激変するアニメ業界で求められるプロデューサーとは? 「NUNOANI塾」塾長・布川郁司氏(ぴえろ最高顧問)インタビュー

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『魔法の天使クリィミーマミ』や『BLEACH』、『NARUTO』、『おそ松さん』など数々のヒットアニメを生み出してきたスタジオぴえろ。その創設者である布川郁司の私塾・NUNOANI塾は、「アニメ」をはじめとした映像業界の次世代を担うプロデューサーや演出家の人材育成を目的に設立された。講師には布川氏本人をはじめ、ストーリーコンサルタントの岡田勲氏、アニメ監督・演出の阿部記之氏や水野和則氏、若林厚史氏、亀垣一氏といった現在も第一線で活躍する豪華クリエイター陣が名を連ねる。
この度、5年目を迎えるNUNOANI塾が新たに2017年度塾生を募集する。現在ぴえろで最高顧問を務める布川氏が現在のアニメ業界に対しどのような印象を持っているのか、また今後はどうなっていくのか。そういった観点を皮切りに、NUNOANI塾では実際にどういったことを学べるのか。講義カリキュラムだけでは見えない、”想い”を中心に話を訊いた。
[取材・構成:細川洋平]

NUNOANI塾 公式サイト
http://nunoani-project.jp
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■ アニメプロデューサーに求められる資質
――現在、アニメ業界は放送形態が変わりつつあります。テレビ放送中心だったものが、深夜アニメとなり、今ではインターネット配信なども盛んに行われるようになっています。今後はさらにどのような展開になっていくとお考えでしょうか。

布川
メディアは多様化しておりますから、アニメーションはテレビに限らずチャンスがより増えていくのではないでしょうか。昔はスポンサーが付かなければ制作すらできなかった。それが製作委員会方式を採用したことで、アニメーションはより自由な発想でものを作れるようになったわけです。もちろん製作委員会は良い面ばかりではありませんが、製作委員会方式以前は「スポンサーが集まらなくて番組が作れない」「ギリギリまで決まらなくて制作期間が一ヶ月しかない」「この商品を出してくれ」という要求に応えなくてはいけないということがありましたから。視聴率に限らず、ヒットするケースが出てきたというのは最近の新しい傾向ですよね。
スタジオぴえろで過去にゴールデンタイムで放送していた『おそ松くん』は25~26%の視聴率でした。でもマーチャンダイズでは『おそ松さん』ほど売れてなかったんです。『おそ松さん』の視聴率は2~3%ですからね。その中で今までではありえなかったくらいの経済効果を発揮しています。これからもそういうことはどんどん起きるんじゃないかと思っています。


――『おそ松さん』のようなヒット作を生み出すためには、どのようなことが重要となるのでしょうか。

布川
大きなムーブメントを巻き起こすのはプロダクションといった「組織」よりも、クリエイターやプロデューサーなど「個々の才能」によるところが大きいと思います。今年で言うとコミックス・ウェーブ・フィルムさんが新海誠さんと作った『君の名は。』が業界に与えたインパクトは大きい。決して規模の大きなプロダクションではないにも関わらず、ものすごい結果を生み出した。映像業界でキーになる存在はますます個人化されていくのだろうと予感しています。

――プロデュースと作品が合致したから大きなヒットに繋がった。

布川
そうでしょうね。人の問題だと思うんです。これは実感ですが、企画そのものというのは思い通りになることはまずない(笑)。でも人と人が繋がれば、新しいものを巻き起こすんです。

――布川塾長が考える、理想的なプロデューサーとはどんな存在でしょうか。

布川
いま現場で作品作りに奔走している制作プロデューサーでは優秀な方が増えていると思いますが、僕が言っているのは一つの企画をクリエイターから座組みしていく、営業的なプロデューサーです。何も形のないところから作品をプレゼンテーションしていく。さらに言うと、作品実現のために理想のスタッフを具体的に想定できる人。昔はスポンサーをどう口説くのかが重要でしたが、今は作品の魅力を伝えられる人。それがすごく大事なことだと思います。実を言うと、プロデューサー自身に「これは売れる・売れない」という判断能力はそれほど重要ではない。それよりも、作品の核となるものを相手に伝えたり、「このスタッフに参加してほしい!」といった想いが大切です。

■ 「NUNOANI塾」では肌感覚でノウハウを学べる
――布川塾長はアニメーターとして業界に入られて、演出を経験されてからプロデューサーになられています。制作現場を体感しているというのは大きいと思いますが、誰もがそういった筋道でプロデューサーになれるわけではありません。

