海外のコンベンション参加人数増加は、アニメ・マンガ人気のバロメーターか? 第2回 売上の減少とコンベンション参加人数の増加

SONY DSC文化輸出品としてのマンガ-北米のマンガ事情 第19回-2
海外のコンベンション参加人数増加は、アニメ・マンガ人気のバロメーターか?

椎名 ゆかり

 

■ 売上の減少とコンベンション参加人数の増加

市場における売上高の劇的な減少とコンベンション参加人数の増加という一見矛盾した現象は、海外の日本アニメ・マンガの人気を語る時にしばしば話題にのぼってきた。そしてその乖離は時に「売上が下がっているのは、ネット上に横行するデジタルの海賊版のせいであり、人気自体は下がるどころか、少しずつ上がっている」と説明されてきた。そして人気上昇の根拠となっていたのがコンベンションの参加人数の増加である。

例えば『デジタルコンテンツ白書』の2012年版では、北米でのマンガ市場での紙単行本の売上低下に反してマンガの潜在購読者は増えているとの主張が行われ、コンベンションの参加人数の増加をその根拠としている(1)。(その他、当コラムの第15回目「北米で日本マンガは今でも人気なのか」も時間があればご参照頂きたい。)
本文で詳しい説明はないが、ここで言う「潜在購読者」とは、同白書の性格からすると、「日本のマンガの潜在購読者」を意味し、デジタルの海賊版さえなければ正規版を購入したであろう読者、つまり売上には貢献していないものの、日本のマンガを消費したいと考える読者を指していると考えて差し支えないだろう。

確かに、デジタルの海賊版である通称「スキャンレーション」が売上低下に影響しているという説には頷ける点がある。前々回のこのコラムにインタビューで登場していただいたマンガ専門の米ブロガー、Deb Aoki(ディブ・アオキ)氏も「ネット上に氾濫するスキャンレーションのせいで、日本のマンガへの興味は持続しているが、同時にスキャンレーションのせいで購買意欲はこれ以上ないくらい下がっている」と話していた。
特にブームが収束し一般書店で日本マンガを扱うところも減った今、マンガ読者にクレジットカードを持たない10代が多いことを考えると、これは実状に近いのではないだろうか。

しかし、海賊版が売上の低下に影響しているのが事実だとしても、「コンベンションの参加人数が増加している」という点だけを根拠に「日本のアニメやマンガはまだ海外で依然として人気がある」もしくは「人気が少しずつ上がっている」と見るのは、筆者には短絡的に思える。北米での日本アニメやマンガの人気をみる時、コンベンションの参加人数がひとつの資料になったとしても、あくまでそれはひとつの参考に過ぎない。

以前、当サイトの編集長である数土直志氏が「コンベンションのビジネスそのものが、アニメやマンガに限らず世界全体で伸びている傾向にある中、アニメやマンガのコンベンションの参加人数の増減について語るなら、他のジャンルのコンベンションの参加人数の伸び率と比較しなければ意味がないのではないだろうか」という趣旨の指摘をされていたが、数土氏の言うように、コンベンションの参加人数で人気を計るなら、他の要素、例えば他のジャンルのコンベンションの増減など、参照すべき要素は他にもたくさんあるように思われる。

先に述べたように今年の「Anime Expo」は過去最高の入場者数となり、かなり盛り上がっていたと報告するレポートも多く出ている。それでも筆者は、日本のアニメやマンガの売上低下とコンベンションの参加人数の増加という状況について、「人気が売上に結びつかないだけで、以前と変わらず人気はある」または「むしろ人気は上昇している」という意見には素直に頷くことはできない。以下、その理由について、個人的な見解を述べてみたい。

(1) 『デジタルコンテンツ白書 2012:メディア大激動時代へ いまコンテンツと配信の世界で何が起きているのか』2012年9月1日、P164