海外のコンベンション参加人数増加は、アニメ・マンガ人気のバロメーターか? 第1回

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Anime Expo2013は過去最高の来場者数となった。

椎名 ゆかり
アメリカの大学院でポピュラー・カルチャーを学び帰国後、マンガを専門とする出版エージェント業やアニメ、マンガ関連の翻訳者他、海外マンガを紹介する様々な仕事を行ってきた。現在は文化庁のメディア芸術を推進する部署で研究補佐員として勤務中。
翻訳マンガ:『ファン・ホーム』『メガトーキョー』他
ブログ:「英語で!アニメ・マンガ」 http://d.hatena.ne.jp/ceena/

 

通常このコラムではマンガに限定して書かせていただいているが、今回は、アメリカにおける日本のポピュラー・カルチャーをテーマとしたコンベンションの変化を通して、現在の現地での日本のアニメやマンガの受容状況について考察してみたい。

ここで言うコンベンションとは、大雑把に言うと、ポピュラー・カルチャーの特定の作品やジャンルのファンが集まるイベントを指す。海外のコンベンションとして日本でよく知られているのはアメリカの「Anime Expo」やフランスの「Japan Expo」だろうか。小さな会場で行われるファンによる手作り感溢れるものから、企業ブースや小売りブースが会場に並び、複数の催しが同時に行われているような大規模なものまで大小様々で、その始まりには諸説あるが、今のような形のコンベンションは、イギリスもしくはアメリカで1930年代にSFファンが始めたものが起源とされることが多い。

 

■ 北米における日本のアニメやマンガのコンベンション

アメリカでは70年代後半に最初の日本アニメやマンガのファンクラブが出来て集会などが行われていたが、日本のアニメやマンガに特化したコンベンションの発祥は、80年代にSFコンベンションの中で行われたアニメ専門の上映会とも言われている。上映会の盛況を受けて個別にイベントとして独立したものが後に、コンベンションへと発展していったのだ。
前回のコラム(「トーレン・スミス氏追悼コラム:北米で日本マンガ出版に力を尽くしたカナダ人」 (1))で少し触れたように、当時はSFや北米のコミックス、そして日本のアニメやマンガの親和性は高く、ファンがかなりの部分で重なっていた。日本のアニメやマンガは当時アメリカでは、大きなSFというジャンルの一部とみなされていたとも言える。

日本のアニメが、日系などアジア系の住人の多い大都市でTV放映されることが多かったので、もともとファンは西海岸に多いと言われていて、コンベンションも当初は西海岸で多く行われていたと言う人もいる。
しかし、それとは別に90年代以降は大学のある街で開かれることも多くなった。その頃は大学生がファンの中心であり、大学のアニメサークルがファン活動の拠点となっていたためである。現在北米で多くの来場者を集める日本アニメやマンガのコンベンションの多くが90年代に始まった。

ちなみに、筆者が2000年代初頭にアメリカの大学院に留学していた時、その大学のアニメサークルは毎週土曜日に必ず上映会を開いていた。作品によっては通常の教室だけでなく、大学にある大劇場ホールを使うこともあり、大劇場での上映会時では観客にクジ引いてもらい、景品を配ることも多かった。その景品となっていたのは、主に現地のアニメ販売会社からサークル宛に盛んに送られてきていたサンプルで、当時は現地の販売会社が大学のサークルにプロモーション機能としての発信力を期待していたのがうかがえた。

話を戻すと、アメリカでは夏にコンベンションのシーズンがスタートすると言われるが、実際には毎週のようにどこかでコンベンションが開催され、ファンが集まって様々なイベント、買い物、コスプレ、そしてファン同士のリアルな交流を楽しんでいる。当初数十人または数百人の規模で始まった日本アニメやマンガのコンベンションも今では数万人の参加者を誇るものも少なくない。
北米で最大と言われる「Anime Expo」は今年7月4日から7日まで行われ、来場者が過去最高を記録。延べ人数で16万1千人、実数で6万1千人を超えた(2)。(ちなみにフランスの「Japan Expo」は20万人を超えているが、これは4日間の参加延べ人数である。さらに付け加えると、日本の「コミケ」の全日程の参加人数を合計すると延べ人数で40万人を優に超えると言われる。)

日本のアニメやマンガをテーマとしたコンベンションが現在アメリカでいくつ行われているのかを正確に知ることは難しい。例えば「AnimeCons.com」というサイトのリストに掲載されているコンベンションの数は北米に限ると186。リストに掲載されていないものもあることを考えると、実数はもっと多いだろう。

同サイト上に掲載された、2012年の参加人数の規模から見る北米のコンベンションのトップ10は、以下の通り。

1. Anime Expo
(参加人数 49,400人、カリフォルニア州/ロスアンジェルス、1992年)
2. Otakon
(参加人数 32,724人、メリーランド州/ボルチモア、1994年)
3. Anime Central
(参加人数 24,316人、イリノイ州/ローズモント、1998年)
4. Anime North
(入場券販売数 22,385枚、カナダ/トロント、1997年)
5. Anime Boston
(参加人数 22,065人、入場券販売数 21,587枚、マサチューセッツ州/ボストン、2003年)
6. Project A-Kon
(参加人数 21,982人、テキサス州/ダラス、1990年)
7. Sakura Con
(入場券販売数 20,214枚、ワシントン州/シアトル、1998年)
8. FanimeCon
(推定参加人数 21,000人、カリフォルニア州/サンホセ、1994年)
9. Anime Weekend Atlanta
(入場券販売数 13,472枚、ジョージア州/アトランタ、1995年)
10. Katsucon
(参加人数 12,614人、メリーランド州/ナショナル・ハーバー、1995年)

(参加人数と入場券販売数は、それぞれのコンベンションの発表による。第1回が行われた年と、2012年に行われた場所も掲載した。)

サイトの統計によると、コンベンション数は毎年増加している。加えて各コンベンションが発表するコンベンション参加人数も、ここ数年だけを見ても微増の傾向にある。

しかし一方で、アニメは2002年頃、マンガは2007年頃をピークとして、市場での売上高は最盛期のほぼ半分となっている。マンガは今年ようやく売上減少が底を打ったと見る向きも多く、下げ幅もある程度落ち着きを見せる兆しはあるものの、市場を見る限り「ブームが終わった」のは間違いないようだ。

マンガのジャーナリストであるBrigid Alverson(ブリジッド・アルヴァーソン)氏が、出版業界専門情報サイトPublishers Weeklyで、コンベンション参加人数と売上高との乖離について触れ(3)、「市場は以前よりもかなり小さくなり、ブームは去ったが、ファンは相当な規模で残っている。マンガ市場は維持可能なある程度のサイズで落ち着き、出版社の中にはデジタルの普及で当面若干持ち直すのではないかとの楽観的な意見を表明するところも多い」と、現在の状況について分析している。

(1)「トーレン・スミス追悼コラム」
第1回http://www.animeanime.biz/all/135191/
第2回http://www.animeanime.biz/all/135192/
第3回http://www.animeanime.biz/all/135203/
第4回 http://www.animeanime.biz/all/135211/
(2)「米国・アニメエキスポ2013 来場者大幅増で過去最高、16万人を突破」2013年7月12日 http://animeanime.jp/article/2013/07/12/14774.html
(3) “Manga 2013:A Smaller, More Sustainablel Market” April 05,2013
Publishers Weekly