「アフタヌーン」電子版、紙版と同日配信スタート 講談社が国内外でマンガ連載作品の配信加速

「アフタヌーン」2014年1月号
「アフタヌーン」2014年1月号

講談社がマンガ雑誌に連載する作品のデジタル配信を積極化している。同社は11月25日に、青年向けの人気月刊マンガ誌「アフタヌーン」の電子版配信を開始した。11月25日に店頭発売された2014年1月号を680円で50の電子書籍書店で一斉発売した。1000ページを超えるボリュームで、紙版と同価格帯となっている。
電子書籍版は、今後も毎月25日に最新号を配信する。講談社では、移動中により手軽に読める、保管・収納の悩みを解消するとして積極的に売り込む。また、配信開始号には、漆原友紀さんの人気マンガ『蟲師』の全新作特別篇(前篇)、さらに実写映画化、テレビアニメ化が発表された『寄生獣』(岩明均)第1話を再掲載など力を入れている様子が窺える。

講談社がマンガ雑誌の電子版と紙版を同時配信するのは、今年5月にスタートした青年向けの週刊マンガ誌「モーニング」に続くものだ。「モーニング」(紙版)は直近の印刷証明付発行部数が29万部超、人気雑誌となっている。電子版の同日配信は紙版とのユーザーの喰い合いも心配されるが、価格を紙版と電子版を同水準にすることで、こうした問題は回避される。
「モーニング」電子版スタート半年で、さら「アフタヌーン」が加わったことで、マンガ雑誌電子版の同日配信が好調であることを感じさせる。今後は、他の人気マンガ雑誌、さらに一般誌の配信も視野に入って来るだろう。

講談社がマンガ雑誌の電子化に先んじたが、業界大手の積極的な取り組みは、マンガ出版を手掛ける他の出版社にも影響を与えそうだ。同社の後を追うかたちで、こうした取り組みが増えそうだ。
マンガ出版で存在感が大きい集英社は、すでに実験的な試みとしてデジタルフォーマットのマンガ誌「ジャンプLIVE」を今年8月に配信し、好評を博した。「モーニング」や「アフタヌーン」と異なり、こちらは描きおろしコンテンツを多く含み、毎日新コンテンツを更新、動画も含むなど、デジタルコンテンツの新しい在り方を模索しているのが分かる。
今後、どういったかたちがデジタルの主流になるかも興味深いところだ。いずれにしても、単行本に比べて遅れていた連載中のマンガ作品のデジタル配信は、拡大の方向とみられる。

講談社の電子版マンガ配信の強化は、国内だけにとどまらない。今年10月には、『進撃の巨人』、『宇宙兄弟』、『FAIRY TAIL』などの海外向けの同日配信にも乗り出している。海外向け日本コンテンツ配信トの大手クランチロールと手を組み、英語圏に連載中のマンガを同日配信する。雑誌連載中のマンガを日本と同時期に英語圏に配信するのは、これまでVIZ Mediaの「Weekly Shonen Jump Alpha」のみが行っていた。
また、クランチロールでのマンガ配信は、テレビアニメでの同日配信のビジネスモデルを単純に移し替えるのでなく、マンガに合わせたかたちに組み直している。アニメでは有料会員は、他の会員より1週間早く最新作を視聴できるのが売りだ。過去の作品は無料会員でも、自由に視聴可能だ。
一方、マンガでは、最新作は誰でも無料でアクセス、閲覧出来る。ただし、新作がアップされると過去の作品はアーカイブに入り、有料会員しか閲覧出来ない。アニメとは真逆になっている。
アニメとは真逆だが、これは日本の「モーニング」や「アフタヌーン」の電子版により近い。つまり、一度購入した雑誌は永続的に保有可能という点が共通だ。海外の電子マンガ ビジネスは、依然、模索状態だが、こうした挑戦がどういった結果になるのかが注目される。
電子書籍市場が成長しているとはいえ、紙出版の市場のほうが依然巨大だ。しかし、こうした状況が今後も続くとは多くの人は考えていない。投資に余力があるいまだからからこそ、講談社はいち早く電子マンガに大きく舵を切っているに違いない。
[数土直志]