映像進出を加速化する米国コミック出版社 IDWがTV部門設立、BOOM!は20世紀FOXと提携

マンガと映画、テレビ番組、アニメーションとの結びつきは、日本国内ではよく知られた話だ。マンガ原作なしでは、日本の映像産業は成り立たたないとも言われる。
しかし、これは日本に限った話ではない。映画大国の米国でも、バットマンを主人公にした「ダークナイト」シリーズ、ヒーロー連合が活躍する『アベンジャーズ』、テレビドラマ『ウォーキングデッド』の大ヒットなどもあり、近年、コミックスの映像産業への影響は増す一方だ。2009年にウォルト・ディズニーが大手コミックス出版社マーベル・エンタテインメントを買収したのもその表れだ。

そうしたなか、コミックス産業と映像産業のつながりはますます強くなりそうな気配だ。そして、マーベルがウォルト・ディズニー、DCコミックがワーナー・ブラザースと2大出版社がメジャースタジオの傘下にあるなか、現在は、3位以下の中堅出版社のビジネスの動きがよりアクティブになっている。
10月17日に、中堅出版社のひとつIDWパブリッシング(IDW Publishing)は、新会社IDWエンタテインメント(IDW Entertainment)の新設を発表した。一方、やはり中堅クラスのBoom!スタジオ(Boom! Studios)は、20世紀FOXと映像化にあたりファーストルックの契約を結んだ。
IDWはコミックスのマーケットシェアで4位だ。Boom!スタジオは5位から9位グループだが、先日別の中堅コミックス出版社Archaiaを買収したばかりである。

IDWエンタテインメントは、IDWのコミックス、グラフィックノベルのオリジナルコンテンツをテレビ番組として開発する。その事業は資金調達から、番組企画・開発、制作までに至る。新たに社長となったデビッド・オザルはテレビ番組業界でのキャリアが長く、その経験を活かすことになる。
同社のCEOのテッド・アダムスは新部門設立について、IDWは過去数年間順調な成長を続けており、なかでも現在は複数のメジャースタジオと製作中の劇場映画の存在感が大きいとする。そうしたなかでさらにメディア企業として成長するために、テレビ番組に力を入れると説明する。今後、テレビ番組を目指す作品として『Life Undead』、『Brooklyn Animal Control』、『V Wars』などを挙げている。

もともとIDWは、映画やテレビ番組、ゲームなどのコミカライズを得意とする。そのタイトルは『スタートレック』や『ドクター・フー』、『トランスフォーマー』、『G.I.ジョー』、『メタルギアソリッド』から『マイリトル・ポニー』など多彩だ。しかし、今回は映像からコミックでなく、コミックから映像の逆方向を目指す。
また、製作出資することで、自ら映像化のイニシアチブを握る。それは、ライセンスの供与から映画の自社製作に乗り出したかつてのマーベルの姿を彷彿させる。

一方、Boom!スタジオと20世紀FOXの契約では、20世紀FOXがBoom!スタジオとArchaiaの作品について、映像化にあたり優先交渉権を確保する。
一見は、20世紀FOXに有利そうだ。しかし、Boom!スタジオとそのクリエイターは、もし作品が映像化された場合は、全売上高のなかから一定の割合を受け取ると伝えられている。(First-dollar Gross)
ハリウッド映画などでは、スタッフやビジネスパートナー、原作者などに売上げの一定比率を支払うことはあるが、多くは全売上高のなかから必要経費などを控除したあとの金額である。全売上高をベースにすることは珍しく、Boom!スタジオはかなり低いリスクで、大きなリターンを受け取ることが可能になる。
逆にこうした好条件は、マーベルがウォルト・ディズニーの傘下に入ったことで、他のハリウッドメジャーが良質のコミック原作の獲得にあせりを見せているともいえそうだ。

かたやIDWは自ら映像製作に進出することで、事業の拡大を目指す。もう一方のBOOM!は、自身は映像製作することはなく、映像化チャンスの拡大と収益の最大化を狙う。方向性は対照的だ。
ただし、共通するのは、コミックスにとって映像産業には、大きなビジネスチャンスが存在するとの考え方だ。今後、業界第3位のイメージ・コミックスをはじめとする他のコミックス出版社の動きも目が離せなくなって来る。
[数土直志]

IDW Publishing
http://www.idwpublishing.com/
Boom! Studios
http://www.boom-studios.com/