マンガはなぜ赦されたのか –フランスにおける日本のマンガ- 第2回「フランスにおける日本のマンガ市場」

第2章 フランスにおける日本のマンガ市場

■ 豊永真美
[昭和女子大現代ビジネス研究所研究員]

2014年のフランスのマンガ市場は前年比1%減の8600万ユーロ。フランス語のマンガであるバンド・デシネの売上が前年比4%減の2億8400万ユーロ、アメリカン・コミックスが18%増の3800万ユーロとなっている(*6)。仮に1ユーロ130円とおくと112億円程度である。数量ベースでみると、2014年は前年比2.1%減の1150万冊となっている(*7)。ピークの2009年は1510万部で、毎年漸減している状態だ。ピーク時から400万部ほど減少していることになる。

それでも、小売市場ベースで112億円というのは、日本市場と比較すると小さいものだが、フランスのバンド・デシネ市場の3割程度の規模であり、フランス国内の中で無視される大きさではない。このフランスからみると決して小さくないが、日本からみると小さいという事実は重要で、日本企業が参入し、大成功したとしても大きな売上を得ることは難しいということは最初に認識する必要があろう。

2014年のフランスのマンガ市場を出版社別にみると以下のとおりである。

フランスのマンガ市場における出版社シェア
000
出所) Journal du Japon

上位3社は2013年と変わらない。1位は「One Piece」を出版するグレナである。グレナはフランスで最初にマンガを出版した企業であり、「ドラゴン・ボール」のヒットでマンガ市場を拡大させた立役者でもある。00年代半ばは「One Piece」がなかなかヒットせず、「Naruto」をヒットさせたKanaの後塵を拝していたが、現在はまたマンガ市場を支える立役者だ。
2位は2013年にKanaを抜いたPikaとなっている。アシェットの子会社であるPika
は講談社の人気タイトルを多く出版している。フランスでは「Fairy Tail」がロングヒットとなっており、それに加え2013年には「進撃の巨人」がヒット、2014年には「七つの大罪」が出版され、勢いを増している。
3位のKanaは「NARUTO」にかつての勢いがなくなっていること、「Death Note」などかつてのヒット作も終了していることからシェアを落としている。最近のビックタイトルとして「暗殺教室」の翻訳権を得ているが、巻き返しはなるだろうか?出版社のメディア・パルティシパシオンが、マンガにどれだけ注力していくかにもよるだろう。
4位に浮上しているのがKi-oonである。日本で大ヒットしたタイトルをもっていないKi-oonは、フランスではあまりヒットしないといわれていた青年マンガを中心に1冊1万部から2万部売る「ミドルセラー」を狙っている。Ki-oonはフランスのマンガ市場が全体として縮小するなか、過去5年間で年間販売部数を50万部から100万部(Ki-oonの社長のアメッド・アニュのインタビューによると、2014年の販売部数は980567部となっている )まで増やしており、卓越したマーケティング戦略が光っている。

フランス第2位の出版社であるEditisのマンガレーベルのKurokawaはKi-oonの後塵を拝することとなった。Kurokawaは「鋼の錬金術師」のヒットがあったが、完結後、大きなヒット作はない。「聖☆おにいさん」はヒットしたが、最近は失速しており、そのこともシェアの縮小に影響している。
一方、小学館と集英社が出資するVIZの子会社のKAZEはタイトルを多く有しているにも関わらず、シェアを伸ばすことができていない。

このシェアをみると、フランスのマンガ市場がフランスの出版社にけん引されており、日本企業であるKAZEが参入してもその構図は変わっていない。これはフランスの出版社のほうが、当たり前ではあるがフランスの市場により根付いており、フランスの市場をよく知る彼らが中心となったので、マンガ市場がきちんと形成されていったのだ。以下、フランスの出版社の状況を書いていく。

*6  France3 region “Après les mangas, les comics américains super-héros à Angoulême” (2015/01/31) http://france3-regions.francetvinfo.fr/poitou-charentes/2015/01/31/apres-les-mangas-les-comics-americains-super-heros-angouleme-645035.html 2015/03/07閲覧
*7 Le Journal du Japon «Ventes : vers de nouveaux cycles ? » http://www.journaldujapon.com/2015/03/19/ventes-vers-de-nouveaux-cycles/(2015/0319) 2015/03/19 閲覧
*8 Journal du Japon « Éditeurs : cinq années de mutation… » (2015/03/19) http://www.journaldujapon.com/2015/03/19/editeurs-cinq-annees-de-mutation/