米国子供チャンネル第4極になるか?ハズブロのThe Hub

 米国のニ大玩具会社のひとつハズブロが、放送事業に大きく踏み出す。同社は今年秋からディスカバリー・コミュニケーションズとの共同事業として子供向け番組の専門放送局「The Hub」をスタートする。現在のディスカバリー・キッズを引き継ぐ新チャンネルは、およそ6000万世帯の視聴可能世帯を持つ。
 ハズブロの持つキャラクターとディズカバリー・コミュニケションズのネットワークが繋がることで、子供向けの有力ケーブル放送局が突然出現することになる。視聴者ターゲットは6歳から12歳の子供とその家族、ハズブロが玩具市場で最も得意とする層だ。

 気になる番組内容はアニメーションと実写の双方としている。『トランスフォーマー』や『GIジョー』といった同社の有力キャラクターの作品が登場するとみられる。さらにハズブロは、新たに番組製作と調達を行うハズブロ・スタジオを設立した。
 こうしたハズブロの動きは、現在のケーブル放送業界、その中の子供向けチャンネルに大きな影響を及ぼすことになりそうだ。2000年代に入り急速に固まった子供専門チャンネルのニコロデオン、ディズニー・チャンネル、カートゥーンネットワークの3強体制を切り崩す可能性があるからだ。

 実際にハズブロはThe Hubで、この3強の一角に加わることを目指している。1月14日付けのロサンゼルスタイムズの記事では、The Hubは現在の米国で子供向け番組専門チャンネルを運営するニコロデオン、ディズニー・チャンネル、カートゥーンネットワークのライバルになると指摘する。ハズブロとディカバリーの目指すのが、4極目の子供チャンネルというのは米国メディアの一般的な見方でもある。
 特に影響が強いのが、The Hubと視聴者層がほぼ正面からぶつかる、ディズニーXDとカートゥーンネットワークだろう。そして、この結果、今後男児向けのテレビ番組が不足気味になる可能性が高い。ハズブロ・スタジオを通じた番組調達をするにしても、同局の過去番組のストックは少なく、他社以上に製作予算がかけられるわけでないからだ。
 そうなると日本アニメが、ここに入り込む余地もあるかもしれない。特に日本アニメのテレビ放映権は、新たに番組を製作することを考えれば非常に安価だから、新興の放送局にとっては魅力的なコンテンツのはずだ。

 2000年代の米国の子供番組3極体制は、一方で地上波チャンネルにおける子供番組の急速な地位低下があり、子供視聴者の多くがケーブルチャンネルに移ったことにより始った。
 それは同時にハリウッドメジャーによる子供専門チャンネルの寡占状態でもある。それぞれの局は、自社グループ製作のアニメーション、実写番組を視聴率のよい時間帯に集中的に配置するようになったからだ。カートゥーンネットワークなどで日本アニメの放映枠が急激に減少した理由のひとつでもある。今後、こうした状況が変わる可能性がある。

 そうでなくても、米国のテレビ業界では子供向け番組とチャンネルが転換点を迎えている。実際にはThe Hubが設立する前から男児向けの有力番組は不足気味になっている。ひとつは2009年にトゥーンディズニーが、ディズニーXDにリニューアルしたことに理由がある。同局はトウィーンズ(10歳前後)の男児にフォーカスしたことで、従来以上に男児向け番組を放映するようになった。
 しかし、有力タイトルの十分な供給はなく、それはやがて2009年末の『スパイダーマン』などで知られるマーベル・エンタテインメントの買収の大きな動機となった。同時に、2009年秋からカートゥーンネットワークの有力タイトルであった『NARUTO』シリーズが、ディズニーXDに移籍したことにもこうした背景があると見られる。

 こうしたディズニーの行動は、玉突き現象を誘発している。マーベルはこれまでハリウッドメジャーには、等距離でキャラクターを提供してきた。同社のキャラクターを基にしたテレビアニメーションシリーズもディズニー、ニコロデオン、カートゥーンネットワーク全てで放映されている。国外である日本では、ソニー・ピクチャーズ系のアニマックスにもキャラクターを提供する。
 しかし、中長期的には有力タイトルは、ディズニー系の放送局に優先的に割り振られる可能性が高いだろう。それを、念頭にニコロデオンが『忍者タートルズ』の権利を買収し、独自のテレビ番組を製作すると発表した。これにより今度は地上波テレビThe CWから『忍者タートルズ』が消える予定だ。まさに男児向けの番組は取り合い状態だ。

 日本のアニメは現在、米国のメジャーな放送局で放映されるのは極めて難しいとされる。しかし、そんな状態も、そしてニコロデオン、ディズニー・チャンネル、カートゥーンネットワークの3強体制も、実際には10年も続いていないシステムだ。
 強固な様に見えるシステムも、変わるとなるとあっという間に次のステージに移ってしまう。The Hubの影響がどの程度かは現在では予測がつかない。しかし、異なったステージに移った時に、その変化のチャンスを活かせる準備が企業に求められているに違いない。

ハズブロ http://www.hasbro.com/