北米のマンガ事情 第16回 海外マンガ出版と「バンド・デシネ」 -1- by 椎名ゆかり

文化輸出品としてのマンガ-北米のマンガ事情
第16回
「海外マンガ出版と「バンド・デシネ」」 PART1

椎名 ゆかり
アメリカの大学院でポピュラー・カルチャーを学び帰国後、マンガを専門とする出版エージェント業やアニメ、マンガ関連の翻訳者他、海外マンガを紹介する様々な仕事を行ってきた。現在は文化庁のメディア芸術を推進する部署で研究補佐員として勤務中。
翻訳マンガ:『ファン・ホーム』『メガトーキョー』他
ブログ:「英語で!アニメ・マンガ」 http://d.hatena.ne.jp/ceena/

「文化輸出品としてのマンガ-北米のマンガ事情」という題名の示す通り、毎回主に「文化輸出品」として海外で売られる日本のマンガについて取り上げている当コラム。今回は「文化輸入品」として日本で売られている海外マンガについて書かせていただこうと思う。

海外マンガブーム?

文化庁メディア芸術祭マンガ部門の大賞を受賞した「闇の国々」© 2007, 2008, 2009, 2010 Casterman, Bruxelles All rights reserved.
文化庁メディア芸術祭マンガ部門の大賞を受賞した「闇の国々」© 2007, 2008, 2009, 2010 Casterman, Bruxelles All rights reserved.

毎年年末になるとその年の話題のマンガを選ぶ「ベスト10」企画が多くの雑誌で行われる。その中のひとつ、『フリースタイル』の「このマンガを読め!」号には、年毎の目立ったトピックについてマンガ識者が語る座談会(1)のページがあり、2011年度版(2)と2012年度版(3)の2年連続で海外マンガの出版が話題として挙げられた。
具体的には、2011年度版で「海外マンガの出版ラッシュ」という小見出しに続き「今年は海外のマンガの翻訳も多く出版されました」、2012年度版でも「今回も前回に引き続き、海外マンガがたくさん翻訳されました」という発言が掲載されている。

恐らく海外マンガの出版点数が過去数年、増加傾向にあるのは事実だろう。その増加を象徴するように、昨年の11月には海外マンガに特化したイベント「海外マンガフェスタ」第1回が同人誌即売会「コミティア」と同じ会場で開かれた。同イベントでは来日した複数のアーティストと大友克洋や浦沢直樹といった日本の有名マンガ家がトークショーを行い、第1回目という未知数のイベントながら会場は予想以上の混雑となった。「海外マンガフェスタ」に合わせるように東京都内の大型書店では、海外マンガのコーナーを作り、平積みで本を並べている光景も見られた。

更に、上に挙げた『フリースタイル』誌における、マンガ批評家など50名が選ぶ「その年のベスト10」では、2011年にフランスのマンガ『アランの戦争』が第6位となって海外作品として初めてベスト10入りした。
2012年には同じくフランス人のブノワ・ペータースとベルギー人のフランソワ・スクイテンによる『闇の国々』が4位となった。2011年の「文化庁メディア芸術祭マンガ部門」でも、初めて海外の2作品(アメリカの作品『ファン・ホーム ある家族の悲喜劇』、スペインの作品『皺』)が優秀賞に選ばれ、2012年には優秀賞1作品(『ムチャチョ』(フランス))に加えて、『闇の国々』が同部門の最高の賞である大賞の栄冠に輝いている(4)

出版数の増加、「海外マンガフェスタ」の開催、海外マンガの受賞やベスト10入りなど、少なくともここ2年ほどは海外マンガが盛り上がっている印象だ。

1.座談会の出席者は、いしかわじゅん、呉智英、中野晴行 、村上知彦の4氏。
2.2011年の作品を扱った号は『フリースタイル THE BEST MANGA 2012 このマンガを読め!』(2012年1月10日 株式会社フリースタイル)
3.2012年の作品を扱った号は『フリースタイル THE BEST MANGA 2013 このマンガを読め!』(2013年1月10日 株式会社フリースタイル)
4.海外のマンガ家としては、2009年に文化庁メディア芸術祭マンガ部門でタイ出身のウィスット・ポンニミットが『ヒーシーイット アクア』で奨励賞を受賞している。

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