[アニメビジネス10大ニュースの解説] (1) 宮崎駿監督 長編アニメ作品から引退

■ 宮崎駿監督 長編アニメ作品から引退

2013年、アニメ界を最も激震させたのは、宮崎駿監督の引退発表だろう。『となりのトトロ』、『天空の城ラピュタ』、『魔女の宅急便』、『千と千尋の神隠し』など数々の人気作品を生み出してきた監督が、今後は長編アニメを作らないと9月6日に記者会見で明らかにした。
日本だけでなく、世界中に名前を知れた監督だけに、そのニュースはたちまち全世界のメディアを駆け巡った。興収約120億円にもなった『風立ちぬ』を公開した直後だけに、その驚きも大きい。

宮崎駿監督の引退は、文化としてアニメに大きなインパクトがあるのは言うまでもない。しかし、日本のアニメビジネス、そして映画ビジネスに対しても大きな影響がある。
映画興収だけをとっても、宮崎駿作品は興収304億円の『千と千尋の神隠し』を筆頭に、日本の歴代1位から3位までを独占、歴代6位までの5作を占める。映像ソフト、テレビ放映ほかの関連ビジネスでも同じ存在感があるはずだ。これが今後期待出来ないとなると、収益として無視できない企業は多いはずだ。また、宮崎アニメの牽引力が1990年代以降の日本のアニメ業界を引っ張ってきた側面もある。そうした指標が失われることでアニメ業界全体のパワーダウンもあるかもしれない。

宮崎駿監督の先輩である高畑勲監督が、「気が変わることがあるかも知れない」と指摘するように、引退の意思が今後撤回される可能性もないわけではない。しかし、それでも今年73歳となる宮崎駿監督に、これまで同様の創作を望むのは厳しい。引退発表がなかったとしても、スタジオジブリは宮崎駿監督に依存しない体制を早晩求められた。
スタジオジブリのプロデューサーである鈴木敏夫氏は、引退記者会見にてスタジオジブリの今後に対する質問に自分たちより若い世代が決めることと答えた。その答えを逆に取れば、新しい世代が望めば、現在のスタジオの体制は壊してもいいということだ。

スタジオジブリでは、2013年、2014年と2期連続で研修生の募集を見送っている。また、またプロデューサーとしてスタジオに所属する川上量生氏が、2013年に別のアニメスタジオであるカラーの取締役に就任したことも明らかになっている。こうしたことが今後のスタジオジブリの体制に何か影響があるのかはっきりとは分からない。しかし、確実に言えるのは、スタジオがおそらく10年後もいまと同じ体制であることは難しいことだ。
宮崎駿監督の引退発表は、スタジオジブリの抱える不安定な未来、それとパラレルにつながる日本のアニメ映画の未来の不安定性を認識させる事件だったと言える。
[数土直志]