長編フルCGの挑戦 デジタル・フロンティアのビジネス戦略

デジタル・フロンティアが目指すもの -長編フルCGの挑戦- 2
毛利陽一監督  豊嶋勇作プロデューサー インタビュー



■ デジタル・フロンティアのビジネス戦略

アニメ!アニメ!(以下AA)
デジタル・フロンティアさんのビジネス戦略もお伺いしたいのですが、デジタル・フロンティアさんは作品に対する出資はされるのですか。

豊嶋勇作プロデューサー(以下豊嶋)
基本は出資もします。ただ、もうかるのが分かっている作品は、なかなか出資させてもらえない(笑)。
一方で、当然自分たちのIP(知的財産)は持ちたいなと思っています。

AA
デジタル・フロンティアさんだけでないのですが、多くのCGプロダクションさんが非常にいいものを作っていて、僕はもっと名前が知られるべきだと思っています。けれども、受注制作が多いが故に名前がなかなか出てこなくて、外から見ているとそこが歯がゆいんです。
ただ一方で、プロダクションがお金を出す際のリスクの大きさを考えると、売上で数億円から数十億円規模の会社がそこまでリスクを負うことの危険さも感じます。

豊嶋 
まさにその通りだと思います。ゲーム会社さんはだいたい数百億円から数千億円規模の会社です。CGプロダクションは、大きくても10億円、20億円止まりです。では、その会社が例えば制作費として10億という金額を出せるのか。デジタル・フロンティアは大きなほうですが一社だけで出資するのはリスクが大きいと思います。
そして、その金額を日本だけでリクープする事は難しくなります。すると次はどう世界中に売りだしていくかです。まずはファイナンスをどうやれるかだと思います。そうしたなかではCGプロダクション単体でビジネスを組むのは難しく、ゲーム会社さんとの協力が大きな選択肢のひとつだと思います。

豊嶋 
海外のCGプロダクションでも、そこまでリスクを取っている会社はあんまりないですね。

AA
逆に言うと、ドリームワークスとピクサーだけですね。

豊嶋 
そういう人たちは、結局、カッツェンバーグとか、もともとディストリビューター側にいた人が、自分でCGプロダクションを作りましたという訳です。

AA
海外では100億円超す大きな予算の映画があって、一方でテレビでは今度はいきなりFlashで低予算のシリーズが出てきたりします。中間層が抜けています。そうするとこの中間部分に日本のCGが入る余地はあるのかなと考えてみました。先程の日本のCGは特徴があって強みがあるという話につながる話ですが。

豊嶋 
今やろうとしているのがそれです。ゲームコンテンツがあり、ゲーム会社ともつながりがあり、アメリカでアニメを扱う会社があります。そうしたセットです。

AA
そう考えるとアメリカの中間マーケットを狙った作品が日本のアニメと結びつくことはいまでも多いですね。2D作品でしたが『スーパーナチュラル』の例もあります。
でも例えばそれを海外のゲームプロダクションが長編CGを作る動きはあるのですか?

豊嶋 
いや、まだあまりないですよね。Ubiが『アサシンクリード』で20分の短編CGアニメーションをやるという話は出ていますね。けれども、例えばBlurが、あの路線で長編をやるという話は聞かないです。

■ CGとテレビアニメの未来

AA
日本のCGアニメーションの予算はいまどうなっているのですか。個人的には日本のCGはクオリティーの高さに比べて低コストで制作出来ているとのイメージがあります。
よく中国が安いとか、インドが安いという話がありますが、クオリティー比でいったら日本のコストパフォーマンスは尋常じゃないと僕は思っているんです。

豊嶋 
僕も思います。安く作りたくはないんですけど。『ぼのぼの』からカウントすると『鉄拳ブラッド・ベンジェンス』で6作目になります。作品をやるたびに制作費は上げてはきています。ただ、あまり大きな予算のビジネスは、みなさん望まないですよね。

AA
少しお伺いしたかったんです。今はモーションキャプチャの方がかなり安く出来るのですか?

豊嶋  
かなり安いですね。手付けとかは金の掛かり方は半端でないと思います。

毛利陽一監督(以下毛利)
頭身が低いキャラクターであればまだいいですが、特にリアル系は人に近いので重心が乗っからないだけで気持ち悪く見えてしまいます。それを手付けでやるのは至難の業ですよ。

AA
仮に、23分尺のテレビシリーズを作るとして、モーションキャプチャを使ったフルCGで制作すると、どのくらい予算が掛かるものですか。もちろんそれが1クールなのか2クールかで、全然話が違うと思いますが。

豊嶋 
それは永遠の課題です(笑)。例えばうちでやっているハイスペックなゲームのムービーの単価は昔からそれほど変わっていなくて、HDになる前のプレステ2ぐらいのときまでは、だいたい1分1000万円位のバジェット感でした。
ゲームのオープニングムービーは、大体4~5分以内が多かった。それで4000~5000万円で、5分ぐらいのムービーを作ってよかったねとか言っていたんです。それがプレステ3などの次世代機では、表示がすごくなったと最大で倍以上かかることもありました。
その感覚からすると20分はとんでもない。1000万円だとしても、それだけで2億円かかります。それはたぶんペイしないと思って、相変わらずうちはそれをやれてないわけです。

AA
製作側も出しにくい予算ですね。

豊嶋
アメリカでは、テレビアニメーションの予算は昔からあまり値段が変わっていなくて、だいたい30分ものの実尺が22~23分、それで5000万円といわれています。たぶんそれで作る以外にないという思いがあります。
けれど、うちはさっぱりした子供向けのテレビシリーズを作る気持ちはあまりなくて、もっといまやっている映画のようなものが普通にテレビシリーズで動かないかなと試行錯誤しているんです。

AA
例えば2Dでもコマーシャルでは、分単価がかなり上がります。でもそれがテレビシリーズ20分になれば分単価の予算が下がってきます。CGでもそれは可能なのでしょうか?

豊嶋
情報量の整理をすると考えれば可能だと思います。たとえば美術をアニメと同じやり方でやる。話を作るうえではそれでいいんでしょう。けれどもそれをCGでやる意味は、うちでは少し弱いかなと思っています。

AA
どこかの時点で、CGの単価と手描きアニメの制作単価が逆転する日が来るかなと思っているのですが。

豊嶋 日本だと来ないでしょう。

AA 来ないですか。

豊嶋 
日本は来ないと思いますよ。セルアニメの単価は普通に潤沢に出て1本だいたい1500万円ぐらいと聞きますから。アニメの制作単価が上がってくれば話は別だと思いますが。

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