北米のマンガ事情第10回 『セーラームーン』が北米でなぜ今売れているのか。

文化輸出品としてのマンガ-北米のマンガ事情-
第10回 『セーラームーン』が北米でなぜ今売れているのか。



椎名 ゆかり
アメリカの大学院でポピュラー・カルチャーを学び帰国後、マンガを専門とする出版エージェント業やアニメ、マンガ関連の翻訳者他、海外マンガを紹介する様々な仕事を行ってきた。現在は文化庁のメディア芸術を推進する部署で研究補佐員として勤務中。
翻訳マンガ:『ファン・ホーム』『メガトーキョー』他
ブログ:「英語で!アニメ・マンガ」 http://d.hatena.ne.jp/ceena/



あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。
今年も相変わらず北米のマンガ状況について書いていきたいと思います。お付き合いいただけると嬉しいです。

2011年7月のサンディエゴコミコン。原作者・武内直子さんの描き下ろし表紙が公開された;

昨年9月にKodansha USAより発売された『美少女戦士セーラームーン』の英語版が売れ続けている。発売前から、同書に対する取次の事前注文(プリオーダー)がかなりの数になっているらしいとは噂されていたが、発売が始まると『ニューヨーク・タイムス』の「ベストセラーリスト」のMANGA部門で10月第1週目から3週連続1位(最初の2週は『コードネームはセーラーV』と共に1位、2位を独占)となったのを皮切りに5週連続で10位以内をキープ。11月に出た2巻も発売早々に1位になるなど、いきなりその人気の高さを示した。

大手書店チェーンBordersが昨年事実上倒産した結果、『ニューヨーク・タイムス』の「ベストセラーリスト」には代わりにDiamond(コミックス専門店向けディストリビューター)の売上が入るようになったが、北米における最近のマンガ売上の低下を受けて、恐らく今は以前より少ない売上部数でリストにのることができるのではないかと思う。
しかし、それでもこれだけ上位を維持し続けているのは凄い。そう思っていたところ、9月発売開始からたった4ヶ月間の売上部数で、BookscanによるMANGAに限定しないコミックスの単行本(グラフィック・ノベル)売上が2011年の年間第2位となったらしい。『少年ジャンプ』の人気作品『NARUTO』『Bleach』の最新刊を抜いての2位である。ちなみに1位は、ケーブルTVで放送され大ヒットとなったテレビドラマの原作である『ウォーキング・デッド』(邦訳版は飛鳥新社から発売中)。

アメリカで売行きの良い日本のマンガ作品は、手塚治虫などの一部のタイトルを除けば、主に日本で近年刊行された作品だ。『少年ジャンプ』の作品や『魔法先生ネギま!』『黒執事』『BLACK BIRD』など現在連載中の作品も多い。そんな中、日本では1992年に第1巻が出た『セーラームーン』が売上の上位に来たのは、同作品の根強い人気を物語っている。

『セーラームーン』の北米での人気については個人的にとても興味があり、その発売には注目していたのだが、あらためてその売行きには驚いた。今回のコラムでは昨年の9月に出版された『セーラームーン』について、その背景をまとめてみたい。

次ページに続く

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