CEDEC2011レポート アニメとゲームをつなぐ架け橋 3

CEDEC2011レポート アニメとゲームをつなぐ架け橋 3

文:氷川竜介(アニメ評論家)

■ アニメ効果音の現場とこれからの音響効果(9月6日)

 これは作画ではないが「エフェクト」に対する「人の認識」という点では共通性の感じられる良いセミナーだった。
 ゲーム、アニメではビジュアル中心で注意が向いてしまうが、実は人間は「音」から受けとるものが大きい。「セリフ(声優)」「音楽」はすでに充分にファンを獲得しているが、「効果音」はどうしても裏方的な扱いをされがちで、評価が定まっていない。
 一方、宇宙戦艦ヤマトの波動砲、機動戦士ガンダムのビーム・ライフルなど、「アニメの世界にしかない音」「キャラクターとしての音」を追い求める連綿とした流れがあるのも事実である。今年はドキュメンタリー映画『アトムの足音が聞こえる』が公開され、伝説の音響デザイナー・大野松雄に注目が集まったこともあり、アニメの現実感・存在感を底支えする効果音の世界に注目が集まるのは、非常に喜ばしいことだ。

 今回のこのセミナーでは、他ならぬ『機動戦士ガンダム』(’79)の効果を担当した松田昭彦氏と彼の所属する株式会社フィズサウンドクリエイションから庄司雅弘氏(勇者王ガオガイガー、コードギアス)、新井秀徳氏(ドラゴンボールZ、ワンピース)らベテランが登壇し、バンダイナムコゲームスの中西哲一氏の司会でアニメーションの音響効果にまつわるノウハウの紹介が実演や効果音当てクイズを交えて行われた。
 印象的だったのは、松田氏の発泡スチロールとお皿を使った実演だ。水を少したらしてこすると「キュキュキュ」をもっとハイピッチにしたような鋭い音がする。実は名作『母をたずねて三千里』(’76)でマルコと旅する白猿アメデオの声は、こうして作られた。その文脈でイルカの実際の録音と効果として作った音を比較し、前者では「演技」ができないこと、感情が込められないことが最大の問題であると指摘された。
 アニメの音響効果は絵で描かれた「実在しないもの」にどうやってリアリティを与えるか、大きな創意工夫の歴史がある。登場人物と観客の橋わたしをして生理と感情をつなぐ役割をする点で、パズルのように音をハメるものではなく、ドラマが把握できないと難しい職種でもある。ゲームの効果音もその点は同じだ。リアルタイムの変化に追従することまで考えると、ライブラリ音源を貼りつけておしまい、というわけにはいかない。
 職人芸的に音を研ぎ澄ましてきた三者三様の発言は、こうした課題を考える上で大きなヒントになるであろう。
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 以上のように、CEDEC2011はあらためてアニメのクリエイターたちが何を重視して何をつくってきたか、それを再確認する点でも充実したコンファレンスであった。
 アニメとゲームは隣接したジャンルだが、それぞれ業界の発展の歴史が違う経緯もあり、ノウハウや課題に関する意見交換の場も少なかったと思う。観客の生理を刺激しつつともに楽しみを創出するエンターテインメントという点では共通項も多く、表現の多くは重なりあうため、今後も発展的な交流の場が設けられることに期待したい。
 故・金田伊功氏がそうしたジャンルの大きな架け橋に位置づけられていくという、そのきっかけになる場に出られたのは、氏の業績と才能の偉大さを知り、伝えてきた者として実に感無量である。