ヨーロッパアニメーションの中の「日本」 アヌシー・レポート 第5回:伊藤裕美

 

第37回アヌシー国際アニメーションフェスティバル・授賞式 (c) CITIA
第37回アヌシー国際アニメーションフェスティバル・授賞式 (c) CITIA

第37回アヌシー国際アニメーション・フェスティバル、Annecy 2013

カナダから新アートディレクターを迎え、地球規模で拡大するアニメーション映画祭
自信強める、ヨーロッパのアニメーション

取材・文: 伊藤裕美(オフィスH)

 

■ ヨーロッパアニメーションの中の「日本」

日本は政府が「クール・ジャパン」の掛け声の下、日本アニメの海外プロモーションや国際共同製作の助成に乗り出した。アヌシーのコンペティションには、日本から9本(長編1本、短編4本、学生3本、テレビ1本)がノミネートされ、コンペ外上映に6本(長編5本、短編2本)が選ばれた。残念ながら、今年は受賞に至らなかった。

MIFAマーケットでは、東京都練馬区・練馬アニメーション協議会とユニジャパンが共同で出展したが、韓国と比べると賑わいに差がついた。ビジネスモードの他国・他地域が、MIFAマーケットで国際的な共同製作・協働や制作誘致のインセンティブを打ち出す昨今だが、日本はレセプション「Japan Reception」で文化庁の関係者が挨拶に立ち、“文化交流”をアピールした。

フランスの映画専門誌エクラントタル(6月12日号)のMIFA特集で、フローランス・ボンヴォワザン記者が次のように伝えている。長くなるが引用する。
[長編アニメーションへの投資はフランスの放送局が減少傾向であるものの、ハリウッド大作と対抗するために制作費は上昇している]制作予算2000万~4000万ユーロを回収するには、国外販売を最大限にする必要がある。まずヨーロッパ。ドイツ、英国、イタリー、そしてノルディック諸国、中欧と東欧。そしてラテンアメリカ、とりわけメキシコとブラジル。アジアは、まず韓国そして巨大市場の中国、さらにロシア、これらは高い潜在力がある。[中略]4000万ユーロを超す映画で戦略的に成功しなければならない市場は米国だ。米国市場は極めて攻め難く、メインストリームの米国長編と競合せねばならない。アニメーションが溢れる米国は、(日本と全く同じように-()原文ママ)潜在的な挑戦者に対し、その扉を容易には開かないことを承知している。
もはや日本は市場としてヨーロッパの相手でない、と暗示している。ある国を市場として見ないということは、その国と自国とのアニメーションの違いに頓着しないということだ。

世界のアニメーションでは、テレビと劇場公開作共には、日本が得意とした70/80年代テレビアニメやOVA(オリジナルビデオアニメーション)と異なるキャラクター(顔)や技法が主流だ。子どもたちは“今のアニメーション”で育つ。遠くない将来、日本アニメには中高年のコアファンが支えるニッチな市場しか残らないことになる。
ヨーロッパアニメーションの制作関係者は、国際共同製作を単に「資金集め」として利用しているのではない。それは「世界市場を広げるため」(英国貿易投資総省 映画・デジタルメディアスペシャリスト、ジーナ・フィーガン氏)だ。
国際共同製作には、さまざまな障害がある。それを乗り越えてでも、世界へ市場を広げたいプロデューサーがチャンスを狙う場に、MIFAマーケットはこの十年で変化した。

フェスティバルのアートディレクター、ジャン氏に日本のアニメーションの感想を聞いたところ、「コンペティション入選作では、水尻自子監督の『布団』と湯浅政明監督の『キックハート』(製作:プロダクションIG)が印象深かった。両極端の特徴を示す、この2作は日本の多様性を示している」とのこと。
もう20年も訪日していないジャン氏は、自国カナダや世界の映画祭で上映される大山慶氏、そして橋本新監督の『ベルーガ』も挙げた。長編部門を重視するアヌシーのアートディレクターの口から、日本の長編アニメーションも、日本のテレビで人気のアニメーションシリーズも出て来なかった。