日本アニメの海外配信の未来は? 国内外の主要企業がビジネストーク

1AnimeJapan 2014、2日目のビジネスセミナーの最後には「アニメ海外配信ビジネス最前線~アニメ海外配信の未来~」と題されたパネルが開催された。世界各国のアニメ配信事業者が集い、アニメ配信ビジネスの現状と将来について議論された。

パネラーは海外からはクランチロールのCEOのクン・ギャオ氏、Huluでコンテンツ・アクイジション・マネジャーを務めるベン・キム氏、ワカニムTVの社長オリビエ・セルバンテス氏の3名が登壇。さらに日本からはドワンゴのCPO太田豊紀氏が登壇した。そして、モデレーターは本誌アニメ!アニメ!の編集長である数土直志氏が務めた。

まずは数土氏が日本では馴染みのない海外のアニメ配信サイトについて簡単な説明を行った。Huluはアメリカのカリフォルニア州に本拠地がある大規模な動画配信サービス。2011年からは日本でもサービスを行っているが、海外ドラマや洋画コンテンツに強いという印象がある。

クランチロールもアメリカの動画配信サービスだ。Huluとは異なり、日本のアニメやドラマの専門サイトであり、いち早く日本のアニメの合法的な配信を行った企業として知られている。ワニカムTVも同様にアニメ配信により急成長した動画配信サービスだ。最後に日本のドワンゴはニコニコ動画などでアニメ配信サービスを行っているが、今回は海外配信事業について説明された。

次に登壇者には、現在の動画配信事業が軌道に乗った理由について質問が投げかけられた。Huluのキム氏は、2009年に始まったアニメ配信事業のきかっけは、インターネット上でのアニメコンテンツの人気の高さによると説明する。当時、Googleの検索ワードのトップには「セックス」、「ブリトニー・スピアーズ」というワードと共に「アニメ」がランクインしていたそうだ。そのため、Huluとしては『モダン・ファミリー』や『グリー』といった超人気ドラマと同様の価値をアニメコンテンツに見いだしているそうだ。

ワニカムTVは2009年にアニメ配信事業を始め、2010年から軌道に乗ったという。社長であるセルバンテス氏は、海賊行為によらない質の高いアニメを多くの視聴者に届けたいという思いから事業を開始。現在では日本の放送の1時間後にはフランス語字幕版を配信できる体制を築いている。価格も極めて安価で、30日間の無料期間の後、ストリーミング配信は1ドル、ダウンロードは2ドルで購入できるペイ・パー・ビュー方式を取り入れている。

クランチロールはもともとユーザーが自分のビデオを投稿するユーザー・アップロード・サービスとして開始した。日本のアニメはその最初期から人気コンテンツの一つであったそうだ。しかしながら、当時、アップロードされた動画の多くは違法アップロードであったため、クランチロールでは日本のアニメ会社に出向き、必死に正式なライセンスを獲得しようと努力したという。 2008年にテレビ東京との提携を実現、2009年には8つの番組を同時配信するなど、着々と成長を続けている。配信国もアメリカだけではなく、ヨーロッパや南米、東アジアまで拡大した。以上の経緯から、ギャオ氏は「海賊行為をやめさせるには、質の高いものを配信することだ」という教訓を得たという。そして、クランチロールの使命は日本のアニメを100%のクオリティで海外に届けることだと主張する。

他方、日本のドワンゴはそれほど積極的に海外向けのアニメ配信は行っていなかったそうだ。しかし一昨年、アニプレックスの協力のもと、「ソードアート・オンライン」を中国に向けて配信したところ全26話で1億再生を記録したという。この成功の理由は、中国での権利体制をしっかりと築いたことにあると、太田氏は説明する。きちんとしたライセンスを整備することで、違法に配信するサイトの動画を削除しやすくなるそうだ。

著作権制度が未熟だと思われがちな中国だが、「皆さんが思っているような無法地帯ではない」と太田氏は説明する。しかしながら、ニコニコ動画などの国外サイトは一時的に遮断されることもあるため、自社の配信サイトでビジネスを行うことは少なく、提携している企業に公衆送信の権利を販売する方法を取っているそうだ。 —-

