金融技術は何を変えたのか?レポート

シンポジウム『コンテンツ、今そこにある危機』
「金融技術は何を変えたのか?」
10月22日 六本木アカデミーヒルズ
井本満氏(ノース・スターズ・ピクチャーズ 代表取締役)
亀田卓氏(電通 エンタテイメント事業局)
土井宏文氏(ジャパンデジタルコンテンツ信託 代表取締役社長)
主催:経済産業省、映画産業振興機構

 実は今回のパネリストの亀田氏と土井氏は、このシンポジウムの2日前に行われた東京コンテンツマーケットでもコンテンツファンドをテーマに講演会をしている。しかし、前回は主にクリエーター向け、今回は映画関係者向けでありかなり異なった話題が中心となった。
 前回の講演がコンテンツファンドは何かといった大枠の話だったのに対し、今回はコンテンツファンドの実際の仕組みや理念、あるいは経済的な効果といった側面が中心となった。それは、今回のシンポジウムに、金融業界出身で先日『北斗の拳ファンド』の設立を発表した井本満氏が加わったことも大きいだろう。

 シンポジウムは、まず、亀田氏がアニメやコンテンツといった産業が持つ他の産業とは違う難しさを、最近増加しているM&Aを例に説明するところから始まった。亀田氏によれば、企業の資産や価値が社員や従業員、クリエーターであるコンテンツ企業を相手に敵対的なM&Aは成立しない。つまり、仮に会社を買収したとしても、優秀な社員や人材は簡単に流出してしまう危険性があるからだ。また、人が中心であるため事業の効率化や合理化が難しい産業だと指摘する。
 土井氏はそうした状況があるにもかかわらず、この特殊な産業の現場を判った人がビジネスの前面に出て来ていないと述べた。それが、日本のリィーディングインダストリーになる力があるにも関わらず、日本のコンテンツ産業の成長が他国に較べて遅れている理由だという。
 井本氏は金融とコンテンツを結びつけることで、産業自体を大きく変えられる可能性があるのでないかと考えている。ただし、コンテンツ企業に資本や金融の論理で強引に押し切るだけでは、コンテンツ企業にネガティブの思わる可能性があるので注意が必要だとした。それは、亀田氏が述べた人材が企業価値というコンテンツ企業の独自性にまたつながる。

 その後、シンポジウムの内容は、井本氏の会社ノース・スター・ピクチャーズが手掛ける『北斗の拳ファンド』やJDC信託が手掛ける『シネ・カノンファンド』の仕組みや考え方に移った。また、商品ファンド法に代わってコンテンツ投資を包括する仕組みとして考えられている投資サービス法の是非、LLP(有限責任投資組合)の可能性など話題は幅広く展開した。
 こうした中で印象的だったのは、土井氏のコンテンツファンドにリスクの高い作品ばかりが集まりがちになると指摘されることについての反論である。土井氏によれば、ここ数年で状況は変化しつつある。それには、投資資金のリスク分散とレバレッジ効果という考え方のためだという。
 つまり、10億円の資金の必要な作品があり、10億円の資金が手元にあったとしても、外部から10億円の資金が導入出来れば、2本の作品が制作出来る。それは、リスク分散になるし、少ない資金で大きな効果を期待出来る。10の資金から100のものを作り出せるという考え方である。

 最後に、今回のシンポジウムの議題『金融技術は何を変えたのか?』について、シンポジウムの結論は、金融技術はコンテンツをまだ変えていない、これからまだまだ変わって行くというのが結論だった。
[数土直志]