北米のマンガ事情第13回 MANGAの描き方を学ぶ アメリカでの需要 PART2

文化輸出品としてのマンガ-北米のマンガ事情
第13回
MANGAの描き方を学ぶことに対するアメリカでの需要について PART2

椎名 ゆかり
アメリカの大学院でポピュラー・カルチャーを学び帰国後、マンガを専門とする出版エージェント業やアニメ、マンガ関連の翻訳者他、海外マンガを紹介する様々な仕事を行ってきた。現在は文化庁のメディア芸術を推進する部署で研究補佐員として勤務中。
翻訳マンガ:『ファン・ホーム』『メガトーキョー』他
ブログ:「英語で!アニメ・マンガ」 http://d.hatena.ne.jp/ceena/

■ 「マンガの描き方」を学ぶことに対するアメリカでの 需要

今回、「アニメ・エキスポ」で「マンガの描き方」ワークショップを開きたいと考えたのは、以前から日本のマンガのスタイルでマンガを描くことに対する現地のファンの興味の高さを感じていたからである。
このコラムで何度かとりあげているが、アメリカにおけるマンガ/コミックス市場は日本産、アメリカ産の両方を合わせても日本とは比べものにならないほど小さい。にも関わらず日本同様、マンガ読者の中には描くことにたいして強い興味を抱いている人が多くいる。

海外でも日本のマンガやアニメを見て好きになった人の中には、その絵の真似をして描きたいと思う人が必ず出てくるのである。
これはきちんと調べたことではないので、あくまでも筆者の印象によるものだが、アメリカやフランスの作品と比べた時、そのシンプルな線ゆえなのか、日本のマンガには「わたしにも描けるかもしれない」と思わせる何かがあり、ある意味その敷居の低さも、人気の理由のひとつとも思える。

もちろん、読むことだけを楽しんで実際に描いたりしない読者も多くいるが、少しでも描くことに興味がある読者にとって、結果的に自己表現、またはコミュニケーション・ツールとしてのメディアになり得るという側面も、マンガの大きな魅力のひとつとなっている。
それはネット上に無数に見られるマンガ・スタイルで描かれたアマチュアの作品や、日本のpixivサイトのアメリカ版とも言えるイラスト投稿SNSサイトdeviantARTを見ても明らかだ。

そして、アメリカのマンガ市場の小ささを考えると、その売上はともかく、「マンガの描き方」関連本の数の多さは驚きである。中には「マンガの描き方」本を出したことで(マンガファンのコミュニティ内で)有名なった現地の作家もいる。
更には、アメリカでデビューしたものの作品はあまり売れなかったが、各地の図書館やコミュニティ・センターで巡回ワークショップをすることを主な仕事にして成功して注目を集めている日本人マンガ家もいる。

筆者自身が、日本マンガのスタイルで作品を描く海外のマンガ家たちと日本をつなぐ仕事をしていたこともあって、直接アーティストたちから「日本マンガのスタイルのマンガの描き方を学びたい」という話を何度も聞いた。
考えれば当たり前のことだが、マンガを読むことが好きな人の中にはマンガを描きたい人もいて、同時にマンガの描き方を学ぶことに対する需要も存在するのである。これはアメリカに限ったことではなく、日本のマンガがある程度人気がある国では同じ傾向があるようだ。

そしてその需要に応える「マンガの描き方」ワークショップは、これまでも海外の日本アニメ・マンガ関連のコンベンションやその他の場所で行われてきた。
現地で日本のマンガスタイルで作品を描く作家が行ったものもあれば、日本からも、例えば京都精華大学が以前、フランスでのアニメ・マンガ等の日本のポップ・カルチャーのイベント「ジャパン・エキスポ」でワークショップを行ったことがある。

それでも筆者が自分でワークショップを開いてみたいと思ったのは、その様子を実際に体験したいと思ったからである。ワークショップの参加者がどのような人なのか、どういう人がマンガを描きたいと思っているのか、どういうことを学びたいと思っているのか等、知りたいことはたくさんあった。

■ PART1 「アニメ・エキスポ」とは
■ PART2 「マンガの描き方」を学ぶことに対するアメリカでの 需要
■ PART3 「マンガの描き方」ワークショップ
■ PART4 MANGAという文化