新成長戦略にクールジャパン コンテンツ産業成長目指す

 6月18日、菅総理大臣は、日本の国家戦略を示す「新成長戦略 ~「元気な日本」復活のシナリオ~」を発表した。新成長戦略は、90年代初頭のバブル崩壊からおよそ20年もの間、日本経済が低迷を続けた結果、国民が自信を失い、将来に不安を感じているとし、強い日本を復活させるとの意思を表明するものだ。
 こうした日本経済の強化策のひとつとして、日本のポップカルチャーも核となった文化の国際競争力強化が掲げられた。具体的にはファッション、コンテンツ、デザイン、食、伝統・文化・観光、音楽などをクールジャパンと位置づけて、経済成長に結びつける。

 新成長戦略の公表は、2009年12月に鳩山前首相より発表された「新成長戦略(基本方針)~輝きのある日本へ~」からおよそ半年ぶりに示されものだ。前政権の方針を受け継ぎつつ、新たな内容を多数盛り込んだ。前回の基本方針がおよそ30ページにまとめられていたのに対して、今回は50ページを越えており、ここからも新成長戦略重視が窺える。
 また、前回は戦略分野を6つとしたのに対して、今回はこれに金融分野を加えて7つの戦略分野とした。さらに、具体的に21の国家戦略プロジェクトを挙げた。この国家戦略プロジェクトのひとつが、「知的財産・標準化戦略とクール・ジャパンの海外展開」である。

 プロジェクトの核は、コンテンツ・クリエイティブの持つソフトの力を製品・サービスとして国際展開することである。戦略分野として国際競争力をつけることで、特にアジア地域でコンテンツ収入1兆円を実現するとの目標を掲げる。
 具体的な施策として、海外での番組枠買取りやデジタル配信強化、海外のコンテンツ流通規制の緩和・撤廃、海賊版防止、番組権利処理の迅速化、海外ビジネス展開支援、人材育成強化、海外クリエイター誘致と在留資格要件の緩和などが挙げられている。いずれの施策も年初より知的財産戦略本部で行われた議論を反映させたものだ。

 クールジャパンという語句は、1990年代後半に英国・労働党が掲げた「クールブリタニカ」を彷彿させる。「クールブリタニカ」は政治や経済力だけでなく、文化の力を重視し、それを経済の活性につなげ大きな成功を収めたとされる。クールジャパンも、現在国際的に評価の高い日本の文化をビジネスにつなげる視点が見られる。
 しかし、一方で、海外で評価の高い日本文化・コンテンツという現象にあまりにも依存すると、今回の施策も絵に描いた餅になりかねない。クールジャパンと呼ばれる代表的な文化であるアニメ、マンガ、ゲーム産業に限れば、むしろグローバル経済の中でここ数年後退を続けている。新成長戦略が掲げる流通の未整備や海賊版問題も勿論理由だが、各国で日本コンテンツに対抗するコンテンツが次々に現れて存在感を増しているからだ。
 90年代以降、日本の金融、製造、IT、家電などの産業でおこった現象が、クールジャパンでも再び繰り返しかねない。90年代から2000年代に日本人が失った自信をクールジャパンで取り返すとの主張は華々しい響きがある。一方で、この分野で再びその自信を失いかねない両刃の剣となっている。

 そうした状況を繰り返さないためにも、国には目に見える結果の伴った施策が求められる。自由な気風を重んじる日本のコンテツ産業には、国の関与を嫌う風潮があるのも事実だ。
 しかし、大局的な産業の方向性を示すこと、産業の基盤やルールづくり、そして国家間の交渉など国だけにしか出来ない役割もまた多い。コンテンツ産業の国際競争力強化のために、国の働きに期待する声もまた少なくないのだ。

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