次に数土氏は、動画配信サービス全体から見た時のアニメコンテンツの位置づけをHuluのキム氏に尋ねた。 Huluのサイトには、コンテンツが「テレビ」、「映画」、「キッズ」、「ラテン」、「その他」といったジャンル別に分かれている。アニメは「その他」に入っており、Huluとしては一般の視聴者が気軽に試聴する一つの選択肢として捉えているようだ。 またコンテンツのレコメンドサービスのような取り組みも行っており、『ファミリー・ガイ』といった米国製のコメディアニメを見た人に自然と日本のアニメをオススメすることも可能だ。このように今まで日本のアニメを知らなかった幅広い視聴者層に、その魅力を伝えることがHuluの強みの一つと言える。

さらに話題は動画配信サービスのビジネスモデルにも及んだ。Huluの収益の分配構造は、サブスクリプションサービスということもあって、コンテンツがどれだけの人に視聴されたかによって決まってくる。コンテンツによってはレベルニューシェア型の収益モデルを採用しているものもあるが、基本的には再生数にフィックスされた値がかけられた収益がコンテンツホルダーに届く仕組みだ。

ドワンゴではコンテンツの公衆送信ライセンスを販売している。現在、ライセンスを購入してくれる中国の会社は広告やサブスクリプションといったビジネスモデルを採用しているが、太田氏はサブスクリプションモデルに未来があると考えている。特に東アジア圏では、オンラインゲームの市場規模がかなり大きいので、ウェブ上のコンテンツを購入することに対する消費者の障壁は低い。そのため、有効なビジネスモデルを構築し、なおかつ信用できる会社ならば、ドワンゴとしては積極的に業務提携を行っていく構えだ。

クランチロールは有料会員と広告という二つのビジネスモデルが柱となっている。日本のアニメで収益を挙げているのは広告の方であり、ゲーム、清涼飲料水などのスポンサーが広告を掲載しているそうだ。現在は1000万のユニークビューワー、有料会員数は20万以上と急激な成長を記録しており、それらの数の強みから広告ビジネスで収益を上げている。 —-

最後に今後のアニメの海外配信ビジネスの行方と共に各サービスの抱負が述べられた。クランチロールのギャオ氏は、100万人の有料会員を目指すという。また動画配信だけではなく、新しいライフスタイルを海外に提供したいという。具体的には日本のマンガ、キャラクターグッズを提供するそうで、いわば日本の文化の伝道師を担っていくそうだ。

ドワンゴの太田氏は、今後はサブスクリプションモデルが間違いなく本命のビジネスになると指摘。動画配信のプラットフォームが手がけるだけではなく、アニメ制作会社が自前でサブスクリプションサービスを手がける可能性までも示唆した。 「ユーザーとクリエイターの距離は一層近くなるべき」、「自分たちのファン向けに作品を作るということが可能になる」と話す太田氏の意見は、昨今、ゲーム業界で浸透しつつあるクラウドファンディングのシステムにも似た発想を感じる。

ワニカムTVのセルバンテス氏は、次の4年でデジタルマーケットは拡大して、今後はDVDとBlu-ray市場に加えて、同時配信サービスが拡大するだろうと予想。Huluのキム氏は、質の高いアニメ作品を配信することで、Huluというサービスのプレミア感を高め、これまでアニメを見なかったユーザーにもその魅力を伝えていくと展望を述べた。

以上、人数の比して短いパネルディスカッションではあったが、アニメ配信事業者が一堂に会する貴重な機会であった。ユーザー層や人気コンテンツの傾向などより突っ込んだ議論も聞いてみたいため、ぜひとも来年も開催して欲しい企画だ。 

[取材・構成:今井晋]

「海外ビジネスセミナー アニメ海外配信ビジネス最前線~アニメ海外配信の未来~」
3月23日 16時~16時45分
東京ビッグサイト(AnimeJapan 2014内)

[登壇者]
モデレーター: 数土直志(アニメ!アニメ!編集長)
[パネラー]
クランチロール(米国): クン・ギャオ(CEO)
ワカニムTV(フランス): オリビエ・セルバンテス(社長)
ドワンゴ(日本): 太田豊紀(執行役員 CPO)
HULU: ベン・キム(米国)(コンテンツ・アクイジション・マネジャー)