北米のマンガ事情 第15回 北米で日本マンガは今でも人気なのか -2- by 椎名ゆかり 

販路の数の減少による露出の低下以外にも、懸念材料がある。実際に日本アニメ・マンガをテーマにしたコンベンションに日本のアニメ・マンガ以外の作品が扱われることも多くなっているという点だ。
上で述べたように今年の7月初頭、筆者は北米最大の日本アニメ・マンガのコンベンション「Anime Expo」に5年ぶりに参加した。多くのコスプレイヤーがフロアーを闊歩する姿は5年前に参加した時と変わらなかったが、驚いたのはアメリカ産のウエブコミックやアニメーションのコスプレをしている人がとても多かったことである。

そのコミックやアニメーションが日本アニメ・マンガ好きに人たちの中で人気があることは、ネットの情報などから知っていた。しかし、日本のアニメやマンガをテーマとしたコンベンションに、ここまでアメリカ産の作品のコスプレイヤーが多いことは予想していなかった。
しかし、これは「Anime Expo」に限った話ではないようだ。「Anime Expo」と同じく日本産アニメ・マンガのコンベンションである「OTAKON」のプログラミング・ディレクターであるジム・ヴォルズ氏が、「Anime News Network」のポッドキャストに出演した時 、日本産でない作品をコンベンションで取り上げることについて質問され、扱いに苦慮していることを告白している。ヴォルズ氏は「OTAKONのメインはあくまで日本産ポップカルチャーである」としながらも、排他的になることへの懸念を述べ、他のアジア産の作品も扱うことに理解を求めていた。

日本産と海外産が混じっていると言えば、マンガブームが始まるとアメリカでは「マンガ(MANGA)」という言葉には日本産でない作品も含まれるようになった。人気が出ると当然「MANGA」を描きたいと考える人も増えれば、売りたいと思う人も増える。その結果現地の作家が「MANGA」を描き、出版社も自社の作品に「MANGA」というラベルをつけて売るようになる。
ブーム以前は、「MANGA」と言えば日本産を指したが今では日本産以外でも「MANGA」と呼ばれることもある。人気が上がって人材が集まるとその分野の多様性が色々な点で広がるのは、ある意味自然なことだ。

日本以外の作家が増えるのは「カテゴリー」や「ブランド」としてのマンガの活性化にも繋がる。日本人として「マンガと言えば日本」と思いたい気持ちがあっても、国境を越えて多くの人がマンガを愛し、描きたいと思うことはそのメディアの繁栄に重要な意味を持つ。仕事で個人的に、日本マンガ的な絵柄で作品を発表する海外アーティストと交流を持ってきたが、特に昨年から今年にかけてその絵柄を変えようとするアーティストが増えた印象だ。
先月もベネズエラ出身のアーティストと東京で会った時、日本マンガ的な絵柄を西洋的な絵柄に変える仲間が多いという話を聞いた。特にプロとしてやっていきたいと強く思う人ほどその傾向が強いと言う。
日本におけるマンガの質やその文化としての隆盛は、プロもアマも含めて莫大な数の描き手に支えられている部分も大きいことを考えると、絵柄の変更は世界全体における「カテゴリー」または「ブランド」としての「MANGA」にとって残念な話である。

以上ここまで、北米のマンガ人気に対する筆者の懸念をざっと羅列してきたが、これらの懸念は本当にただの杞憂に過ぎないかもしれない。少なくともネット上には、日本マンガの読者は数多くいる。たとえ、以前と比べてその数が増加したのか減少したのかを正確に知ることは不可能だとしても。
 
PART3 <デジタル市場>へ続く