マンガとコミックの米国流通

日本アニメと米国カートゥーンに大きな違いが存在するように、日本マンガと米国コミックにも根本的で大きな違いが存在する。それは表現方法の違いや読者層の違いもあるが、それと同じぐらい大きな違いに商品流通を中心としたビジネスモデルがある。
こうした違いについて、アメリカのコミック、マンガ双方の大手流通業者であるデル・レイ(DEL REY)が、「DEL REYマンガニューズレター」9月号の『ふたつの市場の話:A TALE OF TWO MARKET』で触れている。

この記事で挙げられているふたつの市場とはコミックとマンガ(もしくはグラフィックノベル)のふたつの商品市場であり、それに対応したコミック専門店と一般書店の流通販路の違いである。つまり記事によれば、これまでコミックの流通はコミック専門店を通じて毎週新作が発売されるのが主流であった。しかし、それが日本マンガの出現によってこの6年で大きく変ったというのだ。つまり、コミック専門店だけでなく一般書店がグラフィックノベルとマンガを取り扱うようになったからだ。
しかし、記事によればこの日本マンガの販売も最初から順風満帆というわけではなかった。当社、米国コミックスタイルで発売された日本マンガは、書籍スタイルや流通・販売の問題から、コミック専門店に通うファンから厳しい批判に会い完全に拒絶された。
風向きが変わったのは2000年になってからで、『ポケットモンスター』や『美少女戦士セーラームーン』が大ヒットをし、TOKYOPOPがあらためて日本スタイルのマンガ出版に乗り出したことにある。つまり、当時は画期的であった書籍サイズで右開きというスタイルで、今日ではポピュラーな米国のマンガの出版形態である。そして、それが一般書店の流通に入っていったわけである。

この記事の著者が指摘するのは、米国には伝統的なコミックのためのコミック専門店とマンガを主体とするグラフィックノベルのための一般書店のふたつの流通経路があることだ。コミック書店は回転が速く毎週通う必要があるが、他方で例えばCLAMPの『TUBASA』のような作品は全米の一般的な本屋ならいつでも手に入るという。これはまた、返品不能なコミックと売れ残ったら返品可能なマンガ・グラフィクノベルのビジネスのありかたの違いの反映でもある。

現在、日本マンガの躍進がしばしば指摘されているが、これには米国のコミックが伝統的であるゆえに新市場の開拓が出来なかったことに大きな理由があるのではないだろうか。コミックはコミック専門店が扱うものとしてフォーマットやビジネス形態が特化し過ぎてしまったのだ。一方、マンガはコミックとは違うものとすることで、本屋がそれを取り扱うことについて偏見が少なかった。マンガがコミックと違ってよりストーリー重視だったことや書籍タイプの体裁がこれを助けた。
コミック専門店は熱心なマニアを抱える一方で、販売店数は一般書店のほうの数が圧倒的に多いことは言うまでもない。マンガが一般書店で扱われることで、コミック販売のビジネスモデルにも今後なんらかの変化がもたらされるかもしれない。