米国メディア投資企業チャーニン・グループがクランチロール買収か ウェブメディア報道

米国のテクノロジー・メディア情報のAllThingsD.comは、10月30日付で海外向けに日本アニメのインターネット配信をするクランチロール(Crunchyroll)がチャーニン・グループThe Chernin Groupに買収されたと報じている。
報道によればチャーニン・グループは、クランチロールの株式の過半数を1億ドルに近い金額で取得した。株式売却後も、クランチロールの経営陣や現在も株式の一部を保有するテレビ東京は少数株主としてとどまるとしている。当面は現体制で、日本アニメや10月にスタートした日本マンガの世界配信に注力することになりそうだ。

クランチロールは2000年代半ばにサイトを立ち上げた。当初は海外に多い日本アニメの違法動画配信サイトとしてスタートしたが、ベンチャーキャピタルからの出資をきっかけに、サイトの合法化に方針を転換した。2009年以降、日本のアニメ作品の権利者と契約を結び、広告つきの無料配信とプレミア会員向けの有料配信を行っている。
ビジネス立ち上げ当初は苦戦したが、日本での放送直後の海外向け配信の強化や動画配信のデバイスの多様化の波への対応、配信言語の拡大もあり、2012年以降は急成長をしている。現在は、世界で有料会員が20万人以上、無料会員が1000万人以上とされている。2013年10月には新たに日本マンガの翻訳版の世界配信参入を発表したばかりだ。

同社は2007年の企業化の際に、シリコンバレーの名門ベンチャーキャピタル ベンロック(Venrock)やエンジェルと呼ばれる個人投資家からおよそ1000万ドルの資金調達をしたとされている。その後、日本企業からもテレビ東京とビットウェイがそれぞれ75万ドルを出資した。
今回、チャーニン・グループが株式を取得したとすれば、初期のベンチャーキャピタルやエンジェルの所有株となりそうだ。クランチロールの業績が上向いたことで、2007年に行った投資の回収をしたわけだ。

ベンロックやエンジェルが純粋な投資目的だったのに対して、チャーニン・グループはビジネスとしてより目的を持ったうえでの株式取得となる。チャーニン・グループは、米国のメディアコングロマリットであるニューズ・コープ(News Corp.)の元社長として知られるピーター・チャーニンが2009年に設立した。同氏はTwitter社やアメリカン・エキスプレスの取締役も務める。
チャーニン・グループは、これまでメディア、エンタテインメント、テクノロジーに特化して企業買収を行っている。近年は、ネット上のメディアプラットフォームとアジアビジネスに大きな関心を見せる。今年6月にはYouTube上で最大のエンタテインメントチャンネルであったフルスクリーン(Fullscreen)に出資したばかりである。さらに現在はHuluの買収を検討中とも伝えられている。

海外では日本アニメのテレビ放送は近年、減少気味で、映像ソフトの売上げも冴えない。そうしたなかでアニメファンはネットでの番組視聴やコミュニティに向かっている。リアルな場よりも、ネット上で存在感が大きい。ビジネスの場も、ネット上で拡大している。また、日本アニメの人気は特にアジアで高い、メディアプラットフォームとアジアのビジネスを拡大したいチャーニン・グループにとって魅力ある企業といえるだろう。
もし報道される買収や金額が確かであれば、メディアの世界ではかなりニッチな日本アニメ専門の動画配信サイトが1億ドル近くはかなり高い評価だ。これは日本のアニメ、マンガビジネスへの潜在的な力への評価ともなる。クランチロールの今後の展開はますます目が離せなくなる。
[数土直志]