ソフトバンク、「GODZILLA」「パシフィック・リム」の米国レジェンダリー出資の狙いとは?

ソフトバンクは10月3日、米国の有力映画製作会社レジェンダリー・エンターテインメント(Legendary Entertainment)に2億5000万ドル(約270億円)を出資することで同社と正式合意をした。
2014年10月中にソフトバンクは出資を完了し、SoftBank Internet and Media, Inc.のCEOであるニケシュ・アローラ氏をレジェンダリーに取締役として送り込む。また今後は、合弁会社の設立も視野に入れる。

ソフトバンクは今回の出資で発行済株式の何%を取得したか明らかにしていない。しかし、過去のレジェンダリーの株式取引の金額実績から、ソフトバンクは少数株主にとどまっているとみられる。
レジェンダリーの経営権を握るのでなく、出資することでより緊密な事業提携を結ぶことが狙いだろう。実際に両社は事業提携として、ソフトバンクの持つインターネット・モバイルプラットフォームを活用することでレジェンダリーの作品の海外展開を広げると発表している。特に中国市場とインド市場の成長性に着目し、両市場の拡大を目指すとしている。ソフトバンクにとっては世界市場で通用するコンテンツの確保、レジェンダリーにとってはモバイルを通じたアジア市場参入のパートナーとなる。

レジェンダリーは、2000年に映画プロデューサーのトーマス・タルによって設立された。2005年に映画製作の大手ワーナー・ブラザースと共同製作をスタートし、急成長した。「ダークナイト」3部作、『300 〈スリーハンドレッド〉』、『マン・オブ・スティール』、『パシフィック・リム』、『GODZILLA ゴジラ』などの世界的なメガヒットを次々に世に送り出している。世界で最もクリエイティブな映画会社のひとつだ。
ヒット作で強みがある一方で、配給や流通が弱いのが欠点となっている。製作体制を巡る対立で2013年には、ワーナー・ブラザースとの共同製作と同社による世界配給契約を終了した。2014年下期からは新たにNBCユニバーサルが配給をする。
しかし、ビジネスの要である映画配給を大手映画会社に握られている状況は変わらない。これはソフトバンクが別に買収交渉を進めているとされるドリームワークス・アニメーションも抱えるハリウッドメジャー系以外の映画製作会社の共通の課題である。

そこでレジェンダリーは、近年は、映画製作以外のビジネスの開発に積極的に投資している。テレビ番組やコミック出版、さらにデジタル配信やアジア市場の進出である。ハリウッドメジャーの意向に左右されないビジネス領域になる。
モバイルやインターネットでのコンテンツ配信はそのひとつで、ここにレジェンダリーがソフトバンクと事業提携をする意味がある。

一方で、ソフトバンクにとっては、今後、日本や米国、さらにアジア市場での通信、プラットフォームビジネスを拡大するのにユーザーを惹きつけるキラーコンテンツの存在は重要だ。特に世界市場を考えるのであれば、日本のコンテンツでなくよりグローバルなコンテンツが求められる。レジェンダリーの作品はこれにあたる。
国内にはソフトバンクのレジェンダリーへの出資で、日本企業のハリウッド進出の足掛かりとの期待もあるかもしれない。しかし、ソフトバンクの狙いは映画製作ではなく、ヒット映画のモバイルでの活用の側面が大きいだろう。少なくとも目先ソフトバンクが日本発の大きな映画プロジェクトを進める可能性は低いのでないだろうか。
[数土直志]