デジタル・フロンティアが語る 『おおかみこどもの雨と雪』と『サマーウォーズ』における3DCG表現の違いとは 前編

デジタル・フロンティアが語る
『おおかみこどもの雨と雪』と『サマーウォーズ』における3DCG表現の違いとは
前編

 デジタル・フロンティアは、7月6日、京都の立命館大学において、『アニメーションとCGの融合~デジタル・フロンティアにおけるCG制作過程~』と題し、細田守監督の最新作『おおかみこどもの雨と雪』と、同監督による『サマーウォーズ』における3DCG表現などについて語った。この講演は、同学映像学部においておこなわれているクリエイティブリーダーシップセミナーの一貫。
 対象が主に大学一年生であることから、CG制作の概要についてもかなりの時間をさいて講演していたが、本稿においては、『おおかみこどもの雨と雪』並びに『サマーウォーズ』に関する講演内容を中心にお届けする。

■ デジタル・フロンティアと細田守監督の出会い

 まず冒頭で、デジタル・フロンティア専務取締役でプロデューサーも務める豊嶋勇作氏が細田守監督と同社がプロジェクトを進めるに至ったきっかけについて説明した。
 豊嶋氏によると、12年前、細田監督が、東映アニメーション時代に監督を務めていた、『デジモンアドベンチャー3D デジモングランプリ!』をサンリオピューロランドで公開するために3DCGを作成しようとしたときに出会ったという。これをきっかけに『サマーウォーズ』を細田監督が制作する際に、デジタル・フロンティアの名が上がり、現在にまで至っているとのこと。
 細田監督は、マッドハウスから独立し、新たにスタジオ地図を立ち上げており、『おおかみこどもの雨と雪』もこの新鋭スタジオによるもの。そのような中、デジタル・フロンティアをマッドハウス在籍時と同様にパートナーとしてアニメ制作に取り込んでいる所に、双方の良好な関係が垣間見える。

■ 『サマーウォーズ』における仮想空間OZの徹底的な作り込み

 『サマーウォーズ』におけるCG制作については、ディレクターをつとめる堀部亮氏が解説した。堀部氏は冒頭で映画作品におけるCG制作の役割を全般にわたって説明。それを踏まえたうえで、『サマーウォーズ』ならではの特徴的なCG制作プロセスについて言及した。
 一般的にアニメ制作の工程におけるCG制作スタジオ側のディレクターの役割は、「監督のイメージを如何に理解し、社内のデザイナーと共有するかだ」と堀部氏。そのため、全行程にわたり「監督との打ち合わせ→社内共有、制作された素材のチェック→監督による確認」の流れを繰り返したという。
 CG制作についてはキャラクターのモデリングから始まり、絵コンテをもとにオブジェクトをシーン内に置き、その後カメラを設定するレイアウトをしつつ、車やメカ、キャラクターの動きを手づけ、または、モーションキャプチャを用いてつくりあげる。それらに加え、爆発、煙、水しぶきなどの素材を特殊効果として作成。最終的にはこれら全ての素材を、質感設定やライティングをもとにレンダリングし一つにつながった連番の素材へと作り上げていく。その後、実写の場合は、合成工程が、フルCGの場合は、キャラクター、背景ならびにエフェクトのシーンを別々に出して最後に合成する。これによって個別の調整がしやすくなるからだと堀部氏。
 ただし、今回の課題である『サマーウォーズ』や『おおかみこども雨と雪』のようなアニメーションの場合は、背景美術や作画との合成が出てくる。この合成作業が修了してから編集作業を行い全作業工程が終了する。

 『サマーウォーズ』でデジタル・フロンティアが担当したのは、仮想世界OZのシーン。この電脳空間のシーンは映画全体の3分の1に相当すると堀部氏。今回の講演では、その中から、特に制作のうえでこだわった「アバター」並びに「クライマックスにおけるラブマシーン(主人公に敵対する巨大化したアバター)」の制作秘話を披露した。
 アバター制作について堀部氏は、様々なアバターが生活空間を持つ仮想空間OZを構築するうえで、非常に多くのアバターを表現する必要があったと制作時に直面した課題を挙げ、その解決策として、デジタル・フロンティアに所属するアーティスト全員に2体ずつ、3Dキャラクターとそのモーションの作成を依頼したとのこと。更に、これらのアバターを動かすうえでは、群衆シミュレーションテクノロジーのMassiveを起用。これにより、群をなすアバターが個々に「生活を営んでいる」というOZの世界の構築を実現できたと堀部氏。

 更に重要だったのが、CGアバターのレンダリング。細田守作品の法則の1つである「現実世界から別の世界にいくと輪郭線が赤色になる」をCGパートでも忠実に守るため、赤の輪郭線を別途追加しているということ。これによりCGパートとセルアニメのパートにおける表現の統一を図った。
 また、クロースズアップでのアバターのリアクションについては、たった2秒のカットでもそのキャラクターにあったリアクションを表現出来るように注意を払ったとのこと。ここからは、CGアーティストとしてのプロ意識が実感出来る。

 一方、クライマックスである巨大ラブマシーンの登場シーンについては、シナリオで同シーンについて読み込んだ当初から巨大なモンスターが出るのは分かっていたものの、実際の絵コンテを目にするまでここまでスケールが大きいシーンだとは思わなかったと堀部氏。更に設定では、「吸収されたアバターは1億以上」と聞かされ途方にくれたと言う。
 とにかくそこまで巨大になった存在の動きをどうするべきか様々な資料を探りながら、イワシの群れの映像にいきついたと堀部氏。「コレだ!」と思い、つくりあげたのがテストバージョンになったとのこと。数多くのアバターを表現するためにパーティクル技術を採用。それぞれが群としてイワシの群れのような動きをしながら、ラブマシーン本体の動きにあわせて動いている。ただその動きが速すぎてスケール感が出なかった事から動きを減速したことでよりスケール感を出す事に成功。
 このように、多様な資料の研究や、自然観察を経て、クライマックスにふさわしいシーンを生み出したのだ。

■ 後編 『おおかみこどもの雨と雪』が目指す、2Dと3DCGの完全融合 へ続く