多様化するアニメと劇場の関係 2012年劇場アニメは?

[個性的な作品群: ヱヴァ、細田守、神山健治] 

 2012年の劇場映画の最大の注目は本数でなく、作品そのものにある。近年でも、とりわけ個性的な作品が揃ったからだ。アニメ史の金字塔ともいえるエヴァンゲリオンシリーズで、2007年にスタートした『ヱヴァンゲリオン新劇場版』の第3作目「Q」の公開は、大きな事件である。第1作、第2作が大ヒットしているだけに、ビジネス的にも期待が大きい。
 もうひとつ大きな話題は、7月公開が予定されている『おおかみこどもの雨と雪』だろう。『時をかける少女』、『サマーウォーズ』で国内外の大きな評価を勝ち取った細田守監督の3年振りの新作である。
 前作『サマーウォーズ』では、テレビ発でもなく、毎年の定番作品でもなく、スタジオジブリ作品でもない劇場アニメとしては驚異的な16億円を超える興収を叩き出した。7月公開の大型公開は、製作がスタジオジブリ作品に続く国民的なアニメを目指しているのではと考えるのは穿ち過ぎだろうか。

 細田監督と同世代の神山健治監督の新作『009 RE:CYBORG』も話題作だ。石ノ森章太郎原作の名作『サイボーグ009』を、2012年にどの様なかたちで蘇らせるのかが注目される。映画は全編がセルタッチのフルCGアニメーションになるという。さらにアジア同時公開など、新しい試みも多い。作品や作品と観客の関係で新たな挑戦を続ける神山健治監督だけに、2012年に外せない映画だ。
 『009 RE:CYBORG』と同じプロダクション I.Gが制作する作品には、4月21日公開の沖浦啓之監督の『ももへの手紙』がある。日本を代表するアニメーターが集結し、制作7年をかけた大作だ。角川映画配給で、300館を超える大規模な全国公開が予定されている。

 プロダクションI.G作品は、6月2日公開の『劇場版 BLOOD-C The Last Dark』もある。劇場映画に強いとされてきた同スタジオの本領発揮となる。『BLOOD-C』は、2000年にプロダクションI.Gが製作した『BLOOD THE LAST VANPIER』の系譜にある。同作はプロダクションI.G内で押井守監督が行ったアニメ企画講座の成果として誕生した。
 神山監督、沖浦監督も、本作の制作に参加しており、映画『人狼-JINROU-』などでも押井監督と関わりが深い。どの作品も押井守監督の系譜にありつつ、いずれの作品にも押井監督が参加しない興味深いかたちになっている。

 3つの作品が、押井作品に替わる存在だとすれば、スタジオジブリ作品のない年に、夏の大型映画として公開される『おおかみこどもの雨と雪』の存在も意味深だ。2012年は、日本の劇場アニメの歯車がひとつ回る年になるのでないだろうか。

[台頭するフルCGアニメーション]

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