいぐるみにしたところ、「そういうグッズが欲しかった!」というお客様からの反響が大きくて。またタイミングが世界のゲーム大会の出場記念と世界1位を取って戻ってこられたので、欲しいタイミングに欲しいグッズがあったということが成功につながったのかなと思っています。

――他にはどんな商品があったのでしょうか。

高井:スマホリング、アクリルキーホルダー、ステッカー、ノートです。

――そのあたりのフォーマットは決まっているのでしょうか

高井:各賞3~5、C賞からE賞ぐらいまでを作って、確率を決めてやるというような形ですね。

――もう1つ反応がよかったものは何だったのでしょうか

高井:今をときめくバーチャルライバーグループ(にじさんじプロジェクト)のものです。A賞に18体いるライバーから選べる等身大パネルが当たる賞品設計をしました。普通だったら製造リスクが高くて買えないようなものでした。あとは、ダブルチャンスで好きなライバーに名前を呼んでもらえる賞をつくりました。そういった体験みたいなものもECに入れることができるのがくじのメリットですね。ダブルチャンス賞という形にしたことも、ユーザーから喜ばれました。

――今仕込んでいるもので注目なコンテンツは


高井:人気声優さんと一緒にスクリーンでアニメを見る体験を賞にいれることも考えています。最終話を一緒に見るという形をとろうと考えているので、アニメタイトルを1話から見る理由にもなりますね。好きな声優さんと一緒に上映を見ることができるという体験を買うことはなかなかできないので、当てる楽しさも感じてもらえるかなと考えています。

――BtoCビジネスになってくると思うんですが、その辺は抵抗なかったのでしょうか。広告代理事業やマネジメント事業はBtoBtoCになりますが

高井:そのあたりは弊社が提供しているゲーム動画配信プラットフォーム「OPENREC.tv」で培いました。社内に知見のある者が多く居たということも事業を立ち上げる上で抵抗を生まずに出来た要因です。直近だと芸能事務所の配信もかなり増えていて、新しいマネタイズの支援を「OPENREC.tv」でもさせていただいていたので、グッズの新しいマーチャンダイズの形としてくじもご提案するなどかなりシナジーがある事業だなと思っています。

――今ある課題や、こういうことをやっていきたいというものはありますか?

高井:やっていきたいことはたくさんありまして、実は今、グッズが特に伸びている市場は海外なんです。海外のコンテンツ消費は200%伸びているので海外をどうやって展開していくかというところは注力したいです。また単なる購入ではなくて、PR目的としてのくじというところも注力していきたいですね。

――PR目的のくじというのは具体的には何でしょうか


高井:オンラインくじを実施した際、ユーザーさんによる当選ツイートも自然発生的にTwitterに投稿されることが多く、いくつかのくじではTwitterのトレンド入りを果たしたりもしています。グッズを通して話題を生むというところに貢献できるかなと考えているので、どのようにしてPRに繋げていくかを考えています。

――きっとお値段は高いんですよね…。実施する際の費用感など教えていただけますか

高井:基本的には、コンテンツをお預かりして代行でやらせていただくので、ライセンス料をお渡しすることもあります。PRとしての実施であれば、特賞などの制作費用をもっていただく形になります。

――それで収益化できるのでしょうか

高井:できます。事業のベースはマーチャンダイジング事業と同じなので、くじを通してグッズを買ってもらうというような形になるので、グッズ収益の中に利益を持たせていただいて、利益を出している形ですね。

――利用者数はどれぐらいでしょうか

高井:1万名弱程度の方にご利用いただいています。

――弊社にインサイドちゃんというVTuberがいるんですが、「インサイドちゃんくじ」みたいなものもできるのでしょうか


高井:はい、できます。リスクなくやれるというところがあるので。ラインナップは小ロットからになってしまう可能性がありますが、基本的に受注生産なので、どんなIPであってもご相談に乗らせていただきます。コアファンに向けた賞品もできますので。ダブルチャンスでインサイドちゃんとデート動画とかもいいかもしれないですね。

――なるほど、それいいですね(笑)


高井:本当にアリだと思います。ぜひうちのシステムを使っていただきたいです。くじ引き動画とかも盛り上がるので。

――ちょっと会社に持ち帰ります!ところで、他にアピールしたいところとかはありますか?

高:「eチャンス!」のビジョンとして、「ファンのwantを最大化させる」というのがあります。ファンは「”Fan”(ファン)」「”Fun”(楽しむ)」をかけているんですが、くじのサービス自体にもエンターテイメント性を持たせたいと思っています。

とにかく今は挑戦のフェーズだと思っているので、ユーザーさんからも版権元さんからもお気軽にご連絡いただければいいなと思っています。

――最後に今後の意気込みをお願いします

高井:サイバーエージェントがグッズ事業をやるというのが新しい挑戦だと思っています。

ただ、これは延長線上だという風にも思っていまして、「OPENREC.tv」でメディアができて、eStreamというマネジメント事業があって、色々な面でコンテンツを盛り上げていきたいと思っています。

――ありがとうございました


日本のエンターテインメントの新しいカタチをグループ全体で創出し続けるサイバーエージェントグループ。「eチャンス!」を軸に新しいコンテンツビジネスの形を作ることができるのか。今後のeStreamに注目です。

《森元行》

[GameBusiness.jpより転載記事]