CEDEC2011レポート アニメとゲームをつなぐ架け橋    ――金田伊功氏の業績を中心に 1

《聖剣伝説4(2006年)》
 PS2のアクションRPG。『半熟』の仕事は金田氏がアニメ時代につちかってきたスキルの延長線上にあるが、この作品では「フェイシャルセッティング」というCGキャラの表情を決めるという、一歩踏み込んだ仕事となった。アニメのキャラクター表情集のように、「こういう性格なら、こういう表情をする」という手描きスケッチを出した他、シネマティクスという3DCGのリアルタイム演出シーンでCGのモデラーの骨づけや動く部分のセッティングの監修を20名以上のキャラに対して行った。
 金田アニメはメカアクションが注目されがちだが、『風の谷のナウシカ』に参加したときに宮崎駿監督から「いちばんナウシカらしさが出ている」という評価を得たほど、キャラのニュアンスをつかむ才能にもたけている。設計図的な「似てる・似ていない」を超えて演技の中で「こういう人なんだ」ということを伝えるのはアニメーターの重要な仕事である。その卓越したスキルが活かされた仕事であった。
 実際にモデル化された表情集も紹介されたが、「愛嬌のあるむくれ方」のように複雑な人間味あふれるCGキャラのチャーミングさには、改めて驚かされた。

 

《ファイナルファンタジーIV(2007年)》
 ニンテンドーDS用のリメイクで、金田氏はオープニングムービーとリアルタイムイベントの絵コンテを担当している。スーパーファミコン版のオリジナルは金田氏もプレイした経験があるという。当時のシンプルなゲームキャラと背景がスーパーアニメーター金田伊功氏の脳内でどう補完・変換されていたのか、それをムービーで再現するという、非常にレアなシミュレーション映像にもなっているという観点がおもしろかった。

《ファイナルファンタジーXIII(2009年)》
 ついにプラットフォームがPS3となった作品で、金田氏最晩年の仕事のひとつである。ストーリーボードチーム全体のディレクションと統括を手がけていた。プリレンダムービーやイベントバトルの召喚獣登場エフェクトなど、あらゆる映像のコンテを担当したという。代表例として召還獣オーディンの登場シーンが紹介された。
 ハイデフ機PS3で3Dのリアルタイム処理という新たな開発の場では、ビジュアルな青写真的な指針がなかなか見えづらいという難関があった。そんなとき、金田氏のコンテが率先する船頭役をはたしていた。いかに機械が高度になっても「イメージを具現化する能力」は人間によるもの。そこを金田氏が担っていたという話には胸が熱くなった。
 クライマックスのバトルでは、レイアウト用紙にビームや爆発のパターンまで手描きで指定され、仕事に入れ込んでいたことがよく分かる。「炎と爆発」はCG上では流体や気体、あるいは粘土のような素材を使って計算するが、なかなか金田氏が指定しているような弾ける気持ちよさにつながっていかない。リアルタイムで3Dとなると2Dを混ぜるなどの手法も難しい。
 パースやデフォルメの問題ふくめて今後の課題として取り組んでいたと考えると、かなり良いところまで追いこんでいた金田氏の仕事が中断されたことは非常に惜しまれる。

《サプライズ》
 実はまだ金田氏の仕事で未発表のイメージが残っていた。制作中の『FF XIII-2』では前作で諸事情で実現できなかった金田氏の「ライトニングを抱きかかえて登場するオーディン」というロマンチックな演出が、あらためて採り入れられるという。「ゲームの中に生き続ける金田さんの魂を、ぜひみなさんの手で確かめてみてください」というスタッフのメッセージは、非常に強いインパクトを残した。

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