成長するブラジル・アニメーション Anima Mundiから報告-2- 国際共同製作にも注目

子どもの笑顔で満ちた「アニマ・ムンディ」
国際フェスティバルからラテンアメリカ、世界市場へ
国際展開意欲ある次世代が支えるアニメーション産業

[オフィスH: 伊藤裕美]

■ 子どもが主役の映画祭

子どもが作ったアニメーションを集めた「Futuro Animador(将来のアニメーター)」は素朴だ。今年は46本の短編が選ばれ、アルゼンチン、エルサルバドル、ポルトガル、フランス、イタリア、ハンガリー、スロベニア、インド、台湾と共に、ブラジルの子ども作品31本が上映された。
多くの子どもが親に連れられ、学校の先生に引率され、あるいは仲間を誘って訪れる。メイン会場の多くを占めるのが「Estúdio Aberto(オープンスタジオ)」。アニマ・ムンディがIBMから資金援助を得て、IMPA(国立純粋・応用数学研究所)と共同開発した、コマ撮りソフトウェア「MUAN(ムアン)」が子どものアニメーション創作欲を掻き立てる。
「MUAN」はPCとデジカメがあれば、コマ撮りアニメーションを即座に生成できる。ホームページ(http://www.muan.org.br)から無料ダウンロードでき、リオデジャネイロの学校には無償で配布されている。美術教育だけでなく、数学や社会の授業も「MUAN」を取り入れ、教育効果を上げている。
映画祭ではクレイ(粘土)、砂、エンピツ画、ピクシレーション(人間のコマ撮り)、フィルムに直接描くDirect-on-filmアニメーション、ゾエトロープ(回転のぞき絵)といった、多様な技法を体験できる。数名のアニメーターが子どもを補助し、「MUAN」にデジカメデータを取り込む。ピクシレーションは2つのホワイトスクリーンステージが組まれ、子どもが列をなす。「MUAN」の操作講習は大人も参加できる。
アニメーションの楽しさを知った子どもが次の世代に育つだろう。「将来のアニメーター」上映は子どもアニメーターの晴れ舞台だ。映画祭がひとつの哲学に貫かれる。現在第一線で活躍するアニメーターは言う、「ブラジル独自のアニメーションを創りたい」。

 

Anima Mundi メイン会場ホール
Anima Mundi メイン会場ホール

■ アニマ・ムンディと協働した、SEA – コンセプト開発マスタークラス

「SEA – コンセプト開発マスタークラス(以下、SEA)」は、ブラジル、ヨーロッパ、日本の3 地域間の国際共同製作とネットワークを目的に、今年2月にデンマークで実施された。デンマークのThe Animation Workshopが主幹となり、アニマ・ムンディと筆者のオフィスHがパートナーとして連携し、EUのオーディオビジュアル産業振興プログラムMEDIA MUNDUS、デンマークの産業助成金、ブラジル国家映画庁、日本のJ-LOP(ジャパン・コンテンツ ローカライズ&プロモーション支援助成金)から助成を受けた。
3地域から各5名、計15名のコンセプトアーティストやディレクターなどが選ばれた。日本から、アートディレクターの宮崎あぐり氏(カナバングラフィックス)、スーパーミルクカウ代表でプロデューサー、ディレクターの久保亜美香氏、白組プロデュース部のチーフプロデューサーの田中尚美氏、米国Tiny Inventionsの桑畑かほる氏、NHKアート デジタルデザインセンター デジタルデザイン部CG映像のアートディレクターの吉田まほ氏が参加した。5氏はヨーロッパとブラジルの参加者と3名一組、計5チームに分かれ、コンセプトを開発した。
2週間という短期間ながら、最終日のピッチでは全チームが、ブラジル、ヨーロッパ、日本の業界エキスパートの前でコンセプトを発表した。SEAパートナーとピッチボードは、参加者15名とデンマーク人学生アシスタントのアートセンス、発想力と実行力に感服した。不十分な点もあったが、世界展開するコンセプトを、多文化のアーティストが混成で共同開発できることが示され、SEAスタイルに自信を深めた。
【5チームのコンセプト画像とキャプション - 最終頁をご覧ください】
アニマ・フォーラムでは「SEA」のパネルが行われた。筆者は、SEAのディレクターであるモートン・トーニング氏、アニマ・ムンディのマガリャンイス氏、ブラジル国家映画庁国際部ディレクターのエドゥアルド・ヴァェンチ氏らとステージに立ち、日本と他地域との文化・習慣の違い、日本のアーティストの傾向、日本人参加者の感想など発表した。映画祭の上映プログラムとして、参加者の作品もリオデジャネイロとサンパウロで上映された。

 

「SEA – コンセプト開発マスタークラス」 パネルの様子
「SEA – コンセプト開発マスタークラス」 パネルの様子

■ 国際共同製作への熱気

ブラジルの参加者5名が各チームのコンセプトをプレゼンテーションした。SEAのマスタークラス終了後に進展したチームもある。「Mythboy」は久保氏を中心に長編映画化の開発を決めた。宮崎氏が参加する「Bubblebit & Miauw」はブラジルのパオロ・コンチ氏が自国の資金調達制度と「2011年有料テレビ法」をテコにCATVと交渉を進めているという。コンセプトの開発中止を決めたチームもあるが、態勢が整えばプロジェクト化の可能性は残る。グローバル市場デビューに期待したい。
SEAにはブラジルからは100名以上の応募があった。パネルにも予想以上の参観者が集まった。アニメーター志望の高校生から「10代の学生が参加できるSEAはないか?」という質問が出るほど、SEAスタイルに期待が高い。ブラジルのアニメーション界は国際指向の強いアニメーターが集まっているようだ。リオデジャネイロで明るい未来を見た。

 

「Bubblebit & Miauw」:6~9歳をターゲットとするアクション・コメディーのテレビシリーズ。 © Bubblebit&Miau 2014. All Rights Reserved
「Bubblebit & Miauw」:6~9歳をターゲットとするアクション・コメディーのテレビシリーズ。
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「Ship n Sea」:12歳以上をターゲットとするシチュエーション・コメディのテレビシリーズ。
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「Charlotte」:ファミリー向けのテレビシリーズ。 © Sergio Glenes, Christian Bøving-Andersen, Kahoru Kuwahata, Henrique Heráclio
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© Sergio Glenes, Christian Bøving-Andersen, Kahoru Kuwahata, Henrique Heráclio
「Charlotte」:ファミリー向けのテレビシリーズ。 © Sergio Glenes, Christian Bøving-Andersen, Kahoru Kuwahata, Henrique Heráclio
「Pip & Mo」:4~6歳をターゲットとする2Dアニメーションのテレビシリーズ。
© Team Pip & Mo