仏長編作品、制作費上昇の一方で、低予算化も :アヌシー国際アニメーション・フェスティバル 2013年レポート 第3回:伊藤裕美

文化大臣訪問MIFAマーケットを訪れた、オレリー・フィリペティ文化・通信大臣(右から3番目)。 左端 CITIA(シティア)ディレクター、パトリック・エヴェノ氏。右端 MIFA 開拓責任者のミカエル・マラン氏 (c) CITIA
文化大臣訪問MIFAマーケットを訪れた、オレリー・フィリペティ文化・通信大臣(右から3番目)。
左端 CITIA(シティア)ディレクター、パトリック・エヴェノ氏。右端 MIFA 開拓責任者のミカエル・マラン氏
(c) CITIA

第37回アヌシー国際アニメーション・フェスティバル、Annecy 2013

カナダから新アートディレクターを迎え、地球規模で拡大するアニメーション映画祭
自信強める、ヨーロッパのアニメーション

取材・文: 伊藤裕美(オフィスH)

 

■ フランスの長編アニメーション映画、制作費上昇の一方で、低予算化も

フランスでは、1998年のミシェル・オスロ監督の『キリクと魔女』(国内観客動員130万人、興行収入650万ドル)のヒット以降、一般客も国産アニメーション映画を再評価し、アニメーションはデジタル技法の普及と相まって、質量共に充実。今では、劇場公開作だけでなくテレビアニメーションも順調な成長を遂げ、アニメーションは主要な“輸出品”と評価され、フランスに外資を誘導し、雇用創出に貢献している。
CNC(国立映画・映像センター)の年次レポート「La marché de l’animation en 2012 – télévision et ciéma, production, diffusion, audience(2012年のアニメーション市場 – テレビと映画、制作、配給、観客・視聴者)」(2013年6月発行)によると、2011年のテレビアニメーションの国外販売額は3,530万ユーロ。総販売額の32%に相当する。2012年に国内で制作された298時間の75.6%に当たる、226時間は国際共同製作や外国のプリセールスだ。
長編アニメーションでは、日本でも公開された、リュック・ベッソン監督の『アーサーとミニモイの不思議な国』と『アーサーと魔王マルタザールの逆襲』はそれぞれ40ヵ国以上、マルジャン・サトラピ、ヴァンサン・パロノー共同監督の『ペルセポリス』とシルヴァン・ショメ監督の『ベルヴィル・ランデブー』は30ヵ国以上へ配給された。日本未公開の『Igor』は30ヵ国で400万人以上を動員、『Astérix et les Vikings』と『Un monstre à Paris』は共に28ヵ国、前者は270万人、2011年公開の後者は140万人を動員した。

フランスの長編アニメーション映画の制作費をみると、リュック・ベッソン監督の『アーサーとミニモイの不思議な国』、『アーサーと魔王マルタザールの逆襲』、『アーサーとふたつの世界の決戦』は6000万円ユーロ(78億円)規模であるが、それ以外は3DCGでも「1500万ユーロ(19億円)から2000万ユーロ(26億円)が妥当」と見られてきた。しかし、100億円を投じるハリウッド大作に対抗するために制作費の上昇が見られる。
日本未公開だが、11年に公開された『Un monstre à Paris(仮題 パリのモンスター)』は2800万ユーロ(約36億円)を超した。放送局M6の傘下スタジオが製作する、『Astérix et les Vikings』の続編で、14年公開予定の3D立体視『Astérix et le domaine des dieux(邦訳:アステリックスと神々の領域)』は、米国と共同で3100万ユーロ(40億円)を超す制作費が投じられた。古代ローマ時代のガリア人が主人公のバンデシネ(フランスのコミックス)の「アステリックス」はシリーズ累計3億5000万部以上発行のロングセラーで、フランス語圏とラテンアメリカに圧倒的ファンを持つ。
またベルギーのベン・スタッセン監督の立体視3D作品『Le Voyage Extraordinaire de Samy(ナットのスペースアドベンチャー3D)』の続編『Samy 2』は2100万ユーロ(27億円)から2500万ユーロ(32億円)、さらに次回作『La Manoir magique』は2500万ユーロと伝えられる。人気コミックス原作やヒット作の続編とはいえ、ヨーロッパのアニメーションには国外配給の実績が伴わなければ投じられない規模の制作費が動いている。

一方、ヨーロッパでは低予算と考えられる“5億円規模”で製作するスタジオもある。フランスのXilam(イグジラム、http://www.xilam.com/)の創立者でCEOのマルク・デュポンタヴィス氏は、長編アニメーション『Oggy et les Cafards, le film(邦訳:映画版 オギーとコックローチ)』を400万ユーロ弱(5億円)で製作し、今年8月の公開を待つ。原作は1997年から放送が続くテレビシリーズ「オギーとコックローチ」。青色の猫のオギーと天敵の3匹のゴキブリが主人公のドタバタコメディで、フランス版“トムとジェリー”として親しまれている。カートゥーン・ネットワークがアジアとラテンアメリカで放送し、“青猫オギーと3匹のゴキブリ”のフェースブックのファンは120万人。同作はフランス公開前に15ヵ国へ販売が決まっており、国内で35万人を動員すれば採算レベルに乗ると、フランスの映画専門誌「écrantotal(エクラントタル)」でデュポンタヴィス氏は語っている。