成長するブラジル・アニメーション ラテンアメリカ最大のアニメーションフェスAnima Mundiか報告-1-

子どもの笑顔で満ちた「アニマ・ムンディ」
国際フェスティバルからラテンアメリカ、世界市場へ
国際展開意欲ある次世代が支えるアニメーション産業

[オフィスH: 伊藤裕美]

第1部
ラテンアメリカ最大規模のアニメーション・フェスティバル「Anima Mundi(アニマ・ムンディ)」が、リオデジャネイロとサンパウロで7月25日から8月10日の期間、延べ15日開催された。22回目を迎えた映画祭に集った人々には活気があり、会場は子どもの笑顔で満ちた。
筆者が訪れたリオデジャネイロでは、ビジネスセッションの「Anima Forum(アニマ・フォーラム)」と「Anima Business(アニマ・ビジネス)」が業界内の橋渡し役となっていた。
筆者は南米、ヨーロッパ、日本の3 地域間の国際共同製作とネットワークを図る「SEA – コンセプト開発マスタークラス」の実施報告を行なった。ビジネスセッションで臆せず質問する高校生にすら、ブラジル独自のアニメーションを国外へ展開しようとする意欲を感じた。

■ 国際映画祭で評価が高まる、ブラジルのアニメーション

ブラジルのアニメーション界に明るい未来が開ける。6月には、世界最大規模のアニメーション・フェスティバル「Annecy 2014」で、アレー・アブレオ監督の『O Menino e o Mundo (少年と世界)』が長編アニメーション部門の大賞(クリスタル賞)と観客賞をダブル受賞した。昨年のルイス・ボロネズ監督作品『Rio: 2096 A Story of Love and Fury(リオ2096年:愛と怒涛の物語)』に続く、2度目のクリスタル賞だ。長編部門を重視する国際映画祭での栄冠にアニメーション関係者の士気が上がる。
アブレオ監督は1993年、第2回アニマ・ムンディでデビューした。上映された短編『Sírius(シリウス)』は唯一のブラジル出品だった。サンパウロにスタジオを構えるアブレオ氏は広告のアニメーションやイラストレーションなどを受注しながら、2007年に初長編アニメーション『Garoto Cósmico(コスミック・ボーイ)』を発表した。2作目の『少年と世界』はセリフを交えず、伝統楽器のパンフルート(葦茎の笛)、サンバやブラジル・ヒップホップといった力強い音楽で物語る。静かな田舎に暮らす少年が父探しの旅に出る。様々な経験を経て、見知らぬ世界へ導かれる。貧富の差、都市と地方の格差、先住民と征服者といった伏線と少年の旅が、シンプルながら印象深いキャラクターと鮮やかな色彩のアニメーションで描かれる。カナダのOttawa 2013の最優秀長編アニメーション賞、南米最大規模の映画祭・サンパウロ国際映画祭のユース賞も受賞した。

 

『O Menino e o Mundo』 © Films de Papel, Espaço Films, Petrobras, BNDES
『O Menino e o Mundo』 © Films de Papel, Espaço Films, Petrobras, BNDES

■ 多様性がブラジル・アニメーションを成長させる
ハリウッドの大作アニメーションに比べれば、『少年と世界』の興行は地味だ。しかし元ブラジル・アニメーション協会プレジデントのアンドレス・ブリーチマン氏は「『少年と世界』はブラジル独自のアニメーション文化に重要な映画」と言う。ブラジル政府は業界の声を受け、独立系プロデューサーの資金調達を円滑化させる制度を整えてきた。『少年と世界』を共同製作したFilms de Papelと配給会社のEspaço Filmsは、ペトロブラス(ブラジル石油公社)の文化プログラム助成とブラジル国立経済社会開発銀行の低金利ローンを利用した。
ブラジルのアニメーションは歴史が浅く、専門の教育機関が不足する。アニメーターは独学で技能を磨き、テレビシリーズや広告で経験を積んできた。ブリーチマン氏ら第一世代は米国系CATV向けの仕事をしながらも、「才能を育てる、大切なもの」として短編への意欲を絶やさない。
今年の最優秀ブラジル・アニメーション賞を受賞した『Guida(ギダ)』は女性アニメーターのロザーナ・ウルビス氏が監督した。ウルビス監督は6年間、米国のディズニー・アニメーション・スタジオズで『ムーラン』『ターザン』『リロ・アンド・スティッチ』などに参加し、サンパウロに戻った。自らのスタジオでアニメーションやイラストレーションを受注しながら、オリジナル企画を実現した。『ギダ』は滑らかなエンピツ画の表情豊かな短編映画。テレビアニメはアメリカ風カートゥーンに圧倒されているが、アニメーターはブラジル独自のアニメーションを追及している。

『少年と世界』視聴サイト: https://www.youtube.com/watch?v=DWlQ0YrxWV8
『ギダ』視聴サイト: http://vimeo.com/98754707

 

『Guida』 © 2014 – Rosana Urbes. All rights reserved.
『Guida』 © 2014 – Rosana Urbes. All rights reserved.

■ アニメーション文化を普及させる、市民映画祭

アニマ・ムンディは、カナダのアニメーション文化に触れた4人のアニメーター―アイーダ・ケイロス氏、セザール・コエーリョ氏、レア・ザブリィ氏、マルコス・マガリャンイス氏が1992年に始めた。観光客を呼び込むためでも、キャラクターグッツ販売のためでもない、地元リオデジャネイロにアニメーション文化を広めようという熱意が生んだ市民映画祭だ。それから22年、国際映画祭として、ビジネスネットワークの場として成長した。
コンペティションには約1500本の長編と短編が世界中から応募された。ストーリー性ある短編、実験的短編、長編、コミッションドフィルム(広告等の受注作品) 子ども向け作品に分かれるセレクションは世界一級の水準。14年前に始まった「Anima Mundi Web」の発展形「Anima Multi」はモバイル、オンラインフォーマットのコンペティションだ。
ブラジル、ラテンアメリカの特集も特出。「Olho Neles!(注目!)」は多様なブラジルの新作を集めた。「Papo Animado(アニメーション・チャット)」のゲストは、アニメーション監督・脚本家・プロデューサーのセン・デリア氏。1980年代から広告アニメーションで活躍した、ブラジル・アニメーション草創期のアニメーターだ。ラテンアメリカ諸国のアニメーション特集「comKids」は、ラテンアメリカの青少年向けアニメーション、実写映画、ディジタルコンテンツの啓発と制作をする団体のセレクション。
リオデジャネイロとサンパウロには8万人の市民が訪れる。2都市が終わると、コンペティション受賞作などを特別編成してサーキットツアーに出る。これまでに首都ブラジリア、北部のベレン、南部最大の都市クリティーバで延べ5万人の市民が世界のアニメーションを楽しんだ。今年は南東部のベロオリゾンテに出向き、内外のアニメーターらを招くワークショップやアニメーション・チャットも行う。
リオデジャネイロでは4つの会場で上映と関連イベントが行われた。メイン会場は、中心部の文化・社会活動センター、フンディサン・プログレソ。周囲は歴史的建物保存地区として植民地時代の水路橋や建物が残る。ショッピング/カルチャー地区として親しまれるボタファゴでも5日間上映が行なわれた。多くの市民ボランティアとアニメーターが運営を支える。

 

Anima Mundi映画祭 メイン会場入口
Anima Mundi映画祭 メイン会場入口