絵コンテ術を伝授 小松田大全×伊藤智彦【あにつく2017】

「映像制作の設計図」と呼ばれるほど、アニメ制作において重要なポジションを占める「絵コンテ」。2017年9月10日(日)に東京・UDX GALLERY NEXT/UDX GALLERYにて開催された、アニメ制作技術に関する総合イベント「あにつく2017」では、「絵コンテを思いつく方法、描く方法」と題し、絵コンテ制作法をめぐるセミナーが行われた。

登壇者は、『ブブキ・ブランキ』監督や『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』副監督を務めた小松田大全監督と、『ソードアート・オンライン』や『僕だけがいない街』の伊藤智彦監督。人気作を手がける注目監督ふたりによる絵コンテのメソッドがたっぷりと開陳された。

小松田監督は、絵コンテを「登山計画書」に例える。もし1本のアニメ制作が山であるとするならば、山の麓から頂上まで、どういう道筋とペースで進み、どう降りるか、これから山に登りはじめるスタッフ一同に対する指針となるのが絵コンテであるという。

伊藤監督は、往年の名作から絵コンテの方法論を解析・研究し、メソッド化する必要性を訴えた。シナリオであればハリウッド脚本術のような形でいくつかその手法がまとめられている。第一幕から第二幕へと切り替わる「ファースト・ターニングポイント」や、全体のおよそ半分の箇所で起こる「ミッドポイント」などハリウッドで実践されている強い(理解しやすい)映画としての骨格、観客の関心を長続きさせるメソッドを絵コンテに起こす際に再度意識する必要があるという。

そんななかで、ふたりの絵コンテ術に共通していたのが「ミニコンテ」だ。ふたりとも細田守監督からの影響だというのだが、本番の絵コンテを描く前に、全体の流れを一望できるように、一枚の紙に小さなコマで絵コンテのたたき台を書くのだという。そうすることで、同じアングルがつづいてしまっていないか、リズムが単調になっていないか、を確認できるからだ。
伊藤監督は絵コンテを構想する際に「字コンテ」も作るのも有効だと言う。絵を加えずにト書きだけで、このシーンに必要なアクションは何なのかをまとめていくというのだが、絵を優先で発想する演出家が多いだろうアニメ業界においては、非常にユニークなアプローチと言える。
小松田監督は、絵コンテは孤独な作業のため、主観に陥りやすい。じぶんの考える『面白い』が観客に対して伝わるかを検証するためにも、前述のメソッドの利用や、既にある映画のシナリオや絵コンテを、定量的・定質的に分析することは客観視を取り入れるのに大いに役に立つと言う。そして絵コンテを描くためのデジタル・ツールとしてふたりが用いているのが「Storyboard Pro」だ。日本では新海誠監督が用いていることで知られているが、アメリカの映像業界ではすでに一般的で、日本においても事実上スタンダードなソフトウエアになっている。
いままで、紙の束であった絵コンテが、動画として動き、音声なども同時に貼りこめられ、簡易な映画として確認できるのは演出家にとって力強いツールだと言う。

最後には、絵コンテを描くうえで参考になる書籍や資料も数多く紹介され、業界関係者から演出家志望者まで、幅広い層にとって実りの多いセミナーとなった。
[深井孔]

あにつく 2017
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