小学館 シンガポール現地法人「小学館アジア」設立 アニメビジネスも視野

国内を代表する大手出版社の小学館が、海外攻勢をさらに強めている。これまでは成功を収めてきた北米、台湾や、さらにヨーロッパで事業を展開してきたが、それを東南アジアに広げる。
小学館は2013年9月18日付で、シンガポールに100%出資の現地法人 小学館アジアを設立したことを明らかにした。資本金は120万シンガポールドル、日本円で約9400万円となる。小学館マルチメディア局プロデューサーの加治屋文祥氏が社長に就任した。現在は、仮オフィスだが11月に移転、本格的な業務を開始する。

事業内容はまず、現地向けのマンガ翻訳出版が掲げられた。『ドラえもん』をはじめとするマンガを、大人と子ども双方に広く展開するとしている。さらに学習関連書籍の英語版事業も挙げている。これは地域経済の発展で学習意欲が向上し、教育・学習関連への関心が高まっているためだ。
ここまでは伝統的な出版業務だが、周辺事業への意欲も高い。現地へのアニメ導入やメディアミックス戦略、商品化にも取り組む。
こうした点は、海外事業で先行する米国・サンフランシスコのVIZ Mediaの成功やヨーロッパのVIZヨーロッパのノウハウを活用することになりそうだ。両社はマンガ出版だけでなく、アニメなどの映像商品、さらにライセンス事業を手掛けている。出版社でなく、総合メディア会社としての東南アジア進出となる。

新たなメディアへの対応も、こうした他の現地法人と同様だ。小学館アジアは、デジタル分野にも積極的だ。書籍やパッケージでないデジタルファーストの実験的な取り組みもする。すでに現地の有力パートナーがいるなかでの直接進出は、デジタル対応は自社が直接との考えも伺える。
拠点はシンガポールになるが、そこからアセアン各国に事業展開する。さらにはオセアニア、インド市場も市場調査のうえ視野に入れる。

小学館は、すでに北米は集英社、小学館集英社プロダクション共同出資するVIZ Media、ヨーロッパはフランスとドイツに拠点を持つVIZヨーロッパ、さらに上海VIZ、台湾小学館の海外ネットワークを持つ。小学館アジアの設立で北米、ヨーロッパ、北東アジアに続き、東南アジアの広い地域をカバーする。これにインド、オセアニアが加われば、世界の主要市場のかなりの部分で直接ビジネスを行うことになる。
直接進出は、グローバル視点での統合的なビジネス戦略が組める、そのうえで収益の最大化が図られる点で利点は多い。
一方で、懸念がないわけでない。これまで小学館は、現地の出版社にライセンス供与のかたちでマンガを中心に翻訳出版を行ってきた。有力作品の多くがすでにライセンス販売されているため、小学館アジアが自ら出版できる作品タイトルは当面限られる。他方、将来的に同社が有力作品の他社へのライセンス販売を減らすと見らられば、現在、作品を発売する現地出版の販売意欲、プロモーションがいっきに弱くなる可能性がある。それは作品のブランドや流通も弱める可能性がある。逆に言えば、それでもあえて、直接進出を選んだ小学館のアジア進出の決意の高さの表れともいえる。今後の事業の展開が注目される。
[数土直志]

小学館 http://www.shogakukan.co.jp/