北米のマンガ事情第13回 MANGAの描き方を学ぶ アメリカでの需要 PART3

文化輸出品としてのマンガ-北米のマンガ事情
第13回
MANGAの描き方を学ぶことに対するアメリカでの需要について PART3

椎名 ゆかり
アメリカの大学院でポピュラー・カルチャーを学び帰国後、マンガを専門とする出版エージェント業やアニメ、マンガ関連の翻訳者他、海外マンガを紹介する様々な仕事を行ってきた。現在は文化庁のメディア芸術を推進する部署で研究補佐員として勤務中。
翻訳マンガ:『ファン・ホーム』『メガトーキョー』他
ブログ:「英語で!アニメ・マンガ」 http://d.hatena.ne.jp/ceena/

■ 「マンガの描き方」ワークショップ

今回のワークショップは、マンガの描き方動画販売サイト「侍マンガ道場Samurai Manga Workshop」(http://manga-drawing.net/)(運営オフィス・イセプロ)の方と知り合ったことをきっかけに、筆者が海外でのワークショップ開催の話を持ち込んで実現した。
講師はマンガの描き方を教えて10年以上のキャリアを持つ、大阪芸術大学キャラクター造形学科の川田潮准教授。通訳兼パネリストとして同席したのは、マンガ・スタイルの作品でアメリカでデビューし、後に講談社『モーニング・ツー』で連載していたフェリーペ・スミス氏である。

ワークショップはコンベンション期間中の土曜日と日曜日に1回ずつ、ほぼ2時間ほどの長さで2回行った。
土曜日の回は11時から2時間半。日曜日の回は「アニメ・エキスポ」側の手違いで朝の9時開始という早い時間に直前で変更になり、「アニメ・エキスポ」のガイドブックやウエブサイトのスケジュール表にワークショップの予定が掲載されないという事態になってしまった。そのため参加人数が少ないことを覚悟していたが、結果的に両方の回ともに、200名入る部屋がほぼ満杯となった。特に1回目は用意された椅子に座りきれず床に座っての参加者も多くいた。

ワークショップ自体は、実際に大学で教鞭をとった経験もある「侍マンガ道場」スタッフが構成したものである。進行は以下の通り。

1)登壇者の挨拶。(5分)
2)講師川田先生による講義。(30分)
3)ドローイング・タイム。
(紙、鉛筆、消しゴムを配布し、講義を参考にして実際に絵を参加者に描いてもらう。)(20分~30分)
4)描いた絵を回収。
5)スミス氏のトークタイムと質問コーナー。
(その間、川田先生が講評のために参加者の絵をチェック。)(20分)
6)絵の講評。(30分)
7)質問コーナー。(20分)

回収したアンケートによると、参加者の男女の比率はほぼ半々で、年齢層は16歳~20歳が最も多かった。これはアメリカでのマンガ読者層と言われるものにほぼ合致する。ただし、ワークショップ参加者には下は7歳から上は61歳まで、幅広い年齢の方がいた。

個人的に驚いたのは、生徒の熱心さである。講義中も絵を描く間も参加者からは具体的な質問が相次いだ。しかも、描いている間は質問者以外、部屋が静まりかえり熱心に絵を描き続け、学ぶことへの情熱が感じられた。
アンケートで「普段マンガを描いている」と「プロのマンガ家になりたい」と答えた人がそれぞれ半数以上だったのも頷けた。

通訳兼パネリストとして参加したフェリーペ・スミス氏も、「今までコンベンションで多くのパネルやワークショップに出たが、このワークショップの参加者は熱心で驚いた」と、しきりに感心していた。

筆者は、今回以外に海外で「マンガの描き方」ワークショップを開いたことがないので、他と比べることができないが、「アニメ・エキスポ」のスタッフから聞いたところでも、今回のワークショップはかなり成功したと考えていいだろうと思う。

成功理由をいくつか考えてみると、まず、参加者の熱心さについては、「アニメ・エキスポ」に参加する人はそもそも「マンガの描き方」に興味を持っている人が多い、という点が挙げられる。加えて、教える経験の豊富なスタッフの方が考えたワークショップ構成が良かったことも一因だろう。参加者が描いた絵を先生が講評する時間があったのも、参加意欲を高めたかもしれない。

次に、ガイドブックやウエブサイトに掲載した「ワークショップ」の説明文もアピールポイントになった可能性がある。説明では以下の3点を主に強調した。
①本人の先生が、日本の大学で教えているやり方で教える。
②そのため、マンガ家志望の日本人学生と同じことを学ぶことができる。
③日本人の学生と同じように学べるめったに無いチャンスである。

「アニメ・エキスポ」に来ている人たちは親日家が多く、マンガと日本を関連づける人が多いことを前提として、上記の3点を強く打ち出したのである。

最後に、アメリカで「マンガ・スタイル」のMANGA家としてデビューし、日本の講談社『モーニング・ツー』で連載を持ったフェリーペ・スミス氏が参加したこともポジティブに作用したと思う。
スミス氏は大人気作家とは言えないが、マンガ・スタイルで作品を描く海外の作家にしてみれば、彼は日本の大手出版社でデビューするという夢をかなえたマンガ家である。アンケートの参加理由に、スミス氏の話が聞きたかった、と答えた人もいた。

■ PART1 「アニメ・エキスポ」とは
■ PART2 「マンガの描き方」を学ぶことに対するアメリカでの 需要
■ PART3 「マンガの描き方」ワークショップ
■ PART4 MANGAという文化