LLP製作委員会はクリエイターを救うか

行政によってコンテンツビジネスの強化が主張されるようになって既に5年ほどが過ぎた。色々と批判はあるが、経済産業省や日本貿易振興機構がコンテンツビジネスの海外市場開拓や新たな資金調達手法の開発においてある一定の役割を果たしてきたのは事実である。そうした分野ではビジネス面において、ここ数年で大きな飛躍が見られた。
 しかし、そうしたマクロ面での改善の一方で、特にアニメ制作を中心とした部分で、制作現場に還元されない利益システムやクリエイターの才能に十分な対価が払われていないといった問題がしばしば指摘されている。

 6月1日に東京・青山でクリーク・アンド・リバー社、C&R総研の主催、経済産業省の後援で開催された「コンテンツ製作・制作における契約のあり方」と題したセミナーでは、そうした問題に新たに目が向けられる兆候が感じられた。
 主にコンテンツプロデューサーに向けられたこのセミナーでは、第1部で『クリエイターと法制度~下請法とどう付き合うか』という内容で、上原伸一氏が親事業者から下請事業者を守る下請法が情報コンテンツにいかに適用されるかを説明した。また、第2部では、経済産業省の和久田氏と㈱シンクの森氏が新しく導入されるLLP(有限責任組合)を利用した製作委員会のあり方を、寺澤氏がコンテンツ関連の契約書を作成する際の制作側の留意点を説明した。
 こうしたセミナーが開かれること自体、プロダクションやクリエイターの問題が深刻に受け止められつつあること前向きに受け取ってよいだろう。また、コンテンツビジネスの仕組みが叫ばれる中で、何よりも大切なのは優れたコンテンツを生み出される環境であることが再確認されて来たといえる。

 特に今回のセミナーで気になったのは、森氏が説明されたLLPを使った製作委員会である。従来の任意投資組合を利用した製作委員会は投資リスクの分散やばらばらになりがちなビジネスをまとめるという利点により、これまで頻繁に利用されてきた。しかし、一方で作品の持つ各種権利が製作委員会の買い上げになる点や無限責任のため純粋な投資者である第3者が出資し難い点などの欠点もあった。
 新設されるLLPは事業に対して有限責任である点、事業の収益を出資比率に関係なく配分出来る点で従来の製作委員会より優れていると説明された。有限責任であることは、製作委員会に第3者の参加を促すことが出来る。また、出資比率に関係なく分配金をだせることで、資金力はないが制作技術や才能を持つ会社や個人に重点的に利益を還元することが可能になる。
 つまり、これまでは出資金に応じてしか出せなかった配当を、契約によって1%の出資金の制作会社にも20%の配当を出すといった傾斜配分が可能になる。優れた品質を持つ制作会社や人気のあるクリエイターには今後有利に働く可能性が高い。
しかし、一方で本当にそうした仕組みだけで理想どおりにビジネスが進むのかといった疑問も当然ある。そのための下請法の理解であり、契約の仕方の理解ではあるが、結果が出るまでにはまだしばらく時間がかかりそうである。
[数土直志]

コンテンツ製作・制作における契約のあり方
 1部『クリエイターと法制度~下請法とどう付き合うか』
  上原伸一氏:文化審議会著作権文化専門委員
 2部『クリエイターのための資金調達と契約のあり方』
  和久田肇氏:経済産業省商務情報局文化情報関連産業課 課長補佐
  寺澤幸裕氏:弁護士 太陽法律事務所パートナー
  森祐治氏:(株)シンク 代表取締役
  モデレター:清田智氏(株)クリーク・アンド・リバー/(株)C&R総研

日時:2005年6月1日 
場所:東京、青山、草月ホール
主催:クリーク・アンド・リバー社、C&R総研 後援:経済産業省