日中韓がコンテンツ市場統計を解説 市場規模4:2:1

伊吹英明 経済産業省商務情報政策局文化情報関連産業課長

3月26日に、東京千代田区のホテルモントレ半蔵門にて、「日中韓3ヵ国のコンテンツ市場最新動向と今後のビジネス展開」と題したセミナーが開催された。セミナーは、経済産業省のメディア・コンテンツ課が主催するものである。経済産業省は2009年の日中韓・文化コンテンツ産業フォーラムの際に、東アジア3ヵ国のコンテンツ市場統計データの整備で合意をしている。その成果を一般に公表する場となった。
セミナーの挨拶に立った商務情報政策局メディア・コンテンツ課長の伊吹英明氏は、お互いの国のマーケットについてのデータが取れていないことから今回の統計整備始まったとし、合意を受けて比較可能なデータが取れるようになったことを評価した。また、これがビジネスでの交流の第一歩になると、今後の産業展開への期待を語った。

[コンテンツ市場規模 中国は日本の半分、韓国は1/4]
各国の最新動向を説明したのは、北京大学文化産業研究院副院長の向勇氏、韓国コンテンツ振興院産業分析チーム統計事業担当パク・ソンウォン氏、デジタルコンテンツ協会研究主幹の星合信宏氏である。市場調査に実際に携わっている立場からの報告だった。
それぞれの数値はいずれも興味深いものだった。特に中韓については、これまでどの数字をスタンダートにしていいのか分かり難かったなかで、比較対象となる数字として提示されたことの意味は大きい。
それでも中国のコンテンツ統計には教育が含まれていることや、韓国の統計はコンテンツの輸出入の金額に力点が置かれていることなど留意すべき点は多い。そうした違いを理解したうえでの比較は有益だろう。

星合氏はそれを踏まえたうえで、3ヵ国のコンテンツ産業の市場の特徴を提示した。もっとも注目されたのは、3ヵ国のコンテンツ産業の市場規模で、2010年で日本が1374億ドル、中国が775億ドル、韓国が318億ドルとなる。中国が日本のおよそ半分、韓国がさらにその半分程度であることが大まかに掴める。
さらにパッケージ商品が強い日本、放送が強い中国、ネットが強い韓国といった違いが分かる。また、ゲーム市場では中韓ではオンラインゲームが圧倒的なシェアを持つなど、日本との違いも指摘された。これまでも指摘されていたことではあるが、数字として理解可能になっている。

浜野保樹氏

[東アジアの緩やかな融合でハリウッドに対抗できる:浜野氏]
この日のセミナーは、これ以外にも興味深い講演が行われた。ひとつは東京大学大学院教授の浜野保樹氏による基調講演「アジアから世界市場」、もうひとつはアニメ製作会社スタジオディーン野口和紀代表取締役による特別講演「日中韓アニメビジネスの展開について」である。

浜野氏はコンテンツという言葉を「文化の産業化」という視点で捉えて、その潮流がアジアに向かっているとの考え方を述べた。またそうした流れはデジタル化とネットワーク化により、既存の物流ルールが無力化し、国際流通がリセットされたことで強化されているとの考えだ。
そうした中で日本のポジションを、評価は高いがお金を稼いでいない、また実写の海外展開は厳しいがマンガとアニメーションの受容性は高いと説明する。こうした流れを引き継ぐものとして初音ミクのようなコンテンツに今後の可能性を見ている。
アジアとの関係では、緩やかな融合によって投資拡大が出来る、これによりハリウッドなどに制作規模で対抗できると話す。同時にそれはあらゆるレベルでの共同製作につながるとの見解だ。

[中国は技術で日本に匹敵、課題はプロデュースとディレクション:野口氏]
野口氏の講演は、中国との実際のビジネスの経験から出たものだった。アニメーションの分野では、すでに日本は生産量で中国に抜かれているが、制作技術でも中国は日本に追いついていると指摘する。
ただし、プロデューサーとディレクターは不足しており、今後はこの分野での養成が鍵になると指摘する。今後中国は、アニメーション分野でもより大きな存在になるとの考えだ。

セミナーは全体でおよそ3時間にも及んだが、それぞれに発見があり、有意義なものであった。発表された3ヵ国の統計数字とその分析は、今後、資料としてまとめられることになりそうだ。
[数土直志]