布川
そうですね。実際僕はそういうキャリアを持っているからアニメ制作についての自信はあります。逆に「知らない」というのは弱みになってしまう。だから今やっているNUNOANI塾は知識のコツを教えています。演出を仕事で経験しなくても、演出のノウハウを知る。アニメや映画をただ見るだけではなく、アクションの繋ぎ方に注目する、音楽の入れ方を意識する。素人ではないプロフェッショナルとしての見方をするべきなんですよね。

――NUNOANI塾では一年間と通してそういったことを学べる。

布川
教えの方針として「プロデュース」、「演出」、「ストーリー」の3つを基本にしています。はじめに僕がプロデュース講義を行い、演出は実際に現場を担っている方に代わる代わる担当していただいています。演出というのは、スタイルは十人十色なので誰か一人に絞らない方がいいんですよね。アクション好き、感情表現好き、いろんなタイプの演出家さんがいますからそういった中から自分の芯になるような人を自分で見つけてほしい、そういう思いで複数名にお願いしています。
ストーリーに関しては岡田勲さんに一人で担当してもらっています。彼はアニメ界の人ではないのですが、ストーリーの組み立て方を独特の手順で教える方です。

最初の1年間では「何かを見つけてもらいたい」というのが希望です。例えば「演出になりたい! この人にもっと学びたい!」という気持ちが強くなる。そうしたらもう1年間学んでほしいんです。そのために2年目は無料にしているんですよ。カリキュラムには実習も含まれていて、たとえば一つのシナリオを使って、実写の撮影をするんです。同じシナリオでも演出が違えばやっぱり違う作品ができるんですよ。今後はより実践的なこともやっていきたいと思っています。当然こちらの持ち出しの方が多いですが、自分の理想とするアニメーションの教育現場を実現したいという思いで続けています。2017年度で5年目を迎えますが、プロになった人もいれば、ならなかった人もいる。どちらを選ぶにしても、こちらは全てを伝えるつもりで取り組んでいます。


――絵コンテ講座などもありますね。

布川
30分ものを一本描いてきた塾生もいました。一本描くというのは大事なんです。作品の良し悪しよりも描き切ることが重要です。そして講師には「教えるという気持ちをもたないでくれ」と伝えています。仕事仲間として現場でやっている方法で伝えてもらう、それをやってもらっています。

――現場の感覚を肌で感じられる場所。塾生にはかなりの熱意が必要ではないでしょうか。

布川
そうですね。こちらが教えるのではなく、生徒たちが「教えてもらいたい!」という意欲を持って参加してもらいたいですね。「食いつけ!」というぐらいの気持ちで。アニメーションの世界はみんな憧れで入ってくるんです。だけど実際に入ると全然違った視点を必要とされる。そこが我慢できるかできないかです。もの作りは何にしても面倒で大変なもの。そのぶん、作り上げたときの達成感は格別です。そこをちゃんと味わわせてあげたいですね。

――塾生は学生以外の方が中心とうかがっています。

布川
学費に加えて塾の費用もかかるとなると負担が大きいし、業界用語もバンバン飛び交うのできっとちんぷんかんぷんだろうと。一方、社会人は仕事が忙しくて来られないこともあると思いますが、ウチは全講義録画していますから、映像で受講することもできるし、見返すこともできる。そこはフォローしていますので安心してもらいたいです。

アニメーションの制作工程は年々合理化されています。けれども専門学校や大学といった教育機関では現場的な感覚でものを教えるまでは行ってないですよね。教える方も夢心地で教えている気がします。専門学校はとくに、全国からアニメーションに興味を持っている人たちが集まりますから、学校生活自体が楽しい。2年間なんてあっという間に過ぎてしまいます。映像は特に総合芸術ですから、絵が描けるだけでも、映画に詳しいだけでもダメなんです。いろいろなことを学んで行かないといけないし現場の感覚を持っていないとダメだと思うんです。本来はもっと時間がかかるものでしょう。

また、今までアニメ映画といえばスタジオジブリでした。宮﨑(駿)さんみたいな人は出てこないだろうとみんな思っていた。そこに『君の名は。』のようなものが出てきて、いろんな記録を破ってしまった。アニメーション作品に関わるかぎり、みんなにそういった可能性があるわけだから、どんどん挑戦してほしいと願うばかりです。そのきっかけにNUNOANI塾がなれたらいいなとも思っています。


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