プロダクションI.G上場と有価証券報告書

 企業が作成する有価証券報告書は、本来は投資家が企業を知るためのものである。しかし、その内容の正確さや深さから投資家でなくても、その企業や企業の関連業界の状況について知る資料になる時がある。
 11月17日に、ジャスダック市場に上場申請が承認されたプロダクション I.Gの『上場のための有価証券報告書』もそのひとつである。アニメーションビジネスの仕組みは複雑で、業界構造が活字としてまとめられることが少ない。
 そうした中で、有力アニメ制作会社のひとつであるI.Gが有価証券報告書で説明する自社の事業説明は、一般的なアニメビジネスの枠組みを理解するにも役に立つ部分が大きい。それは、制作事業のワークフローや契約の状態、資金の流れなどあまりメディアに報じられることのない部分などである。
 企業にとっては、自社の現状を丸裸にされてしまい怖いものでもある。しかし、そこまで公開出来るという事実によってその会社に対する信頼感も出て来るといえるだろう。

 また、やはりあまり語られることのない企業の方向性・状況などについても知ることが出来る。今回のI.Gの提出した『上場のための有価証券報告書』からも、これまであまり触れられることのなかった同社の方向性・状況が見て取れる。その中から幾つか気になった点をピックアップしてみた。

■ 版権ビジネスの大きさ
 I.Gによれば、同社の2次利用における収益分配と窓口手数料は、平成17年5月期で売上高の31.0%とされている。事業における版権事業の割合が高いのは東映アニメーションやGDHも同様である。アニメ制作会社が安定したビジネスを行なうには、版権事業を獲得出来るかが大きなポイントといえるようだ。
■ あらたな大型劇場映画の可能性
 有価証券報告書によれば、『イノセンス』のような大型劇場映画を制作した場合に会社の業績が大きく変動するリスクに言及している。また、今後も『イノセンス』と同規模、もしくはそれを上回る規模の劇場映画を制作する可能性があるとしている。
■ 攻殻機動隊の存在感の大きさ
 売上高に占める『攻殻機動隊』関連作品の割合は、15年で21.6%、16年で50%、17年で34%である。I.Gにおける同作品の重みをあらためて感じさせる。ひとつの作品に依存するリスクの高さはあるが、同時に大ヒット作を持てるかどうかが会社の命運を分けるアニメビジネスの特徴を示しているだろう。
■ マニア向けから一般層へ
 同社はマニア層への依存が高いとして、キャラクタービジネスの展開できるキッズ向けを含んだ一般アニメユーザー向けの作品を複数企画しているとしている。今後、これまでのI.Gとは異なった幅広い作品が公開される可能性もありそうだ
[数土直志]